第二部 第七章 終わり
「ああっ! 」
ルイーザが身を震わせて倒れた。
それと同時に、城郭に薄く張り続けられていたバリアのような障壁が砕けた。
「ふははははは、障壁が破けた! 見たかっ! 王家にはバルカスが敵対した時の為の神宝が残されていたのだ! これがあればバルカスの能力を封じる事ができる! 愚か者どもがっ! 」
生き生きとした表情で、オブライエン侯爵の長子フランクが叫んだ。
それで、スタンリー公爵の部隊長達に緊張が走った。
「ははははははははははははははははははは、やっぱり馬鹿は馬鹿と言う事か! 」
いきなり魔王クルシュが爆笑を始めた。
「な! き、貴様は! 魔王クルシュか! 貴様のせいで父がっ! 」
オブライエン侯爵の長子フランクが血走った目で魔王クルシュを見た。
「何故、考えない! その神宝の噂がどこから出たか! その話が俺がこの世界に姿を現すようになってから拡がった話だと何故考えなかった? バルガスの力を封じ込める事が俺の封印をとくことになると思わなかったのか? 」
その魔王クルシュのあざ笑うような声を聞いてオブライエン侯爵の長子フランクが震えた。
「そんな……」
「復活だ! 魔王クルシュ……いや武王の復活だよ! 」
そう魔王クルシュが笑いながら、その霊体だった肉体が普通の姿に戻って行く。
肉が盛り上がり、彼が信じがたいくらいの武神であることが分かる。
「ふはははははははははははは、復活だ! 私はこの世界に戻って来たぞ! 」
魔王クルシュが喜びが爆発したように叫びづづけた。
魔王クルシュが右手を挙げるとそこに雷光が集まり、一振りの長大な剣が現れた。
斬馬刀とも言われたその剣は凄まじい黒光りを見せた。
「ああああああああああああああああああ! 駄目だ! 魔王クルシュが復活してしまった! 」
最初から怯えていたアルフォソ王子が金切声のような悲鳴を上げて逃げだした。
それと同時に雪崩を打って兵士達が逃げ始めた。
武王の凄まじさの話は残って無くても、魔王クルシュは縛王のせいでどれほど恐ろしいのかはずっと国中に伝えられてきた。
全てが崩れた。
オブライエン侯爵の長子フランクがトップならともかく、怯えていたアルフォソ王子がこの合戦の名目上のトップだった。
前回はオブライエン侯爵が居たので堂々としていたが、今回は違った。
一気にアルフォソ王子の怯えと逃走が拡がり、一戦を交えることなく、悲鳴を上げて彼らは逃げ出した。
「ふははははははははははははははははははははははははははははははははははは! 」
そう高らかに魔王クルシュは笑い続けた。
本来ならそれを見て怯えるはずのスタンリー公爵達であったが、十年以上のつきあいが逆に冷静にさせていた。
「ねえ。ひょっとしてだけど。何か戦う作戦とかあったの? 」
スタンリー公爵がぼそりと魔王クルシュに聞いた。
「ううん? 無いよ」
魔王クルシュがあっさり答えた。
「じゃあ、わざと大げさに騒いだだけなの? 」
叔父の将軍が呆れたように聞いた。
「いや、向こうでいろいろと調べたけど、随分、魔王クルシュが大げさに喧伝されてるなと思ってさ。復活したと騒いだら逃げるかと思ったら、本当に逃げたね」
そう魔王クルシュが笑った。
「うわぁ、えげつな」
「わざと騒いでビビらせたんだ」
「いや、アルフォソ王子が最初から怯えてたからいけるかなってね。やっぱり指揮官が怯えていると、それは全軍伝わるから」
そう淡々と魔王クルシュが話す。
「それにしては嬉しそうでしたよね。演技に見えなかったんですが? 」
そうジョージ部隊長が聞いた。
「だって、今日から夜這いが出来るんだよ? 」
「そっちかよ」
「うわぁ、引くわ」
「全部の本音を聞いてたら、あいつら悔しがるだろうな」
魔王クルシュの言葉に部隊長達がドン引き。
「へー。で、それから? 」
凄まじい殺気とともに魔王クルシュが振り返ると、ルイーザが居て渾身の金蹴りを魔王クルシュに食らわせた。
だが、それを魔王クルシュは内股を絞めて、強力な筋肉で金蹴りを防いで見せた。
「ふふふふふ、魂だけと違って、この肉体なら大丈夫だ」
そう魔王クルシュが余裕で笑った。
「へぇぇぇぇ」
ルイーザがそう笑うと、父親のスタンリー公爵の腰の剣を抜いて魔王クルシュの股間を突こうとした。
「いやいや、それは無理じゃ無いかな」
そう股間を押さえて魔王クルシュが慌てて悲鳴を上げて逃げたした。
「あーあーあーあーあーあー」
「どうしょうも無いねぇ」
それを見てスタンリー公爵と叔父の将軍がため息をついた。
部隊長達もルイーザに追っかけまわされる魔王クルシュを見てため息をついた。
だが、とうとう魔王クルシュが復活したと言う情報が世界中に駆け巡った。
これが厄介な敵たちを呼び込む事になるのを彼らは想像してたけど、魔王クルシュは股間を押さえて逃げ回り、それどころじゃなかった。
ルイーザが本気で突いてくるので魔王クルシュの股間の手の甲は血がだらだらと出ていた。
「いやいや、本当に刺すのは反則だと思うよっ! 」
魔王クルシュの情けない声が城郭に響き渡った。
この後に投げやりなキャラクター紹介を投稿して第三部までお休みです。
ブックマークをありがとうございます。
第三部を早く書く原動力になりますので、是非ともブックマークと評価をお願いいたします。
では、某アニメ第三話を見て、少しでも皆様の応援がいただけますように。
「武王……頑張れぇぇぇ! 」
この言葉で締めさせていただきます。