ルイーザ 第六部 第六章
流行していた疫病は何故か、まるで狙っていたように、ゼクス帝国のコンラート皇帝とクシャナ帝国のカルディアス帝との対面が決まった途端に終わった。
そして、双方の間に入ったのは信じられない事に、この世界の宗教を束ねる僧会のロイド法王だった。
ルイーザもクリス部隊長もテイラー部隊長も、もう一人六王がいると聞いていたので分かったのだが、まさか、あの絶大な宗教的権威を持つ僧会のロイド法王が六王の一人だという事を察して驚いていた。
そして、ごく側近をそれぞれ連れたロイド法王とカルディアス帝とコンラート皇帝と魔王クルシュとルイーザとクリス部隊長とテイラー部隊長が揃って巨大な天幕の中で極秘の話し合いと言うか魔王クルシュが詫びを入れる事になった。
実際問題として、カルディアス帝の最初の内々の話だと、ここで、今までの恨みあいを全て解消して新しい関係を築かないかと言う話まで突っ込んでいたらしい。
勿論、それは魔王クルシュの謝罪が一番必要だが。
天幕にカルディアス帝とともに魔王クルシュとルイーザもクリス部隊長もテイラー部隊長が入ると、すでに僅かな側近とともに巨大な樫のテーブルに円座に近い形で六つの椅子が置かれていて、そこにすでにゼクス帝国のコンラート皇帝と僧会のロイド法王が座っていた。
「縛王は? 」
カルディアス帝が聞いた。
「来ない。奴はオルス帝国に入る前の王国の端っこに本陣を置いたまま、こちらに来る気は無いようだ」
そう僧会のロイド法王が答えた。
ゼクス帝国のコンラート皇帝はむっとした顔で座ったままだった。
「となると、六席の一つは開いたままか」
そうカルディアス帝が少し残念そうに呟いた。
「貴方様はこちらへ」
僧会の高位の僧らしいものが六つの椅子の一つにルイーザを誘導した。
「わ、私がこんなところに……」
ルイーザが激しく動揺していた。
なにしろ、その場所は間違いなく、この世界の最強を争うゼクス帝国とクシャナ帝国と宗教を支配する僧会の最高責任者が座る席だったからだ。
「いや、まだ記憶は戻っておられないようだが、貴方はその席に座るにふさわしい方なのだ」
そうロイド法王がルイーザに話す。
「お前は先にすることがあるだろう! 」
そして、もう一席に向かった魔王クルシュに向かってゼクス帝国のコンラート皇帝が叫んだ。
「分かっている」
そう魔王クルシュは従容として、跪いた。
その場で深く土下座をした。
「この度の洪水による被害とともに、かっての戦いを詫びたい。すまなかった」
そう魔王クルシュが深く深く頭を下げた。
それをじっと見ていたゼクス帝国のコンラート皇帝が不貞腐れた態度を改めて座りなおした。
「ふむ。少しは変わったか」
「確かに」
そうゼクス帝国のコンラート皇帝と僧会のロイド法王が呟いた。
「と言う事で長い間の問題であるが、ここでこのさい、全ての和解を行いたいと思う」
そうカルディアス帝が頭を下げて同じように詫びた。
ルイーザが魔王クルシュの為に頭を下げるカルディアス帝を見て驚いた。
「港湾の破壊に関しては私が立て替えて払おう。そして、その支払いは魔王クルシュが今後戦いで得るはずの恩賞で返してもらう。それでどうだ」
そう、カルディアス帝は頭を下げながら、答えた。
「もう、お前は許すと言うのか? 」
「いや、元々、麗王を騙し討ちした後の縛王の罠でああなった部分が大きいと思っていた。もう古い話だ。そろそろ先を見ても良いだろうと思う」
ゼクス帝国のコンラート皇帝の突っ込みにカルディアス帝が答える。
「私は異議は無い」
僧会のロイド法王が答えた。
「……分かった。受け入れよう」
そうゼクス帝国のコンラート皇帝が頷いた。
「おお、ありがとう」
「ありがとう。申し訳なかった」
そうカルディアス帝と魔王クルシュの詫びで全てが終わった。
和解が成ったのだ。
ただ、縛王を除いて。




