ルイーザ 第五部 第六章
その激しい轟音の後にバケツの水を流し込むような雨は激しい身体を打つような雨に弱まった。
この言葉のニュアンスが難しいが現物を見ればなるほどと思うような状況だった。
そして、あの水龍神ラトゥースが土下座し続けている魔王クルシュと全兵士の前に現れて、これなら派手じゃろうと雨の中で微笑んだので、全員でさらに土下座し続けた。
激しい雨に弱まったのに、暗いので何が起こってるのか分からないが、何度も何度も何かが崩れる音がして訳が分からない状態だった。
流石に雨が激しい雨から普通の雨に変わった時に、魔王クルシュが土下座をやめた。
「ええ、良いのかい? 」
叔父の将軍が聞いた。
「いや、ちょっと気配的に終わったようだから、このテントみたいな住居の中で、お礼とお詫びの儀式をしよう」
そう魔王クルシュが言うので、皆が真っ青になって儀式を行った。
儀式が終わった後に水龍神ラトゥースが現れてすっきりしたと大笑いをなさって姿をお隠れになられた。
そして、雨が小雨になって、暗いながらもあたりの気配が分かるようになってきて、皆が絶句した。
城が無くなるのは計画通りだが、山も全部無くなっていた。
そして、想定よりも大きそうな湖が……。
「ひえぇぇぇぇぇぇぇ! 」
「どうすんのよ! 」
自分達のつまらない一言でこんな事になっているのに、テイラー部隊長とジョージ部隊長とジェームズ部隊長が呆然としていた。
「いや、怒らすからでしょう? 水龍神ラトゥース様を」
フラッド部隊長が呆れ果てた顔で呟いた。
「ううむ。だが、結果オーライかな? 」
魔王クルシュが呟いた。
「いやいや、これ王都にいけないよね。湖で埋まっちゃったし」
そう叔父の将軍が騒ぐ。
「完全に道がふさがってしまった」
フラッド部隊長がそう呟いた。
「いや、もともと湖を作って、その水場を使って相手と戦いやすくするつもりだったんだ。逆にこれだけ大きいと船で戦う方向で考えたい。……と言っても縛王はそれがどういう事か分かるだろうから、攻めてこないかもしれないけど」
そう魔王クルシュが苦笑した。
「挟み撃ちは? 」
「ちょっと、色々と考え直さないとまずいよね。とりあえず、カルディアス帝には連絡しないと」
「何で? 」
叔父の将軍が魔王クルシュに聞いた。
「いや、双方で戦うって言ったのに、こちらに戦う気が無いと取られたらまずい」
魔王クルシュが少し困ったような顔で話す。
「ああ、なるほど、湖を作って攻めれないとか言ったら怒るよね」
「とにかく、この湖を使って水を奇襲とかに使うって前向きにカルディアス帝に言うしか無いよな。とりあえず、俺の魔法を知ってる縛王はこの湖で戦うのは避けるはず。そもそも王国は泳げる奴が殆どいない国だし」
王国は陸軍国にありがちの水練が無い国であったのだ。
呟いた後で魔王クルシュは黙って考え込んでいた。
こうして、ウォール伯爵家の戦いは終わった。
結果として、何も残らないと言うとんでもない結果になったが。
段々と明るくなって湖が見通せるようになると、ハッキリ状況が分かった。
ウォール伯爵家は領土ごと全滅で間違いなさそうだった。
「うわぁ」
「うへぇ」
一斉に皆が呻く。
跡形もなく無くなった後に出来た非常に澄んだ巨大な湖は想定の倍より大きかった。
「これ、下流とかどうなってんですかね」
フラッド部隊長が海辺からの移民だけに川とか海に詳しくて、そう呟いた。
「確か、下流はファーガス男爵家とオルス帝国を少し通って、その先はゼクス帝国だったよね」
そう叔父の将軍が魔王クルシュを見た。
だが、魔王クルシュは黙って答えなかった。
酷い事になっているのは分かっているので、その質問を聞こえなかった事にしたかったからだった。
明日の投稿で第五部は終わりです。




