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ルイーザ 第五部 第七章

「攻め込む予定だったオルス北部で突然の洪水で城が二つ流されました」


 クリトラオスがカルディアス帝の豪奢な天幕で報告した。


「ええ? 」


 カルディアス帝が絶句した。


「今まで、こんな洪水は起こった事が無いとか言う話ですが……」


「武王……というか魔王クルシュだな。上流の城攻めで水龍神ラトゥースの力で何かやったんだろう。多分、本人から連絡があるだろうが……」

 

 カルディアス帝が呆れたような顔をした。


「華王の時から、こんな感じなんですか? 」


「ああ、水龍神ラトゥースは荒神だし、あいつは良く無茶苦茶な作戦を立てるからな」


「コントロールできないのですか? 」


「上手い事コントロールできなかった時はいつもトラブルを起こすんだ。それで厄介なんだよ。それに合わせて作戦を変えてくる奴だし」


「なるほど」


「とりあえず、被災したオルス帝国は援助してやれ。逆に良い所を見せて、向こうがこちらに降伏してくるように持っていけ。そう言うのはクリトラオスは得意だろうに」


「分かりました。そういたしましょう。まあ、こちらとしても敵の拠点である北部に大ダメージを与えてくれたのでありがたいのですが……問題はその先ですね」


「ああ、ゼクス帝国か」


「コンラート皇帝がオルス帝国と戦争していた我々にキレるでしょうね」


「確かにな」


 カルディアス帝が唸る。


 六王の関係はクリトラオスは知らない。


 知っているのは魔王クルシュが武王である事、そして、縛王が復活した事、カルディアス帝が華王である事だけだ。


 なので、クリトラオスはコンラート皇帝がカルディアス帝に難癖をつけてくるのを心配していたが、カルディアス帝は魔王クルシュがやったとコンラート皇帝が気が付いて、お前の傘下になったんだよなととばっちりになるのを気にしていた。


 現状の四王の関係が無茶苦茶になるの心配していたのだ。


 互いに関わらない関係が変わってしまうと。


***********************


「ウォール伯爵の城が消えてしまったそうです」


 新しくオブライエン侯爵家を継いだフランクがそう縛王に乗っ取られたアルフォソ王子に告げた。


「ああ、魔王クルシュだ。水は奴が得意とする魔法だ。守護神は水龍神ラトゥースだしな」


 そうアルフォソ王子である縛王が苦笑した。


「こんな、凄まじい魔法などあり得るのですか? 」


「ある。六王は全てそういうものが使える」


「ど、どうなさるので? 」


「逆に朗報だ。ほら」


 そうアルフォソ王子である縛王が蝋で封印されたゼクス帝国の手紙の一部をちらと見せた。


「ゼクス帝国? 」


「ともに魔王クルシュを討とうでは無いかだとさ。凄まじい被害を受けたらしい」

 

 そうアルフォソ王子である縛王がクスクスと笑った。


 コンラート皇帝は重要な港と経済的に大切な港街を破壊されて激怒していた。


 こうして、六王が互いに分かれて戦い合う、昔の戦いが復活する方向へと動き出した。


***********************


 スタンリー公爵家の執務室でいつもの面子がそろって座っていた。


 その中でルイーザが魔王クルシュ達を詰問していた。


「で、なにがあったわけ? 」


 ルイーザがファーガス男爵家からの救援依頼と難民引き受けでてんてこ舞いしていて、帰ってきた魔王クルシュにブチ切れた。


 すでに王国を裏切ったファーガス男爵家としたら頼るのはクシャナ帝国に仲立ちしてくれたスタンリー公爵家しか無かった。


 横で聞いているテイラー部隊長とジョージ部隊長とジェームズ部隊長も自分達のせいなので黙ったままだった。


 叔父の将軍が困ったようにきょろきょろと周りを見ていた。


「雨です。突然の凄まじい雨が襲いました」


 魔王クルシュがきっぱりとそう答えた。


「雨だよね」


「雨だったよ」


 経過を無視して、テイラー部隊長とジョージ部隊長とジェームズ部隊長が頷いた。


「雨ですね」


 そう叔父の将軍が仕方なしで答える。


 なんと、ウォール伯爵の城も流れたが、味方になったファーガス男爵家の城も中の人間は助かったとはいえ、突然の激流で潰していた。


「雨で城が二つも流れるかぁぁぁ! 」


 ルイーザの叫び声が執務室で響いた。


 



これで五部は終わりです。


読んでいただいてありがとうございます。

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