表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/176

ルイーザ 第五部 第三章

 目の前に陣取りしているにもかかわらず、ウォール伯爵側は静かだった。


 流石にスタンリー公爵家だけでなく、あの魔王クルシュが指揮していると伝わり、王家の援軍が来るまで城を固く守って、こちらを刺激しないつもりらしい。


 すでに城から逃げてるわけでは無いのは、弓兵がこちらを矢を射るでもなく、ずっと監視しているのだ。


 実際、すでに二度もオブライエン公爵家の王国軍を撃退したスタンリー公爵家と魔王クルシュを最大限に警戒している感じだ。


 そして、それは魔王クルシュにとっても好都合だった。


 術を仕掛ける時間があるという事だからだ。


 あたりが暗くなった後に、魔王クルシュが中心になって、祭壇を築いて叔父の将軍とテイラー部隊長とジョージ部隊長とジェームズ部隊長が並び、その後に兵士達が続いた。


 祭壇には新鮮な果物や仕留めた獲物など供物が並べられていた。


「え? 」


 叔父の将軍が不思議そうに驚いていた。


「魔法って、こう……なんか呪文を唱えるんじゃないの? 」


 それはテイラー部隊長とジョージ部隊長とジェームズ部隊長も同じだった。


「いや、突発的に戦うときはそういうやり方もあるけど、今回は大量の水が必要だから、雨ごい形式になる。そもそも、俺も久しぶりに水龍神ラトゥース様に頼むから、ちょっと大げさにやらないと」


 そう魔王クルシュが答えた。


「ちょっと、考えてたのと違うな」


 そうテイラー部隊長がさらに突っ込んだ。


「おいおい、ちょっと待って。水龍神ラトゥース様を怒らせないでくれよ。儀式で呼び出したら突っ込みとかそう言うのは無しな。ブチ切れなさったら、とんでもない事になるから」


 魔王クルシュが今回は必死にそう話す。


 水龍神ラトゥースは水を操るだけでなく、洪水とか津波を起こすと伝承すらある強力な神なので、魔王クルシュも気を使っていた。


 また、世界の神話の水神さんによくあるような呪術の神でもあった。


 海軍国などでは凄く恐れられていて、敵に回してしまったばかりに、艦隊が一撃で沈んでしまったとか恐ろしい伝承が大量にあるのだ。


 逆に言うと、この王国に魔王クルシュを封印したのも海が無い国だからだ。


 それほど海戦では無敵の水神なのであった。


 だが、王国は陸兵ばかりの陸軍国であった。


 なので、彼らはそれが理解できずに全く緊張していなかった。


 だから、必死に魔王クルシュは馬鹿にするような態度とか軽口を叩くなとか兵士達まで注意した。


 ようやく、皆のざわめきが収まったので、灯火を掲げて、祭壇を明るくして、魔王クルシュの久しぶりの祈りが始まった。


「偉大なる水を支配する我が神水龍神ラトゥース様。偉大なるお姿を御見せ給え。我が全ての敵を粉砕する為に力を貸し給え……」


 延々と魔王クルシュの祝詞のような言葉が続く。


 そして、それが随分と長いなと皆が思った時に、中心に渦のような小さな水が現れて、それがどんどんと拡がってそこに八つの首を持つ龍とともにその上に座っている美しい女神が現れた。


 美しい青い目をして長い水色の髪をした女神だ。


「おおおおおおおお! 」


「美しい! 」


「まさに女神! 」 


 皆がその威容と美しさに衝撃を受けていた。


 また、正直なスタンリー公爵家としても美しいとか美の女神とか称えて呟いたので、水龍神ラトゥースはご機嫌だった。


「久しいの、武王。今は別の名で呼ばれているようだが」


「ははっ、かっての怨敵と戦う事になってしまいました。是非偉大なる水龍神ラトゥース様のご助力を承りたく」


 そう魔王クルシュが普段とは違って敬服する神の前で真心を込めて話をしているのが分かった。


「ふむ。良かろう。貴様の大事な麗王も関わっておるようじゃ、助力してやろう」


 そう水龍神ラトゥースは微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