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77. Case7 最初の予言者ニコラス

 七月十八日日本時間での午前三時。

 イタリアに戻ってきているアンジェラとアンドレ、そして僕の三人は、ひと眠りした後にシャワーを浴びて、ニコラス・フリック司教を回収することにした。

「なんなら僕一人でも大丈夫なんだけど…。」

 アンドレが、首を横に振りながら言う。

「女の子が成人男性を一人でなんて無理でしょう。」

「え?意外とこの体は力があるんだよ。ほら。」

 そういうと私は横で着替えの最中だったアンジェラの足首を持って。逆さにして持ち上げた。

 ガツっ、という威勢の良い音と共にアンジェラのか細い声が…。

「リリィさん、下に頭がこすってるんですけど…。」

「あ、ごめんごめん。」

 アンジェラがでかいのを忘れておりました。ははは。頭のこぶを治してあげて、着替えが終わったら目的地に転移する。


 転移先は、この前のユートレア小国の教会。他の場所でもそうだったように現地での深夜零時ころ、出現する予定だ。

 僕は唇に人差し指を当てて、話をしないようにジェスチャーで合図をする。

 二人は嬉しそうに頬を赤らめ、うんうんと頷く。バラバラでもシンクロしてる。かわいい。

 一分も経たないうちに、魔法陣の青い紋様が浮き出てきた…。

 金色の粒子が集まって実体化していく。

 僕はすぐに近づいて、出てきた男を回収する。

 またシーツを忘れてしまって、全裸の状態で連れ帰ったのはご愛敬だ。

 日本の朝霧邸の空いてる部屋に転移した。

 アンジェラが父様を呼びに行った。

 アンドレが用意してあったタオルでニコラスの表面のベタベタを拭いた。

 父様とアンジェラとアズラィールが部屋に来た。

 父様がニコラスにパジャマを着せて、ベッドに寝かせてくれた。

 あの変な教会の司教の服着ていないせいか、若く見えるな…。

「父様、僕たちイタリアの家に行ってるから、この人起きたら電話してくれる?

 僕ちょっと疲れちゃったのと、こっちで休みたくないからさ。」

「もちろん、大丈夫だよ。後で電話する。」

 僕たちは一旦イタリアに戻った。

 体に着いたベタベタを洗い流すためにシャワーを浴びようかな…と思ったところで。

「はーい。」

 僕が挙手をして質問をする。

「はい、どうぞ。リリィさん。」

「あの、二人が一人になっている時に、シャワーを浴びると両方きれいになるのかな?」

 二人が顔を赤らめて、それは試さないとわからない…という。

「そうだよね…。ね、合体するところ、見せて。」

 二人は、もじもじしながらキスをした。え?まじで…。やだ、衝撃…。

 そして、青い光の粒子に包まれ、一人の男として目の前に現れる。

「はぁ…。」

 だめだ、我慢できない…なぜかキスしたくなっちゃう。ため息が出る。かわいい。そして、かっこいい。

 シャワーで濡れた後、いつの間にか疲れて寝てしまって、目が覚めたら、また二人はバラバラになってた。

 両方とも髪の毛は濡れてたから洗えてるのかな?


