15:00
芝生広場の時計は三時を指していた。昼間と夕方を混ぜた方向性の定まらない時間。
「帰りましょう」
「ああ、うん」
幼女を肩車して公園のもう一つの入り口に向かう。家には少し遠回りになるけど、吠えてくる犬のいないルートを選んだ。
もう一つの公園入り口の手前にさしかかると、そこには用具倉庫があった。
[公園関係者以外、使用禁止]
「何見てるの、行きましょう」
「まあ。ちょっとだけさ」
使用禁止と書かれると、一体何を禁止しているのか確かめたくなる。
倉庫は畳二畳分の大きさだ。扉は施錠され、4桁の数字の輪を回して合わせるタイプの錠前が掛かってるから、大事なものはしまっていなさそうである。
僕は錠前の掛け金を強く引くきながら、それぞれの桁の数字を回した。「当たり数字」のところに来ると、掛け金が僅かに動くので、それを手がかりに輪を一つずつ回していくのだ。
程なく錠がはずれ、扉を開けてみた。
倉庫の中には地面に白線を引く道具と、鉄の杭、虎ロープ、竹ぼうき…。大したものは見当たらない。
僕はそれらに一切手を触れないまま扉を閉めると、当たり番号を別の数字に変え、錠前をかけ直しておいた。パスワードは時々変えたほうが良い。