ルイーザ 第六部 第八章
「もはや、お前を除く六王の和解はなった。お前もいつまでも過去にとらわれるな」
ルイーザの姿をした麗王がこんこんと縛王であるアルフォソに戦いの無益さを説いている。
「やかましい! ぬけぬけと転生しやがって! 」
「私は意識して転生したわけでは無いのだがな」
「魔王クルシュの封じられた居城に転生して、意識してないはずが無かろう! 」
「怒っているのはそこでは無いだろう。いい加減、素直になれ。見苦しいぞ」
「黙れっ! 」
馬の鞍に置いてある予備の剣を抜くと、ルイーザである麗王と縛王であるアルフォソ王子は神技に近い剣技で互いに打ち合った。
それは信じがたい速度と技量の打ち合いだった。
「縛王ってあんな手練れだったのか? 」
「驚いた。麗王とやり合うとは……」
カルディアス帝とコンラート皇帝も驚きを隠せない。
六王の剣技の頂点は魔王クルシュと麗王だった。
魔王クルシュの剣はだがいささか無骨だった。
それに対して剣技の美しさは、今武の極限を見せている麗王が頂点として間違いなかった。
その麗王とタメを張る縛王が他の六王は信じられなかったのだ。
「奪った肉体の技量も奪っているって話は本当だったのかもな。武人で無い現在のアルフォソ王子みたいなのも身体を奪っていたが、それ以前には天才と呼ばれた武人の身体も奪ってたはずだ」
ロイド法王が呻く。
「貴様だけは! 貴様だけは生かしておけんのだっ! 貴様だけは許さん! 」
激しい剣劇で縛王のアルフォソ王子の剣が折れた。
王国は戦をスタンリー公爵家に任せていたせいで、剣も装飾品に近いものが好まれていて、ゼクス帝国やクシャナ帝国のように実戦を視野に入れた剣が少なかったのが、そこで出た。
「もう、昔に拘るな」
「黙れっ! 貴様だけは許さないっ! 」
麗王に諭されたが、縛王は頷かなかった。
折れた剣を投げつけると、残った近衛とともに騎馬で撤退した。
「一体、何があったんだ」
「さあ? 」
それを遠目で見て、カルディアス帝とコンラート皇帝が訝し気に首を傾げた。
そして、魔王クルシュは帰ってきた麗王を見て単純に涙を流して喜んでいた。
そして、戻ってきた麗王を両手を拡げて迎えようとした。
「麗王」
うるうると魔王クルシュが声を掛けた。
「あーあー、悪いんだが、私は確かに麗王だが、残念だが、この身体はルイーザのものだ」
「は? 」
魔王クルシュが驚いたような顔をした。
「転生はしたが、ルイーザとして生きてきた人格がある。それを押しのけてまでは私には戻れないよ」
そう麗王が苦笑した。
「いや、だって、ルイーザも麗王も君だし……」
魔王クルシュが動揺して答えた。
「だから、ルイーザが子供の時から、まわりをうろうろしてた変な霊体のおじさんが君なんだ。悪いんだが、ルイーザは恋愛対象どころかお前を近所の変態おじさんとしか見ていないし、恋仲になるのは物凄い抵抗感を感じているらしい。そこがなんとかならないと昔のように君と恋愛関係になるのはルイーザが不憫でさ……」
麗王がすまなさそうに魔王クルシュに告げた。
魔王クルシュが糸が切れたマリオネットのように、その場に崩れ落ちた。
それをカルディアス帝とコンラート皇帝とロイド法王が凄い顔で見守る。
勿論、テイラー部隊長もクリス部隊長もだ。
「だから、ごめんね」
そう麗王がすまなさそうに手を合わせた。
ドップラー効果で皆にごめんねの言葉が響く。
魔王クルシュ死す。
魔王クルシュは心が死んでしまった。
動かなくなった魔王クルシュを見て、カルディアス帝とコンラート皇帝とロイド法王が目頭を押さえた。
何という結末。
転生を待ち、ずっと記憶が戻るのを待ち望んでいたのに、何という結末。
こうして、あまりに可哀そうになったコンラート皇帝とカルディアス帝は魔王クルシュの賠償金を双方で持つことになった。
ロイド法王は動かなくなった魔王クルシュに深く祈りを捧げた。
縛王を抜いた六王の和解はなった。
だが、魔王クルシュは心が真っ白に燃え尽きてしまった。
頑張れ魔王クルシュ。
負けるな魔王クルシュ。
子供の頃からまわりでうろうろしていた近所の変なおじさんは確かに恋愛対象には難しいかもしれない。
悲しい現実であった。
これで来月にまた投稿します。
ちょっと、体調を酷く崩してしまったので、少し遅れるかもしれません。




