第四部 第四章
「待ちなさい! 我らだけは知っているが、カルディアス帝がかっての六王の華王と同一人物である事をっ! そう考えれば我らが華王とともに四王を敵に回して戦ったのが、この魔王クルシュと言う武王であることも! これが我らの王を嵌める話で無いと誰が言えるのかっ! 」
クリトラオスがそう叫んだ。
「むう、そうだな」
嬉しそうにカルディアス帝が頷いた。
他の将軍達も盛り上がっていたが流石に最側近でもあるクリトラオスの言葉に怯んだ。
「いやいや、ならば魔王クルシュである武王の……この私の四王と戦った理由をご存じのはず。縛王と言うものに騙されて愛していた麗王を殺されて、縛王に嵌められた四王と戦ったのが事実であることを。実はここだけの話でありますが、スタンリー公爵の娘に麗王が転生しました。今度こそ……彼女を殺されまいと……幸せにしてやりたいとそう思っているのが本当の話なのです」
そう魔王クルシュが涙ぐんで話す。
演技でもあるが真実でもあるので、その姿に嘘は無かった。
「むう」
「確かに、愛する人を殺されてとは聞きましたな」
そう将軍達が唸る。
「そして、あろうことか。縛王はまたしても私の前に現れて王家を乗っ取ったのでございます。また、麗王を奪われる訳にはいかない。だからこそ、六王でも最強に近かった華王であるカルディアス帝の傘下に入り、今度こそ勝とうと思っているのです」
そう魔王クルシュがきりっとして答えた。
麗王の為に戦い滅びたと悪逆非道を言われながら、そこは皆に悲恋の話としてわずかながら伝説で伝わっていたから、誰もが普通に受け入れていた。
将軍達がちょっと涙ぐむものも居ながら、皆がうんうんと頷いた。
カルディアス帝はえええと言う顔で声を出さずに固まっていた。
「話はたしかに通りますぞ」
「いかがか? クリトラオス殿……」
「むう。となると後は陛下の言葉だけですな。どういたしますか? 」
クリトラオスがそうカルディアス帝に聞いた。
「う……」
「陛下! 助けてくだされば、私と麗王で陛下の覇業のお手伝いをいたします! 勿論、縛王は我が敵でありますので、陛下はオルス帝国を併呑している間にまずは私の方で戦います! そして、もしピンチになれば、その時だけお救いくださるだけでいいのです! そうすれば陛下はオルス帝国に続き王国も併呑することになります! 陛下の覇業が大きく進む事になりますぞ! 」
魔王クルシュがそう力強く宣言した。
「おおおっ! 」
「まさに! 」
「覇業が成るっ! 」
将軍達が熱く語った。
カルディアス帝は苦い苦い顔したまま肩を落とした。
「仕方あるまぃぃぃ」
長い付き合いの魔王クルシュには華王の言葉は半分泣きが入った声に聞こえたが、そうではない配下の将軍達は喜びで涙声になったと勘違いしていた。
魔王クルシュは心でふひっと笑った。
かくして、魔王クルシュとスタンリー公爵家は王国からクシャナ帝国にその主を変えたのであった。
将軍達が興奮して騒ぐ中、クシャナ帝国の配下となった書面を魔王クルシュに渡した後に将軍達を人払いした後でカルディアス帝は両手で顔を覆った。
「嵌めたな……」
「いやいや、だって、これしか生きる方法無いもの」
「お前と戦うのも面倒くさいんだが、あいつは一番敵に回したくないのになぁ」
そうカルディアス帝は両手を頬に回してため息をついた。
「まあまあ、どちらにしろ。俺がここに来た時点であいつは猜疑心の塊になるから、そりゃ、考えるまでも無い結果ですよ。陛下」
「ふざけんなっ! 」
そう魔王クルシュが笑ったら、むかついたのかカルディアス帝がテーブルを蹴りつけた。




