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97. 心が折れた日

 十一月九日水曜日。

 イタリア時間の深夜零時。


 僕は封印の間から出て、日本の家に行った。

 ライラに会うためだ。

 ライラは丁度朝食を食べていた。


 黙ってライラの前に立つとライラも黙って頷いた。

 そして、ライラの手のひらに握られていた黒い二センチほどの靄が周りにまとう核の球を全部で三個受け取った。

 それを見た徠夢が僕に何かを言った。

 でも僕にはその言葉が理解できなかった。

 僕はぐるりと目玉をそちらに向け、どうにか言葉を発した。

「オマエは誰だ?」

 徠夢が大声を出し、テーブルをたたいているのが見えた。でも、なんとも思わなかった。

 僕は、僕の中で何かが起こってるって、理解してはいるけど、気づかないふりをしていたのかもしれない。僕はずるい人間だ。僕は卑怯なやつだ。皆を幸せにするなんてこと、できるはずはない。どうして、こんな風になったんだろう。

 僕は父様や母様に愛されたかった。

 でも、それはもう叶わない。父様の関心はもう僕にはない。

 苦しい。悲しい。そして憎い…。

 何が悪かったの?アンジェラは 僕の全てをわかってくれる。

 でも、本当にそうなのかな?僕はアンジェラが思っているような人間じゃない。

 僕は僕を許せない。僕の事を心から愛してくれているアンジェラに僕はちゃんと応えられていない。僕は 僕が憎い。僕は愛されてはいけない人間だ。


 僕は自室に入り、腹の中にライラから受け取ったばかりの黒い核を腕を突っ込んで一つ入れた。服に穴が開き、着ていた服が血まみれになった。服を脱ぎ、血を浴室で洗い流し、別の服を着た。

 部屋を出た時、すれ違ったアズラィールに、「面倒かけてすまない。」と言った時から、僕はそれまでの記憶と現在の自分を結びつけるものが段々薄くなっていると感じた。


 ライルとリリィは心の奥底に封じられ、僕は無表情の人形のように変化しているような気がした。


 最後に何かを伝えたくて、アンジェラに会いに行った。

 アンジェラは泣いていた。アンドレが消え、僕がいなくなったから。

「アン、ジェラ…」

 アンジェラはすごい泣いて僕を抱きしめてくれた。

 でも、僕にはもう人間らしさがほとんど残ってなかった。

 最後の理性を振り絞り、アンジェラに口づけをした。

「ごめんね…。」

 その言葉を最後に僕は光の粒子になって消えた。


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