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ルイーザ 第六部 第七章

「縛王は来ないな」


「あいつは用心深い」


「困ったもんだな。あいつも原因だろうに」


 そうカルディアス帝とロイド法王とコンラート皇帝が呟いた。


 ルイーザはちょっとあまりの状況に目が回りそうだった。


 この世界の巨頭の集まりなのだ。


 目の前で呑気に椅子に座った途端、テーブルに並ぶ会食を遠慮なく食べている魔王クルシュをルイーザは呆れて見ていた。


「そう言えば、疫病はどうなったんだ? 」


 会食を口に入れたまま、ロイド法王に魔王クルシュが聞いた。


「心配するな。戦争回避は出来た。目的は達成したんだ。それは終わらすさ」


 そうロイド法王がワインの香りを楽しみながら答えた。


「流石だな。なるほど、良く考えたら布教で疫病を流行らせて治せばマッチポンプで信者が増えそうだな」


 などと魔王クルシュが言ったので、ロイド法王の額にピキッと怒りの引きつりが現れた。


 まわりの世話をしてた僧会の高位の僧が凄い顔をしていた。


「ちょっとぉぉぉ! 」


 ルイーザがあまりの魔王クルシュの失言に叫ぶ。


「お前、反省したんじゃないのか? 」


「そういう軽口が皆から一歩置かれてたって理解しろや! 」


 カルディアス帝とコンラート皇帝が魔王クルシュに怒鳴る。


「え? 俺、嫌われてたの? 」


 魔王クルシュが凄い衝撃を受けた顔をした。


「当たり前だろうがっ! 」


「良く考えろよ! 空気を読めっ! 」


 カルディアス帝とコンラート皇帝が怒鳴った。


 魔王クルシュは自分が自分の余計な一言で嫌われていると微塵も思っていなかったのだ。


 少し天幕内が険悪になった時に天幕の外から激しい馬蹄の響きがした。


「奇襲だっ! 」


「アルフォソ王子が攻めてきたっ! 」


 そう天幕の外から騒ぎが聞こえる。


「嘘だろ? 」


「あいつ、その為に……」


 カルディアス帝とコンラート皇帝とロイド法王が驚いた。


「いや、狙いは私だろう」


 そうルイーザがキラキラした雰囲気とともに立ち上がった。


 それは皆の目を惹きつけた。


 まるで武の女神が立ち上がったように見えたからだ。


「弓と馬を借りるぞ」


 そう言うと、ルイーザは天幕を出た。


 それで、護衛をしていたゼクス帝国の騎士がその雰囲気にのまれて、自分の弓と馬を渡した。


 魔王クルシュとカルディアス帝とコンラート皇帝とロイド法王が天幕の外に追いかけると、まるで楽器をかき鳴らすかのように弓を引いて、次々と侵入して来た王国の縛王であるアルフォソ王子の近衛の騎士が次々と目を射抜かれて落馬していく。


 それは、ここに集まった全ての騎士達の目に戦の女神が戦う美しい絵画のように見えた。


「貴様っ! やはり記憶は戻っていたのかっ! 」


 その百発百中の弓の矢を剣で薙ぎ払いながら、縛王であるアルフォソ王子が肉薄した。


 事情を知らない天幕の外の騎士達には、それはかって婚約者だったもの同士の奇妙な戦いに見えただろう。


「いつまでもいつまでも、嫉妬深い男だ。素直になれば良かろうに」


 そうルイーザでは無い麗王は苦笑した。


 肉薄する縛王であるアルフォソ王子の剣を馬上で弓で払いのけるように受ける。


 本来は剣は弓では受けれないものなのに、それを綺麗に流すように受けた。


 まさに武の天才の所作であった。


「お嬢……」


「すげぇ」


 クリス部隊長もテイラー部隊長も魔王クルシュと一緒にその神技をうっとりと見ていた。


 知将にして武の天才と呼ばれた麗王の鮮やかな妙技をカルディアス帝もコンラート皇帝もロイド法王も釘付けになって見ていた。

 





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