第二部 第四章
「でさ。今後の展望はどうするの? 」
スタンリー公爵のに各部隊長や守備隊長や将軍の叔父まで集まって、魔王クルシュを中心に話し合いが始まっていた。
基本的にいつも、今後についての話し合いをする時は、この書斎にちょっとしたテーブルと椅子があり、皆で今後の防衛計画とか戦争の話をするのが常だった。
「とにかく身体が元に戻らないと……」
魔王クルシュが深刻な顔で呟いた。
「何か、戻らないとまずいの? 」
「夜這いが……」
そう魔王クルシュが悲しそうに呟いた。
「もう、良いじゃん。婚約したんだし」
「すでにゲロ吐いて戦った以上、もうお嬢は終わりでしょう」
「他に結婚したい人なんて現れないよ」
「ちゃんと、トドメを刺したのに」
そうクリス部隊長やアルバート守備隊長が突っ込んだ。
その時に、その書斎のドアが静かに開いてルイーザが無言で立っていた。
「いや、確かにまだまだ、お嬢は魅力十分だからね」
「その通りだな」
「お嬢の美しさに惹かれる男は一杯いるだろうからな」
そうクリス部隊長やアルバート守備隊長が手のひらを返したようにルイーザを賞賛した。
全員が小刻みに震えていた。
「ルイーザっ! やっと俺の封印を解くのに賛成してくれたんだね! 」
そう魔王クルシュが嬉しそうに飛びついたら、一瞬早く股間を蹴り上げられて、魔王クルシュは悶絶して飛び跳ねていた。
「容赦無いなぁ」
スタンリー公爵がぽそりと呟いた。
「一応、魔王クルシュは婚約者なんだから大切にしないと」
「は? 」
叔父の将軍がそう宥めたが、ルイーザに物凄い顔をされたので黙った。
「それよりも、あの大量の酒とかを街から買い占めて城に集めてるけど何なの? 」
ルイーザがそうスタンリー公爵に責めるように聞いた。
「いや、あれは魔王クルシュに言われてやってるんだが」
「また、私にバルカスを降ろして戦わせる気っ? 」
そうルイーザが激高して魔王クルシュの胸倉を掴んでゆさゆさと揺らした。
「いや、あれは別の意味があるんだが」
「バルカスの力を使う以外に何の意味があるって言うのっ? 」
魔王クルシュの言葉にさらに激高してルイーザが魔王クルシュの首を締め上げた。
「いやいや、相手への牽制にはなるんじゃないかな」
そう冷静に叔父の将軍が答える。
「それは言えてますよね。安易に攻めてこれなくなると思うんですが」
クリス部隊長も同意した。
「そもそも、ボウガンがあるし。向こうはそう簡単に攻めてこれないと思うけどな」
アルバート守備隊長もそう苦笑した。
「いや、ボウガンは向こうでも試作してるって話はあるし、向こうも使うから難しいだろ」
「え? そうなの? 」
「ああ、情報を集めていたが、オブライエン侯爵も城を守るのに便利なんで作らせていると話が合った。あちらはそもそも全てを見通す目があったから、こちらの武器もある程度見れるはずだしな。ボウガンのメリットはあまり訓練せずに相手を攻撃できるレベルになれる事だ。これが長弓とかなら、そう簡単にはいかないがボウガンは指で引き金を引くだけだからな」
そう魔王クルシュが説明した。
「なるほどな。それは困ったな。ボウガンがあるのがこちらの強みだったのに」
「いや、騎馬でのボウガン発射は流石に訓練がいるし、こちらの騎馬ボウガン隊は真似できないでしょう。ただ、相手の陣とかを攻撃するのが大変かもしれないですけどね」
そうスタンリー公爵の言葉に叔父の将軍が意見を述べた。
「多分、また攻めてくるとは思うんだがな」
そう魔王クルシュが呟いた。
「いやいや、あんな惨敗したのに? 」
テイラー部隊長が信じられないと言う口ぶりで答えた。
「いや。オブライエン侯爵家としたら引けないし、息子のフランクもやらざるを得ないだろう。それにオブライエン侯爵の盟友の宰相のバイロンも無傷だし。流石に口添えするだろうしな。このままではオブライエン侯爵家は終わりだし」
そう魔王クルシュが答えた。
「えええ、また戦争? 」
「参ったな。領民も不安がるんだが」
そう皆の動揺と共にスタンリー公爵が困った顔をした。
「始まってしまったものはしょうがないだろう。これからいろいろと動いてくるだろうしな」
そう魔王クルシュが生前の戦い合った六王を思い出したのか静かに呟いた。
それを皆が困ったようにじっと見ていた。
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「バイロン殿。私は父の仇を取りたいのです」
切々とオブライエン侯爵の長子フランクがバイロンに策を請うた。
「本来は悪手です。これをやれば近隣の国から信頼されなくなるかもしれない。しかし、相手は魔王クルシュ。悪を倒すためには悪でもやらざるを得なかったと言い訳しましょう。悪手だとしても、まずは相手を倒す事が大切ですし。又バルカスの力に関しても、私は王家に伝わるある神宝の事を知っています」
そう宰相のバイロンが話す。
「おお。それをお聞かせください。何としても父の仇を取らねば」
そうオブライエン侯爵の長子フランクが目を輝かせた。