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第一部 第一章

 スタンリー公爵家の屋敷の私の部屋の窓辺から外を見て、静かに私はため息をついた。


 長い銀髪を自分で弄びながらため息ばかりつく。


 私はルイーザ・スタンリー。


 スタンリー公爵家の一人娘だ。


 スタンリー公爵家は酒と武道の神のバルカス神の加護を持つ家系で、全てを見破る目を持っていた。


 それは王家のもう一つの至宝と呼ばれる全てを見通す神オルシアスの加護を持つオブライアン侯爵家とともに、この二つの一族しか持っていない特別な加護魔法だ。


 その力は相手の隠された正体を見破ると言う事で王家からは非常に頼りにされていた。


 だが、私にとって、それは悪夢の力だった。


 いや、お父様やお母様にとってもだ。


 何故なら、死者すら変わらぬように見えると言う特殊なものだからだ。


 そして、死者と変わらぬように話せる事や魔の力が見える事で我等のように全てを見破る目を持つものは悪辣な奸計や罠を見破って来た。


 代々、武で仕えるスタンリー公爵家と知で仕えるオブライエン侯爵家は二つの王家の側近として王国を支えてきた。


 かってこの世界は魔王クルシュと呼ばれる強大な力を持つものが侵略してきた事がある。


 魔王クルシュは神と悪魔の血を持ち、この国をもう少しで支配する所だった。


 それを光と力の神である主神アクシェルが降臨し、血を分け与えて勇者として戦わせたのが今の王家の血筋だと言われている。


 そして、神バルカスを守護神としているスタンリー家と神オルシアスを守護神としているオブライエン家はその時ともに勇者のパーティーを導いたパーティーメンバーとして初代の先祖が参加した仲間だったとか。


 その戦後にスタンリー公爵家は大きな大きな秘密の役目を貰った。


 それが勇者だった初代英雄王が封印したと言う魔王クルシュの魂が入っている水晶玉の管理である。


 このスタンリー公爵家の屋敷の地下に小さいが強力な神殿を作り、武の強力な力を持つバルカスの力でさらに水晶玉を封印し見守っているのだ。


 私が自室の窓からそれらを思い出してため息をついた。


「やはり、婚約破棄になったか」


 そう私の背後で声をかけてきた黒いマントを羽織った男が話しかけてきた。


 マントは見すぼらしいがその中のまっ黒い革製の鎧が相当な武人である事を見せていた。


 そして、怜悧な氷のような目をしつつも、たまに笑うとそれが氷を溶かしたように感じさせる優しさを感じさせる美しい男だ。


「だから、(じょせい)の部屋に勝手に入らないでって言ったよね? 」


「何を今さら。お前が子供の時から見守って来たのに」


「守っては無いでしょうに」


「守ったぞ? お前がお転婆で子供時にベットから落ちそうになった時に支えてやっただろ? 」


「また、その話? 」


「いや今回の婚約破棄だって、そうなると予告していただろうに」


 そう黒いマントを羽織った男がそう愚痴る。


 そう、この男こそ魔王クルシュ、その人であった。


 と言っても大部分の力は封じられていて、単なる魂としてうちの屋敷の中をうろうろしているのだが……。


「真面目な話。屋敷の外に出ないでよ? 」


 そう、私が魔王クルシュに突っ込んだ。


 実は魔王クルシュの封印が少しずつ破れていると知れたら大騒ぎになる。


「分かっている。だが、そもそもお前の家族のスタンリー公爵家とオブライエン侯爵家のもので無ければ私の魂の姿は見えん」


 そう、少し不貞腐れたように魔王クルシュが答える。


 伝承によると恐ろしい魔王だったそうだが、現実は生真面目でお節介なだけだ。


 本人が言う所によると、英雄王との戦いも見解の不一致だそうで。


 本人は神と魔の力を持って、何としてもこの国の貧民達を救おうとしたらしい。


 だが、その強大な力と魔の血を恐れた人々が彼が必死に助けたのに、それを受け入れてくれなかったらそうな。


 国民の皆を魔王クルシュが助けてくれても後で何か国民の皆に無理難題を突き付けてくるのではないか? それとも、罠なのでは無いか? と信じてくれなかったのだ。


「だから、普段から言っていただろうに。私のように正しい事でも人は受け入れるとは限らないと。小さな親切大きなお世話と言うでは無いか」


 自分の事を思い出したのか吐き捨てるように魔王クルシュが呟いた。


「いや、でも、私は婚約者として、どうしても言わないといけないと思ったから王太子であるアルフォソ王子に注意したのよ。顔も良いしスタイルも良いしモテるのは仕方ないけど、そういうお遊びはご自分の即位の為にもよろしくないと」


