ルイーザ 第十三部 第五章
「待っていただきたい! それは本当の事なのか? 」
コンラート皇帝が焦って水龍神ラトゥースに問いただす。
「本当だ」
「それならば、大陸西部の大国ウルギス帝国が関係しているという事になるでは無いですか! 」
「そう言っている」
その言葉でコンラート皇帝をはじめ、魔王クルシュやカルディアス帝やロイド法王やそこに居る全ての臣下までどよめいた。
「しかし、ウルギス帝国は我らの前世より古い四百年以上前から大陸西方に広大な領土を持ち、その一神教ゆえに我々の多神教のこちら側には関わらずの方針を取っていたはずですが」
「そうだ。教王が中央から東方をまとめるのを待っていたらしい」
「馬鹿なっ! 」
「いくらなんでも! 」
ロイド法王とコンラート皇帝がそれを否定した。
「最初から、その予定だから、こちらに介入してこなかったという事だ」
「待ってください。しかし、魔と一神教の神が組んでいるのはおかしくありませんか? 」
麗王のさっきまでの雰囲気は吹っ飛んで聞いた。
「いや、魔は元は神の眷属たる神の遣いであったが、反逆して魔になったと言うのが一神教のアッシュル神の教義だ。だからこそ、魔が支配した東方全てを討伐して、降伏させ、再度、神の遣いに戻し併合すると言うのが元々の計画らしい。どうりで悪神などと我を呼ぶはずよ。邪魔だからな。その計画に……」
「デキレース? 」
「そう言う事だ。アッシュル神の偉大さとウルギス帝国の正統性を見せる為の謀だ。敵はバラバラにするよりもまとめた方が良いと言う考えからやってたらしい」
魔王クルシュの突っ込みに水龍神ラトゥースが答える。
「じゃあ、教王がうちの海兵隊を使って探しても分からなかったのは……」
「そうだ。ウルギス帝国だけが持つ、昔からの空騎兵ワイバーンを使って連れ去ったのだ」
「まずいな……。それならまずい……」
コンラート皇帝の顔が真っ青になる。
位置的に一番最初にウルギス帝国とぶつかり合うのはゼクス帝国なのだから。
「それはまだ、こちらにそれがバレたとは向こうに知られていないのですか? 」
「ああ、さっき聞き出した」
「ここに居る全員に緘口令をしく! ゼクス帝国も僧会のものも同じだ! 」
カルディアス帝が水龍神ラトゥースから聞き出した後に、即座に皆に怒鳴った。
「カルディアス帝の言う通りです! 僧会の者も全員緘口令を……。誰にも喋ってはいけません」
「あ、ああ……ゼクス帝国のものにも命じる! 」
ロイド法王とコンラート皇帝がカルディアス帝の言葉に同意した。
「まずいな。ワイバーンはまずい」
麗王がそう呻く。
「400年……いや500年近く彼らと戦争してないからな。我ら一神教は多神教の世界に関わらずが彼らのずっと長い事の方針だったわけだ。それだけ時間をかけたせいで、我々は彼らとそれぞれが結んでいる300年以上前の守られ続けていた不可侵条約を信じ切っている。だからこそ、空騎兵に対する準備が出来ていない」
コンラート皇帝が呻く。
「今までで間違いなく一番最悪の状況だな」
「何とか、対応しないと……」
「いや、それよりも。我が神、水龍神ラトゥース様に伏してお願いがございます」
焦りまくるカルディアス帝とコンラート皇帝を制して、魔王クルシュが水龍神ラトゥースに深く跪いた。
それを訝し気にカルディアス帝とコンラート皇帝とロイド法王が見た。
「私に免じて、教王に報復はしばらくお待ちいただきたい」
そう魔王クルシュが祈るように頼むと、カルディアス帝達が真っ青になった。
水龍神ラトゥースは絶対に教王に報復するし、そうなるとウルギス帝国も攻撃することになってしまうからだ。
だが、答えは皆が思っているものと違った。
「嫌だ」
水龍神ラトゥースは即答した。




