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94. Case8 フィリップ

 十一月七日月曜日。

 一度家に戻り、食事の後、睡眠をとってからフィリップの回収に行くことになった。

 やっぱり探偵みたいな尾行などはものすごく疲れるのだ。

 シャワーを浴びてかわいいふりふりのついたパジャマに着替えた後、ベッドに潜り込んだ。

 多分、三秒で眠りについたと思う。体が重くて泥のようだ。

 お、重い…。すごく…。でかい手で、口を押えられた。えっ、これって、やばい。

 手を上げようと思ったら、手を抑えられた。転移しようと思ったら耳元で話しかけられた。

「僕、僕だよ。リリィ。声出さないで、目を開けて。」

 そーっと目を開けると、そこには、でかいおっさんになった自分がいた。

 ひぇ~。今度はなんで自分のところに来てるんだよ。

 二人で、というのも変だがこそこそと忍び足でクローゼットの先の隠し倉庫へ入る。

「ちょっと、どうしてまたこんなんなっちゃってるの?どっからきた?いや、いつからきた?」

「あと五時間くらい先からきた。」

「僕にどうしろっていうの?」

「怒らないでよ~、目が怖いよ…。夢の操作をしようと思ってきたんだよ。」

「どうして?」

「わかってるだろ!また変なというか、あの夢見るからこうなっちゃうんだ。最初からそういう夢を見ないように操作しておけば、大丈夫だと思うんだよね。」

「まぁ、そっか。楽しい旅行の夢とか?」

「そうそう。」

「それよりさっきの出かた良くないよ。襲われたかと思った。」

「ごめん。自分も寝てて慌ててそのまま寝たばかりの時間に行こうと思ったら同じ場所にいたみたいで幽体離脱の逆バージョンみたいな感じになっちゃってさ。」

 興味本位ででかいおっさんリリィのパジャマのズボンをちょっと引っ張って中を見る。

「ちょ、ちょっとやめてよ、変態!」

「う、うげ~。これはアンジェラには見せられない。アウト。」

「わかってるって。だからここに来たのに。」

 そんなやり取りをしながらも、顔はものすごくきれいで、目がキラキラしている自分を見て、少しホッとしたのだ。


 さて、ベッドに運んでから眠らせることに…。あれ?なんだ?歩いていくだろ普通。なんでお姫様抱っこで運ばないといけないの?まぁ、いい。自分に腹立ててもしかたない。

「じゃあ、やるよ。」

 小声で言ってから首筋に手を当てる。

「ヨーロッパのクルーズ船にでもアンジェラ達と乗って楽しんで。」

 手を離して帰ろうとしたときだ。その腕を強く掴まれた。

「あっ。」

 アンジェラが僕の腕を掴んでいた。

「ご、ごめん。起こしちゃったね。もう帰るところだから…。」

「待て。」

「え?」

 アンジェラがベッドから降りて僕がいる方へ回り込む。

「リリィ、いやライルか?」

「ま、どっちでもいいけど。起こしてごめん。」

「会いたかったんだ。」

「言ってる意味がわかりませんけど。」

「大きくなったリリィを見たのが六十年くらい前だった…。」

「やめてよ。それ、僕の黒歴史じゃん。覚えてるんだ…。」

 すごい恥ずかしい。顔が真っ赤になる。

「逃げないでって言っただろ。」

 そう言ってアンジェラは、でかいおっさんの僕の頬にを手を軽く当てて口づけをした。

「あ。やだ~。」

 二秒で元に戻った。そして、更に恥ずかしくなった。

 自分が寝てるすぐ横で夫とチューしてるとか…。なんだか変に後ろめたい。

 僕は転移して元の時間に戻った。

 そこでは、アンジェラが起きて待っていた。

「え、起きてるし…。」

「続きがしたくて、待ってた。」

「ひえ~。」


 後から聞くと、横で寝ていた僕に散々ちょっかいを出したけど、起きてもらえず。

 急にでかいおっさんになって目が覚めたかと思うと、あわてて消えて行った。らしい。夢の操作が効かなかったようだ。


 結局、アンジェラは殆ど寝ていないので、朝からもや~としたままで、出発は午後に延期となった。出発前、アンドレがアンジェラに気遣って聞いた。

「アンジェラ、体調が悪いようなら私とリリィで行って来ましょうか。」

 アンジェラは慌てて姿勢を正すと元気なふりをした。

「どこも体調なんて悪くないし、今すぐ行けるに決まってるでしょ。」

 アンジェラ、かわいい。さすがにアンドレには遠慮してるのもあるのかな。


 さて、身支度を整えてフィリップ回収に向かう。

 まずはあの、ユートレア城の客室だ。

 しかし、あそこに魔法陣はもうない…。


 フィリップがそこに出てくるか、否か正直わからない。

 そこへ、床の何もないところに魔法陣の色が光り浮かび上がる。

 良かった。場所が重要なのか…送った時の場所に戻ってくるようだ。

 光の粒子がまとまり、実体化する。

 僕たちはすぐに近づきフィリップを回収…あ、またやってしまった。シーツを忘れた。

 仕方がないので、城の客室のシーツを拝借する。

 シーツで体を巻いたフィリップをアンジェラとアンドレが抱きかかえ、二人の手を向かい合わせになった僕が繋ぐ。

 日本の朝霧邸に転移し、アズラィールとマルクスに保護とケアを頼む。

 未徠にも診察を頼み、僕たちは続いてフィリップを回収した時のユートレア王であるフェルナンドのところへ急いだ。




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