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85. 手がかり

 同じ日の午後、アトリエのテラスで軽い食事の後、アトリエにテーブルを並べ、先に解読した本の内容と、今回僕が撮って来た写真の方の本の内容を確認する。

 朝撮ってきた写真を印刷したをレターサイズの紙に、アンジェラが意味を書き加えていく。

「この部分はドイツ語っぽいけど少し違うし、ここから全く読めないな。」

「あ、これ画像で検索するとルーン文字とかいうのに似てる。これって角度は違うけど、魔法陣じゃない?」

「リリィ、うちの書斎にある本にも同じのが書いてあったって言ってなかったか?」

「あ、そうだ。そうでした。」

 アンジェラが書斎から例の悪魔信仰について書かれた本を持ってくる。

「あった。同じだ。これって外部に同じ魔法陣を書いてこの本に書かれている呪文を唱えると、封印の間の魔法陣の中に入るってことか?」

「そうかも。あ、でもちょっと違うところがある。」

「送る方と受ける方の違いとかでは?」

 アンドレの発言に僕とアンジェラも首肯する。

 とすると、このアンジェラの家にあった本はこの意味を訳して理解した上で書かれてるんだよね?

「あ、ニコラスって呪文を使ってた張本人じゃん。聞いたらわかるんじゃない?」

「そうだな。」

 僕はニコラスに電話をして聞いた。

「朝早くごめんね。あの教会に書かれてた魔法陣とか唱えてた呪文ってどこから入手したの?」

「あ、あれはですね。教会が私の代になった時に先代の司教から預かった資料にあったんですが、先王殿下がお若いころに、当時のいわゆる国営の大学院で古代語を研究していた博士に依頼して解読したものです。魔法陣のデザインは何種類かあるようでした。」

「あと、悪魔信仰って言う名前になったのはいつか知ってる?」

「さあ、私たちの時代に信仰していたのは神でしたので、もっと後ではないかと…。」

「あの呪文ってなんなの?」

「その魔法陣に書いてあることをただ言っているだけです。」

「どんな内容?」

「えーと、訳すと十二に分かれし天使の御子の魂を引き継ぐ者の身を捧げます。受け取り、大天使ルシフェルを復活させたまえ。って感じですかね。それを古代の言葉で言うんだと教わりました。」

「その教授の名前って覚えてる?」

「確か、もらった資料にはユーリ教授って書いてあったような気がします。」

「わかった、ありがと。」

 電話を切って、父様とうさまに電話をかける。

「父様、元気?」

「どうした、ライル…あ、いやリリィ。」

「あのさ、前に消えちゃった大学の教授いたじゃない?あの人ってなんていう名前だった「あぁ、あの人は由里拓斗ゆうりたくとと名乗っていたよ。」

「その後消息は分からないんですよね?」

「あぁ、警察からも大学からも連絡はないよ。」

「そうですか、わかりました。ありがとうございます。」

 僕は電話を切り、アンジェラとアンドレの方を見て言った。

「偶然にしては変だよね。ユーリとゆうりなんて。」

「でも、リリィ五百年も経っているんだぞ、同じ人物のはずはないだろう?」

「まぁ、普通ならね。」

 一応、覚えておこうということで、名前をメモする。


 ニコラスに教えてもらったことからすると、あの魔法陣は転送の送る側と、受ける側の紋様みたいだ。多分あちこちの教会にあったものは送る側。

 それぞれの場所で書かれている違いを確認した方が、何かわかるかもしれない。

 今まで気づかなかった事が少し見えてきた様な気がする。

「あ、そうだ。今朝、五百年前の封印の間でルシフェルの涙が出て白い石になったんだ。」

 僕はアンジェラとアンドレにそう言って、ポケットからその石を二粒取り出した。

 真珠よりは少し黄色い、半透明なその石はほのかに光を纏ってしている様だ。


 アンジェラは動揺した。そのような石を持ち帰ってきて変な影響がないか…。

「リリィ、なんでそんなものを持ち帰ってくるんだ…。」

「だってぇ、下に落ちてたら踏んで滑っちゃうかもしれないし。あのルシフェルが僕たちに何か変なことするとは思えないもん。」

「そうだけど、触ったらどうにかなっちゃうとか、怖いだろ?もう少し考えてから行動しろ。」

「そうだけど…。」

 いつになくアンジェラの怒る口調がきつい気がして僕は少し涙目になった。

「うっ。うぇーん。」

 僕は自分でも信じられないくらい泣いた。涙が止まらなくて、ひっくひっくなって、もうすべてがどうでもよくなるくらい。

 ポタポタ涙が流れ出る。デスクの上に置いてあったその二つの白い石の上にも涙がかかってしまった。

 涙がかかった時と同じタイミングで、白い石は光をまとって、柔らかく明滅した。

 石も悲しいみたいだ。まるで、僕の泣き声に合わせているかのように見える。

 アンジェラが慌てて僕を抱き寄せなだめる。

「怒ってないよ。心配しただけだ。だから泣くのをやめて。」

「うぇーん。」

 言い訳がましい事言われて、余計に泣く。

 その時、アンドレが急に大きい声を出した。

「リリィ、これはマズイぞ。石が、浮かび上がって来た。」

 さっきまで明滅してただけの石が、急に浮き上がり回転を始めた。

 ゆっくりと回転し、ゆらゆらと揺れ始めた。少しサイズが大きくなっているように見える

 アンジェラは僕をそこから寝室へ連れて行こうと一生懸命だったが、僕は言うことを聞かなかった。僕は衝動的に二つの石を掴んだ。そうしなければいけないと思った。

 僕はその場から消えた。いつもの転移とは違い、消滅したように消えた。

「「リリィ!」」

 アンジェラとアンドレの声は僕には届かなかった。







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