 私がきっぱりと話す。


 アルフォソ王子は格好良い。

 

 それは間違いない。


 さらに優しいので女性がほっておかないのだ。


 だから、強引な女性に引っ張られては悪い噂になっている。


「ふむ。それは正しいが、ああなってはどうしょうも無かろうに」


「でも、あの御方は優しいだけなのよ」


 そう私が魔王クルシュに答える。


「皆が理解してくれなくて駄目になった奴が目の前にいるだろうがっ! 」


 魔王クルシュが叫んだ。


「だから、そうならないために頑張ってたのよっ! 」


 私が怒鳴り返す。


「目の前の現実に学べっ! 」


「だから、良いところもあるのっ! 」


「あんな奴が良いのか……」


 ちょっと魔王クルシュが拗ねたように話す。


 昔から、魔王クルシュはあれは駄目だといろいろとアルフォソ王子の欠点をあげつらうが、単にアルフォソ王子が嫌いなだけだと思う。


 昔の自分を見ているみたいで辛いのかもしれない。


「ルイーザ。こんなところに居たのか」


 そうスタンリー公爵であるお父様が手早く私の部屋をノックするとドアを開けて入って来た。


「ええ。お父様。ごめんなさい」


 そう私は素直に謝った。


 長い事、王家に嫁ぐのはオブライエン侯爵家だった。


 政治の補佐もするので、自然とそうなったのだ。


 だからこそ、王家に嫁がないで外戚にならないスタンリー公爵家はオブライエン公爵家より一段地位としては上に置かれていた。


 だが、長い事オブライエン侯爵家と結婚が続き先王が血の濃さを心配して私と孫の王子の結婚を決めたのだ。


 だが、それは長い事王国の政治を抑えていたオブライエン侯爵家の酷い反感を買ってしまった。


「いや、お前は悪くない。先王に話を持ち出された時に断っておけば良かったのだ。魔王クルシュに言われた通りにすれば良かった」


 そうお父様は呻いた。


「その慌てようだとやはりか」


 魔王クルシュがそう呟いた。


「うむ。オブライエン侯爵家は今回の事を不敬と言う事で、王国の近衛兵を動かしだした」


 そうお父様が呻く。


「やはりな」


「でも、近衛兵ならスタンリー公爵家の辺境軍だけで大丈夫では? 」


「お前には言ってなかったが、隣国のオルス帝国がオブライアン侯爵家と組んでいるのさ。つまり、スタンリー公爵家は前と後から挟み撃ちになる」


「嘘でしょ? 」


 私が唖然として叫んだ。


「先王から、オブライエン侯爵家の動きがおかしいと言われて牽制を頼まれて、婚姻を受け入れたのだが、すでにここまで良くない事になっていると思わなかった」


 そうお父様が爪を噛んだ。


「何て事……」


 私も絶句して黙った。


「ついでだからもっと大事な話もしておけば? 」


 そう魔王クルシュがお父様に話しかけた。


「え? 話すの? 」


 凄く困った顔でお父様が黙った。


「いや、一番大事だろう」


 そう魔王クルシュが苦笑した。


「そ、そうか……」


 お父様が顔を伏せて悲しい顔をして、私を呼んだ。


 魔王クルシュもそれについてくる。


 私の頭が凄い混乱をした。


 実は私は婚約破棄を言い渡された後、何故か記憶が無いのだ。


 何かトンデモナイ粗相をしたのだろうか。


 そう、不安になりながら私がついて行くと奥の客間に案内された。


 そこでは私の面倒を普段から見ているメイドのキャシィ達が泣いていた。


 一体、何があったのだろう。


 私が不安で泣きそうになった。


 客間の真ん中には花が大量に手向けられていた。


 そこに豪奢な棺があった。


 何故か、そこに私が寝ている。


「え? 」


 私がそれを見て驚いた。


「お前、毒殺されて毒は吐き出したけど、間に合わなくて死んでんだ」


 そう魔王クルシュが顔を伏せたお父様の横で軽く答えた。


「えええええええええええええええ? 」


 私が絶句した。

 

 これから一体どうすれば……。


 


 


 


 


 

 アホなんで6/30に締め切りと思ってました。

 今回は話がキッチリかけて推敲してから投稿しようと思ってたのが、いつも通りのストーリー骨子に当てはめて書いての投稿になってしまいました。

 なるべく早く一部を書き終わります。

 一部って書いてありますが、これだけの本編になるかもしれませんが。

 

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