幼い質問
幼女は挨拶するなり、こう言い出した。
「私と結婚したくば、みっつの質問に答えるの」
「まだ試用期間中だ」
「良いから答えなさい」
幼女はすまし顔で人差し指を立てながら
「一つ目の質問『青くて広いものは』」
「空」
「残念、海でした」
「ふざけんな」
「今のは、なし」
「改めて、一つ目の質問『夜を見たことがないものは』」
「太陽」
「あら、正解ね」
「二つ目の質問『姿があるときには形が無く、形があるときには姿の無いものは』」
「川」
「ふん、良いでしょう」
「じゃあ、三つ目の質問よ『生まれる前に死に、死ぬ前に生まれるものは』」
「夜」
「そうね。間違ってはいないわ。ところであなたの名前は」
「教えない」
「じゃ、さよなら」
「まった!アーサーだ。僕の名はアーサー」
「偽名でしょう」
「…はい」
「まあ良いわ、アーサー。いえ、お兄様」
「娘がいいな」
「では、パパ」
「ははは、どうしたのかね」
「帰るわ」
「待ってくれ、パパを捨てないでくれ」
「血のつながらない父娘よ」
「はい」
「…もう少し、否定してほしいわね」
「全くその通りだな!」
少女は自動終了した。僕は少女の再起動を試みたものの、その日はもう起動する事はなかった。