第四部 第二章
「ぶっちゃけ、どうなの? 公爵様の今の王家に対する忠誠心とか? 」
「いやいや、攻められたし、娘も婚約破棄で恥をかかされたし、今更だろ」
そうスンタリー公爵がちょっとムッとしたように答えた。
実際、ずっと王家に忠誠を誓ってやってきた一族をコケにしたのは間違いなく王家の方なのだ。
「そもそも、縛王とやらが出てきた時点で別に王家でも何でもないしね。うちとしたら、もうどうでも良いよね」
そう叔父の将軍も真顔で答えた。
普段はおとなしい二人がそれだけ激高しているのだから、相当腹は立てているのだろう。
「じゃあ、俺が説得して来て良いかな? 」
「誰を? 」
「華王を」
「なんて? 」
「いやいや、降参して配下になるから、助けてって」
そう魔王クルシュがにやっと笑った。
「そ、そんなので話になるの? 」
「そもそも、どちらにも個々の戦いには参加しないって双方に恩を売ったんじゃないの? 」
スタンリー公爵だけでなく、ルイーザまで驚いた顔で魔王クルシュに聞いた。
「いや、この状態でオルス帝国を攻めるんだろ? じゃあ、覇権国家を作りたいのは確かだ。あいつは昔からでかい事をするのが好きだからね」
そう魔王クルシュがにやっと笑った。
「でかい事は分かるけど敵だったんじゃないの? 」
「縛王に嵌められて戦っただけで、別に縛王以外と俺はそんなに恨み合っている訳でもないし」
「そんな簡単に行くの? 」
「うん、ちょっと小細工つかうけど」
そう言いながら魔王クルシュがにやっといたずらっ子のように笑った。
「あり得るのか? 」
叔父の将軍が深刻に考え込んだ。
「いや、そもそも元々あんな事に縛王のチョッカイでなっただけで、武王である俺も麗王も裏切るようなタイプじゃないしね。それは向こうは良く知っている」
「おかしいじゃないか。それなら、なんで誰も武王だった魔王クルシュを助けなかったんだ? 」
アルバート守備隊長がそう突っ込んだ。
「それは麗王を殺されて俺が狂ってたのと、いつもなら間に入るはずの麗王が殺されていたのと、何より皆が縛王を怖がっていたから。やはり死なないし、他人の身体を乗っ取って生きていけるってのは大きいしね」
そう魔王クルシュが答えた。
「いや、それなら余計に難しいんじゃ? 」
「いや、だからこそ、プライドが高い華王にしたら、あいつを恐れてるって思われるのは辛いはず」
そう魔王クルシュが笑う。
「いやいや、そのノリだと追い込むんだよね」
そうルイーザが突っ込んだ。
「だよね。罠かけるんだよね」
「降伏するために罠をかけるって斬新だけど」
「どんな戦いなんだよ」
そう部隊長達もルイーザの意見に同意して突っ込んだ。
「逆に、本領安堵とかは大丈夫なのかな? 」
スタンリー公爵が急に乗り気になってきた。
「ちょっと、良いの? 」
「いやいや、こちらとしたら今の王家に対しても隣国との戦闘で戦って満足な褒美をもらってないし、今更でしょ。本領安堵が大丈夫なら、それでいいよ。逆に褒美とか貰えるならメリットの方が多い。今更、忠誠心もへったくれもないし」
ルイーザの突っ込みにスタンリー公爵がズバリと答えた。
実際、今回の婚約破棄からの流れは黙々と王国を守って戦っていたスタンリー公爵家にしたら受け入れれるもので無かったし。
「俺も賛成」
将軍の叔父もそう答える。
「んじゃ、早速、降伏してこよう」
そう魔王クルシュがスタンリー公爵に正式な傘下入りの書簡を書かせてウキウキと飛び出していった。
ルイーザが釈然としない顔でそれを見送った。




