第三部 第三章
「いや、お前は良く考えろよ。魂が斬れると思っているのか? 」
縛王がそうため息をついた。
「やかましいわ! そう言う所が気に食わねぇんだ! 」
そう魔王クルシュが斬馬刀を振り回す。
壁を寸断して、置物を両断する。
それはあくまで連続して出された縛王への攻撃だった。
無駄だと分かっているのに、昔の思い出がそうさせるのか、魔王クルシュは斬馬刀を振り回すのを止めなかった。
そのせいで、アルフォソ王子の部屋への壁がグズグズに斬られて破壊された。
「オブライエン侯爵家の全てを見通す目とやらも本来は私の能力の一つだからな……麗王はまだ目覚めていないのだろう? 」
そう縛王が冷やかにベットの中で震えてこちらを見ているアルフォソ王子を見た。
「何を考えている? 貴様っ! 」
「今のお前は彼女に嫌われるのはまだしも、完全に拒絶されるのは耐えられないだろう。あの子は私の血筋に関係しているのかどうかは知らないが、随分と生真面目に育ったからな」
縛王がそう魔王クルシュを一瞥すると、布団にくるまって震えているアルフォソ王子に近づいていく。
「何? まさかっ! 」
「そう。アルフォソ王子がお前に殺されたらルイーザの心がお前を拒絶してしまう。だから、お前はアルフォソ王子を殺せまい」
そう縛王の魂は呟くと、アルフォソ王子の顔を掴んで、その身体の中に入っていく。
「お前ぇぇぇぇえ! それは反則だろうっ! 」
魔王クルシュが大激怒してベットごと斬馬刀で斬った。
だが、ルイーザが気になって、アルフォソ王子を斬れなかった。
ベットは両断されたが、それはアルフォソ王子の身体を避けて斬り落とされた。
「やはりな。お前の弱点は相変わらず麗王と言う事だ」
そう縛王であるアルフォソ王子がベットから身を起こして笑った。
もはや、アルフォソ王子のおどおどした姿は消えて居た。
縛王はアルフォソ王子の身体を確かめるように手を握ったり開いたりした。
「何だ! あの轟音は! 」
「また王子のとこだ」
「だが、廊下が破壊されてるぞ! 」
衛兵の声が遠くから聞こえる。
「さあ、早くスタンリー公爵家に戻れ。一か月程度で俺がこの国を掌握しよう。それからはまた楽しい戦争ごっこだ」
そう縛王であるアルフォソ王子が笑った。
「き、汚ねぇっ! お前っ! それでルイーザに手を出したらぶっ殺してやるぞっ! 絶対だからなっ! くそうっ! 」
魔王クルシュがじたばたと大暴れしていた。
だが、衛兵たちの声が近づいてくる。
「ふんっ、そんな事などするか」
そう縛王であるアルフォソ王子苦笑した。
「約束だからなっ! 」
そう言いながら魔王クルシュが王子の部屋の外側の壁を斬馬刀で両断して大きく開けると衛兵が来る前に外に飛び降りた。
それをベットの上で上半身だけ起こしながら縛王であるアルフォソ王子がじっと見ていた。
「ふん。最後までこちらの気持には気が付かなかったか……」
そう少し寂し気に縛王であるアルフォソ王子が膝小僧を抱きしめて魔王クルシュが見送りながら呟いた。
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王城を逃げだすと魔王クルシュは隠しておいた自分の馬に乗ってスタンリー公爵家の方へ走らせた。
「奴が一か月と言ったと言う事はそれより早く動くはず。どうする……どうするんだよ、あの容姿っ! ルイーザの心がっ! ルイーザの心が奪われてしまうっ! あああああああああああああああああああああああああああああ、最悪っ! 」
魔王クルシュがたまらず絶叫した。
その結果、兵士に疑われて追いかけられる羽目になるのだが。




