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ルイーザ 第七部 第六章

 スタンリー公爵家の執務室でルイーザはいらいらしていた。


 確かに、彼女にとって、魔王クルシュは恋愛の対象で無くて、子供の時からいろいろと相談してくれる霊体のおっさんだった。


 霊力が強いせいか、皆にも見えて、だいぶたってから、それが魔王クルシュと言う自分の城で封じている、かって世界を破壊しまくった男だと知った。


 そのおっさんは私の一族が世界の為に、ずっと封じ続けている魔王だったのだ。


 だから、最初に感じたのは恐怖だった。


 実は私を騙していたのではないか。


 恐ろしい魔王だから人を騙すのは簡単なはずだし。


 そう疑って見ていた。


 だが、長い事魔王クルシュを観察したが、伝承と違って優しい男だった。


 ある日、常に国境を挟んで戦っているオルス帝国がよりによって公爵領の奥地の災害の復興で兵が半分ほど出ている時に、城に奇襲をかけた。


 アルバート守備隊長と一部の部隊長と、公爵ではあるが弟の将軍にいつも戦場は任せていた父のスタンリー公爵のみが残っていて戦った。


 強くはないが責任感はあった父のスタンリー公爵は、城の防備の為に戦って、あっさりと重傷を負った。


 アルバート守備隊長も当時の部下の部隊長二人が殺されて、本人も負傷して完全に絶体絶命の状態になった。


 その時に霊体だった魔王クルシュが実体化するとともに、初めて動き出した。


 実体化はあまり長時間出来ないらしくて、その短時間で倒す為に、彼は城の城郭がしっかりしている事と、彼らが騎馬で移動するオルス騎士であるのを利用して、上手い事少数ずつ城に導くことで、城郭を壁として彼らを分断して次々と殲滅していった。


 その指揮能力と戦闘能力は目を見張るレベルで、やはり魔王なのだと私は驚いた。


 だが、怖くなかった。


 彼は優しい顔で、今度こそ貴方を守ると騎士の礼をして出て行ったのだ。


 彼は私を守る事しか考えてなかった。


 正直、魔王と言う事の疑念はあったが、その時に気持ちは変わった。


 私を助けてくれる騎士なのだと思った。


 あの時の騎士としての誓いと、その後の奮戦は私の心に深く残った。


 そして、彼が私の前世だと言う麗王を深く愛しているのが分かった。


 どちらかと言うと、私が気にしていたのは、私を通して彼が見ていた麗王の事だ。


 彼は私を見ていないのではないか。


 私は彼に愛されていないのではないか。


 彼の騎士的な行動も全て麗王に捧げられているもので、決して転生した私にでは無いのでは無いか。


 それが凄く引っかかった。


 そして、スタンリー公爵家の令嬢として王家の王子ととりあえず結婚が決まった。


 そうしたら、目も当てられないくらい真っ暗な顔で封印された場所の棺の前で、泣きそうな顔で暗い顔で座っていた。


 壁に麗王の姿を彫っていて、それにすがって泣いていた。


 仕方ないので、どうせ形だけだからと説得した。


「ルイーザ、それは本当だよね」


 と泣いてる姿はキモかった。


 私が変態だと思うようになったのは、あの泣き顔を見てからである。


 かなり気持ちが冷めた。


 まあ、クリス部隊長とかから男なんて意外と情けないものだからと言われて、実際に身近で接している私からしたら、確かにと思う事はあった。


 なので、王子と婚約して、王城に行く事が多くなって、それで煌びやかな世界を見た。


 王子には確かにあこがれはあったが、良く見ると戦うべきとこで戦わず、常に戦場にあったスタンリー公爵家としたら、弱さは感じていた。


 それに比べたらまだ魔王クルシュの方が戦うべき時は戦って、情けない部分はあるが、私を大切にしている分だけマシなのは分かった。


 王子からは愛情を感じなかったのだ。


 とは言え魔王クルシュにとって麗王が本当に好きな人で、私は違うのではと言う気持つはさらに強くなった。


 だから、悩んでいるのは確かかもしれない。


 そんな時に執務室にクリス部隊長が乗り込んで来た。


「魔王クルシュがいない」


「えええっ? 」


 クリス部隊長のその言葉で皆が動揺した。


「どこへ行ったんだ? 」


「分からない。お嬢と麗王の像を彫ってたんだが、それは壊れて放置されていた」


 そうクリス部隊長が話す。


 ああ、また作ったんだと思った。


 私が王子と婚姻が決まった時にも作ってたし。


「とにかく、探そう。このままでは大変な事になる」


 そうスタンリー公爵が立ち上がった。

 

 そして、部隊長達も執務室も飛び出していった。


 私は像を作ってたのを聞いて、ちょっとまた魔王クルシュに引いていたが、ほっとくわけにもいかず慌てて執務室を出た。

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