第三部 第五章
「で、何があったの? 」
スタンリー公爵が冷やかに魔王クルシュに聞いた。
それこそ、ボロボロの格好でスタンリー公爵の屋敷にたどり着いた魔王クルシュはへとへとになっていた。
だが、大事な問題なので、早急にスタンリー公爵に頼んで全部隊長を集めて皆で執務室で話し合いになった。
それにはルイーザも来た。
「それよりもどこに行ってたの? 」
スタンリー公爵の質問を無視してルイーザが魔王クルシュに聞いた。
「いや……大変なんだ……」
魔王クルシュがしどろもどろに答えた。
「いや、だから、何で王城に行ってた訳? 貴方はお尋ねものじゃない! 」
そうルイーザが厳しい口調で問い詰めた。
「いや、それが……」
魔王クルシュが返答に詰まる。
「いや、もっと大事な話があるみたいなんだけど」
そう叔父の将軍が間に入って話す。
「は? 」
「うん、そちらが先だよね」
そうルイーザに睨まれて叔父の将軍も黙った。
「何だか、王子がお化けが怖いから脅しに行ったと聞いたんですけど……」
そうルイーザが問い詰めた。
「あぅ」
魔王クルシュがそうやって目を反らす。
「正気なの? 」
「え? 」
「敵の王城に王子をビビらす為に、自ら乗り込んで行く馬鹿ってあり得ると思うの? 」
ルイーザがバンと作戦用のテーブルを両手で叩いて聞いた。
「……ここに」
「ふざけんなぁぁぁ! あんたが変な事すれば戦争になるのに分かってんのかっ! 」
ルイーザがさらに殺気立つ。
「いや、まあ、それは言えてると思うぞ」
「すでに、こちらはまさに王家の敵になりかねないんだから。刺激しないようにしないといけないのも確かなんだし」
そうアルバート守備隊長と叔父の将軍が同意した。
「いや、すいません。つい、昔の事を思い出して、やってしまって」
そう魔王クルシュが詫びた。
「いや、どんな王だよ」
「一応、武王だったんじゃないのか? 」
そうジェームス部隊長とクリス部隊長が突っ込んだ。
「部下に任せず、自分で動くタイプだから」
そう魔王クルシュが照れくさそうに笑った。
「そんな事やるなって話なんだけどっ! 」
ルイーザがさらに激高した。
「すいません」
そう魔王クルシュがしゅんと謝った。
「いやいや、魔王に本当に見えないね」
スタンリー公爵が苦笑した。
「いや、俺のは奇行が大げさに悪いように伝えられてただけだから」
そう魔王クルシュが苦笑した。
「分かってんなら、するなよっ! 」
そうルイーザが叫んだ。
「はい、申し訳ありませんっ! 」
魔王クルシュが深く深く頭を下げた。
「やれやれ。まあ、これはこれで終わらせて、で、皆を集めてどうしたの? 」
そうジョージ部隊長が仕方なさそうに魔王クルシュに聞いた。
「縛王が復活した」
そう魔王クルシュが話すと皆が一瞬固まった。
「は? 」
「え? 」
「どういう事? 」
一斉に皆が訝し気な顔で聞いた。
「あいつ、王城に俺と同じ魂で歩いてて、俺が攻撃したけど駄目で、アルフォソ王子の身体を乗っ取られた」
「は? 乗っ取る? 」
スタンリー公爵が動揺して聞いた。
「あいつは、昔から六王で一番特殊な能力を持ってて、他人に乗り移って、その身体と知識や記憶を奪って成り代わる事が出来るんだ」
「はぁあぁぁぁ? 」
「どういう事? 」
「昔からだ。そうやって他人に成り代わって乗っ取って戦うんだ」
そう魔王クルシュが呻いた。
皆がそれを聞いて唖然としていた。




