膝だっこ
膝の上に幼女を載せる。思ったよりも柔らかく、手で支えていないと折れ曲がってしまいそうだ。錦鯉の大きさの魚肉ソーセージとでも言えばいいか。
幼女の両脇に僕の手を差し込む。
「アーサー」
「あの看板はなんて書いてあるの」
広場の入り口にある看板には赤い文字でこう書かれていた。
「変質者注意!」
「アーサーも良い線行ってるわ」
「僕が変質者って事?」
「そこまでは届かないけど、私を連れていなかったらどう見られることでしょうね」
僕は変質者ではない。なぜなら幼女を連れているからだ。
僕と幼女の座るベンチは芝生広場の端っこにあった。
広場を見渡すと親子連れやカップルがほとんどだ。ボールやフリスビー、ゴム動力の飛行機で遊んでいる子供たちに、大人も混ざってはしゃいでいる。子供のいないカップルはレジャーシートを広げ、くっついて座っている。簡易テントを張り一人で寝転んでいる人もいるけど、この場所ではどちらかと言えば例外の様だ。
今僕は、膝に幼女を載せることを芝生広場への滞在許可証としている。借りてきた幼女との急ごしらえの関係でも、集団に溶け込むことに対しては、十分役に立つのだから、世の中なんてみんな急ごしらえの何かで出来ているのだろう。