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第二部 第三章

「王子がお戻りになられました」


 そう国王の側近が報告した。


 馬を継ぎ継ぎ使い潰す事で王子が逃げてきたとか細かい報告を側近が続けていたが、国王はじっと前を見たままだった。


「陛下、只今帰りました」


 そう、真っ青な顔でアルフォソ王子が謁見のまで跪く。


 だが、国王は無言のままだ。


「オブライエン侯爵は……殺されました」


 そう息も絶え絶えにアルフォソ王子が報告した。


 だが、国王は黙ったままだ。


「父は、父はどのように討たれたのでしょうか? 」


 オブライエン侯爵の息子であるフランクが真っ青な顔でアルフォソ王子の前に進み出た。


 横にはアルフォソ王子と婚約したカテリーナが居た。


 二人とも、ショックで青い顔のままだ。


「あ、あの……ルイーザに跳ね飛ばされて……」


「は? 」


 アルフォソ王子の言葉に国王が初めて反応した。


「ルイーザがいきなり酒を飲んで、それから暴れ出して……」


「え? 」


 国王の異様な雰囲気に飲まれた様に皆が茫然としている。


「ど、どういうことですか? 私の父は単なる文官で無く、全てを見通す目で未来が見える武でも天才のはず」


「いや、ルイーザが吐いてオブライエン侯爵の目が吐瀉物で潰れたところをスパーンと……」


 アルフォソ王子がそうしどろもどろにオブライエン侯爵の息子のクリスに答えた。


「他に兵士達がついていたはずですが。彼らは選りすぐりの兵で……」


「彼らも弾き飛ばされて空を飛んだり、首を折られたり……」


「あの御方は武人ではなく、公爵家の令嬢なだけで、そんな強いとか言う話は聞いた事はありませんが……」


 カテリーナが動揺して聞いた。


「いや、私も聞いた事は無いんだが……」


 アルフォソ王子がそう呻いた。


「バルカスを降ろしたのか? 」


 そう国王がはっとなって呟いた。


「そう言えば、オブライエン侯爵がそんな事を言っていたかと……」


「何? じゃあ、ルイーザは! あれは麗王の生まれ変わりかっ! 」


 一人だけ事情を口伝で知っている国王が震えながら叫んだ。


「は? 何です? 麗王? 」


 アルフォソ王子が首を傾げた。


 王位を継いだ時に、告げられる口伝はまだアルフォソ王子には知らされていなかった。


「それで、ルイーザの周りをうろうろとしていたのかっ! 」


 さらに国王が異様な事を叫ぶので家臣達が一斉に首を傾げた。


「ううむ。どうするか……」


 そう国王が考え込んだ。


 縛王が王家に伝えていた最悪の状況になりつつあるのが見えていた。


「お待ちを。それならば私が再度出陣して、父の仇を取りたいのですが」


 そうフランクが国王に跪いて願った。


「いや、これ以上は……」


 と国王が言いそうになって黙った。


 ここでオブライエン侯爵の血筋が耐えてしまった方が、スタンリー公爵家との交渉に邪魔が入らなくて済むのでは無いかと思ったのだ。


「ぜひ、アルフォソ王子とともにスタンリー公爵と再戦をしたいと思っております」


 さらにフランクがそう願い出た。


 カテリーナも国王とともにアルフォソ王子にお願いするような目で見ている。


「ええええ? 」


 アルフォソ王子が凄く情けない顔をしていた。


 しかも、震えている。


「王子……」


 うるうるとカテリーナがアルフォソ王子を見つめていた。


「いや、前回も私は反対したのだ。今回のかたき討ちはオブライエン侯爵と仲間の貴族達でやってくれ。今回も近衛は出せない。王子も今回は駄目だ」


 国王がそう断言した。


 それはオブライエン侯爵家を国王が切り捨てたと言う事になる。


「王子っ! 」


 そうカテリーナがアルフォソ王子に抱き着いた。


「陛下。今ここでフランク殿を見捨てる事はオブライエン侯爵家を切り捨てたと見られますぞ」


 そう宰相のバイロンが進言した。


 本気で切り捨てていた国王からしたら、その通りだと言いたいとこだが、宰相のバイロンも長くオブライエン侯爵と二人三脚で政治を行っていただけに無視はできなかった。


「分かった。それならば王子は一緒に行ってかたきを討つのを手伝ってやれ」


 そう国王は近衛は手放さず、王子を差し出した。


 国王からすればまだ赤子であるが別の王子もいるので、万が一があっても仕方あるまいと言う事だったのだろう。

 

 アルフォソ王子があの惨劇を思い出したらしくて泡を吹いて倒れた。


 それを国王の側近達が肩を落として見ていた。

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