第三部 第八章 終わり
「なるほど、華王は関わらずと言う事か」
アルフォソ王子が兵士の調練中にスタンリー公爵家に出ていた密偵の者から報告を受けて、そう苦笑した。
それはぞっとするような顔だった。
「カルディアス帝がオルス帝国を攻めるそうですが……」
オブライエン侯爵を受け継いだ、長子のフランクがそうアルフォソ王子に問うた。
「放っておけばいい。こちらに関わっては来ないだろう。逆にこれでオルス帝国とクシャナ帝国が戦う事で、これが壁のようにスタンリー公爵家の退路を断つことになる」
そうアルフォソ王子が答えた。
「おおおお、そこまで読んでと言う事でしたか? 」
「いや、カルディアス帝は不戦と言う言葉でそういう状態にして、こちらに恩を売ったのだ。そして、魔王クルシュもカルディアス帝にそういう意向があるのは知っている。しかし、それでも受けざるを得なかったと言う事だ。これでスタンリー公爵家は兵を連れて城を放棄して逃げれなくなった。それがこちらの懸念ではあったからな。まあ、借りとして受け取っておくぞ、華王」
そうアルフォソ王子がにぃっと笑った。
それは戦えることの喜びと何かが入り混じったような表情だったので、オブライエン侯爵だけでなく、周りに居た兵士がぞっとした。
「では、いよいよ、戦争と言う事ですか? 」
「この程度の兵士の出来上がり具合では実戦慣れしているスタンリー公爵家には苦戦する。さらなる兵士の訓練を行え。戦う時には奴等を圧倒するだけのものにせよ」
そうアルフォソ王子が皆を見回したので、オブライエン侯爵だけでなく兵士達も跪いて深く礼をした。
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「壁とは? 」
そうスタンリー公爵が執務室で部隊長と共に聞いた。
「城を思い切って捨てて戦う事も出来たが、これでオルス帝国の領土には入りにくくなった。奴はそれを狙って不戦条約を口頭で結びに来た。確かにオルス帝国の領土をこちらに邪魔されずに攻める為の対策のつもりだったが、それとともに縛王に恩を売ったんだ」
そう魔王クルシュが今度の事を話す。
「おいおい、えげつないな」
ジョージ部隊長が愚痴る。
「いやいや、城を捨てるの? 」
「領民の安全と、自由な状態で戦うなら城を囮にして思い切って城から出て戦うのもあり得たし、一旦逃げるのも手だったんだけど」
スタンリー公爵が唖然として魔王クルシュに聞いた。
「いや、領土だぞ? 」
アルバート守備隊長も突っ込んだ。
「それに固執して無い方が自由に戦える。領民がいれば再建は出来るし、援軍が来ないのに安易に籠城とか考えれば滅びの道でしかない」
そう魔王クルシュが断言した。
「ああ、そう言う戦い方してたんなら、厄介だとは思われるよな」
そう叔父の将軍が苦笑した。
「じゃあ、今、攻められたらどうすんの? 」
「これから考える」
ルイーザが聞いて来たので魔王クルシュがそう神妙にして答えた。
「これからかよ」
「思いっきり不安」
そうテイラー部隊長とクリス部隊長が愚痴った。
こうして、縛王とだけ見てればいい条件であるが、逃げると言う選択肢を潰されて、魔王クルシュは縛王と、この数週間後に戦いを始める事になる。
その状況の厳しさに皆の顔は冴えなかった。
これで第三部終わりです。
別の新しい作品を書いてるので、そちらが先に投稿になると思います。




