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第三部 第四章

 魔王クルシュが逃げた後に、衛兵達はたじろいでいた。


 明らかにアルフォソ王子の雰囲気が変わっていたからだ。


「私の護衛の近衛の一隊はどうなったのかな? 」


 そう衛兵にアルフォソ王子が冷やかに聞いた。


「国王陛下より、全て解体されて陛下の直属に戻りました」


 そう衛兵が答えた。


「そうなると、この身体だと困ったもんだな」


 そうアルフォソ王子が苦笑した。


 何故か、それで衛兵達が真っ青になって震えた。


 剣を落とすものもいた。

 

 彼らはぞっとしている。


 アルフォソ王子は苦笑しているだけなのに。


「では、仕方あるまい。お詫びを込めて陛下にご挨拶がしたいのだが」


 そうアルフォソ王子が笑った。


「あ……いや……前回の失態が……」


「それをお詫びしたいのですよ」


 そうアルフォソ王子が笑った。


 だが、それは衛兵達をさらに恐怖させた。


 結果として衛兵たちが走り回り、内々のお詫びをとの事で、アルフォソ王子と国王の謁見が行われた。


 そして、数時間後に国王が顔面が蒼白のままアルフォソ王子に近衛の指揮権を全て委譲した。


 それから、国王はアルフォソ王子に国王代理の特別な位も賜り、政治的な場から顔面蒼白なまま無言で逃げるように玉座から降りて引き籠るようになった。


 その後すぐにアルフォソ王子は宰相のバイロンを呼んだ。


 宰相のバイロンは近衛の指揮権の委譲と国王代理にアルフォソ王子をつける事に反対で、すぐに王城に現れたが、アルフォソ王子を見て絶句した。


 そこには気弱だった王子の姿は無くて、異様なまわりが畏怖するような気配をした王子が立っていた。


「どなたです? 」


 宰相のバイロンはそれだけを呟いた。


**********************************


 宰相のバイロンは半日の話し合いの後にふらふらになって屋敷に戻った。


 憔悴しきったバイロンは執事にも無言で書斎に行くとそのまま籠った。


 そして、次の日の朝に書斎で自ら喉を愛用の護身用の小刀で突いて自殺したような姿で見つかった。


 これによって、アルフォソ王子は国王代理とともに宰相も兼ねる事になった。


 実に数日で王城内の全てをアルフォソ王子の身体を奪った縛王は掌握して見せた。


 そして、新しく爵位を得た長子フランクのオブライエン侯爵はアルフォソ王子に従うしか無かった。


 動揺をしながらも集まった貴族達の前で王の謁見の間のアルフォソ王子の前にオブライエン侯爵は跪いた。


 そのあまりにも強力なアルフォソ王子の王としての威圧に宰相のバイロンがアルフォソ王子を糾弾した時に止めなかった事を深く詫びた。


「では、これからは忠節を尽くせ」


 そのアルフォソ王子の一言で全ての貴族が跪いてアルフォソ王子への忠節を誓った。


 実に一週間もたたず、アルフォソ王子として縛王は王城の近辺と近しい貴族達と近衛軍を掌握して見せた。


 それから、弱体化して軍としての力をアルフォソ王子は調練を行って鍛えなおし始めた。


 スタンリー公爵家に任せきりの外征を自ら興す事を視野に入れて、スタンリー公爵家をも併呑する為に。


 それはスタンリー公爵家を震撼させる事になり、血みどろの戦争が世界に拡がる事を意味していた。


 それなのにその大切な一週間をわざわざ王城に行ってたせいで戻るのに日にちがかかりすぎて馬鹿な事になった魔王クルシュは泣きそうになって、馬をスタンリー公爵領に飛ばしていた。



 



 



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