第四部 第五章
「陛下どうしましたか? 」
天幕の外に人払いで出てた衛兵が殺気立って中を覗いた。
「古い友人だからじゃれただけだ」
そうカルディアス帝が苦味走った顔で答えた。
実際に転生する前に六王は全員クラスメイトだった事もあり、実は仲は悪くなかった。
ただ、縛王はそのスキルだけでなく、その性格からも怖がられていたのは確かだった。
猜疑心が強く、報復が陰険だったからだ。
「しかし、こうなるともう仕方ないな」
そうカルディアス帝が考え方を変えた。
「とりあえず、まずはこっちだけでやってみる。だけど、厳しいようなら奇襲をしてくれ。いや、してくれませんか? 」
「それだけだと心配だな。お前は強いが、実際に奴のあの厄介な乗っ取りスキルで一度負けているしな」
そうカルディアス帝が悩む。
「他の六王の二人も転生してるんだろう? 多分、あいつじゃないかと言うのは分かるのだけど……」
「まあな」
しばらく二人は黙っていた。
「「巻き込んじまうか」」
そう答えた後に魔王クルシュとカルディアス帝が顔を見合わせて笑った。
カルディアス帝にしても魔王クルシュにしても久しぶりに前世の頃を思い出したような笑いだった。
武王の乱で殺し合ったものの、実際に互いに直接的な敵では無かったし、いたずらっぽい性格なのは同じだったので、笑いあった。
それを天幕から将軍達まで覗いて驚いていた。
カルディアス帝はあまり笑わないと言うのが部下達の常識だったからだ。
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「縛王はあの辺はしっかりしているから、兵士の調練が終わるまでは攻めてこないはずなので、まずは近くの王国の城を襲って領土を拡大します。それらの城は王国との戦いが終われば陛下にお譲りしますので」
そう魔王クルシュが跪いてカルディアス帝に奏上した。
「分かった。約束通り、怪しい雰囲気になったら、背後から突く事も考えて、こちらも動こう」
そうカルディアス帝が厳かに言うと、魔王クルシュがははっ跪いて一礼した。
「御前を失礼」
そして、魔王クルシュは自分の乗ってきた馬に飛び乗ると急いでスタンリー公爵家の城郭に向かって馬を飛ばした。
そして、それを見送ってから、カルディアス帝も動いた。
王国の準備が整うまでに、オルス帝国を落とさなければならなくなったからだ。
周りの将軍達からすると一気に王国も併呑かと喜びの声が上がっていたが、縛王の厄介さを知っているカルディアス帝は笑ってはいなかった。
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「こざかしい真似を……」
密偵からの報告でアルフォソ王子は魔王クルシュがカルディアス帝と再度会った事を知った。
全ては極秘にしていたはずなのに、全ては漏れていた。
アルフォソ王子が一瞬あまりに凄惨な表情をしたので皆が黙った。
そして、一気に全体の局面が動き出した。