 父様から電話が来た。すぐに服を着て駆けつける。

 アンドレがいないと、話しにくいからね…。三人で転移した。


 ニコラスは自分の置かれている状況がよくわからない様だ。

 アズラィールと父様が力づくで押さえているが、暴れている様だ…。

 僕たちが部屋の中に入る。僕はニコラスの背中に手を当て言語などの情報を与える。アンドレが威厳のある声で一言発した。

「落ち着け、ニコラス。」

「へ、…陛下…。」

 ニコラスは、八ッとして、大人しくなった。と同時にアンドレの後ろにいたアンジェラを見て目が泳ぐ…。

「陛下…と陛下…?」

「あ、こちらはアンジェラ・アサギリさんだ。私と双子のようなものだ、そう思って構わない。」

「…。」

「ニコラス、お前はなぜここにいるかわかるか?」

「いえ、わかりません。」

「では、お前が予言をしたことは覚えているか?」

「は、はい。悪魔を復活させて望みを叶えさせる方法を神から授かったと…言いました。」

「具体的に悪魔とはなんだ?」

「大天使ルシフェルが悪魔に変化したものです。」

「では、こちらのアンジェラさんの姿を見てどう思うかな?」

「は、はい…。陛下にそっくりの色男かと…。」

 こほん。アンドレは咳ばらいをして、アンジェラに目くばせをした。この二人、もう話しなくても考えてることがわかるようになっているんだ…。

 アンジェラがチョーカーを外して、僕にキスした。ん?それは必要なのかな?

 アンドレがこっちを見て赤くなっている。

 アンジェラが大天使ルシフェルになった。

「…。か、神よ。許したまえ。私は誤った予言をしてしまいました…。ルシフェル様は悪魔などにはなっておられませんでした…。」

 ははーっ、とひれ伏すニコラス…。なんだかなぁ…。

「わかったようだな、大天使ルシフェルはどうやらアンジェラ様と私に魂を分け与えて下さったようだ。」

「え?」

 キョトンとしているニコラスを置き去りにして、アンジェラがチョーカーを着けて元に戻る。そこへアンドレが近づき、キスをする。

「え?」

 さらにキョトンとしているニコラス…。

 毎回ドキドキしちゃうよ…これ。きゃあ。

 二人が青い粒子につつまれ一人の男として現れる…。父様もアズラィールも目が点…。

「うわっ。」

 超美しい男を見て、みんな絶句。

「「ニコラスよ、お前は誤った予言を行い、儀式を行ってしまった。そのために、このアサギリ家の方々に災いが降りかかっているのだ。」」

「???」

「「見てみるがよい、そちらのアズラィール殿の顔を。お前と同じではないか?」」

「あ、え?」

「「そして、こちらの徠夢殿の顔もよくみるのだ…。」」

「えええええーーー???」

「「お前は、この天使の御子たちを危険な目に遭わせた張本人であるぞ。」」

 そこで、アンドレとアンジェラは元の二人に戻る。アンドレが続ける。

「こちらはリリィ殿だ。私とアンジェラ殿が探していたお方だ。」

 僕は翼を出して、その後天使に変身する。

「ルシフェルの復活など必要なかったのだ。黙っていても生まれ変わり、出会う運命だった。」

「わ、私はどうしたら…?」

「お前のせいで私は命を落としかけ、リリィ殿に何度も助けて頂いたのだ。お前も封印の間とやらに五百年も入っていて、先日リリィ殿に助けて頂いたばかりだ。」

「…あ、天使様?」

 とそこでアンジェラがニコラスに問う。

「お前には二つの選択肢がある。元の時代に戻って、馬鹿げた儀式をやめさせるよう尽力するか、この時代に残り、血族と苦楽を共にするか。」

 そこへ、アンドレが一言追加する。

「私は、ここでアンジェラ殿とリリィ殿と一緒に暮らすことにしたゆえ、もう帰らないと決めた。一週間の猶予をやろう。自ら選ぶのだ。」

 今まで無口な王様だったのに、急に饒舌になったアンドレ…。

 とりあえず、一週間のお試しの後、帰るかどうか決めさせるらしい。


 しばしの沈黙の後、アンドレとアンジェラはまた合体し、一人になって、僕の手を引っ張ってイタリアに帰ろう。とささやくのであった。

 ニコラスはぴんぴんしてて元気そうだったので、父様に丸投げしてイタリアに帰った。

 今日、三回目の仲良しタイム…?の前に僕は挙手をして質問をした。

「はい、はーい。」

「「はい、リリィさん、何でしょうか。」」

「あの、その能力は、アンジェラとアンドレ以外でも使えると思いますか?」

「「うむ。試したことがないので、わかりませんが…。試して可能ならすごい発見です。しかし、今はとりあえず、キスしましょう。」」

「あ、あんっ、うん…。」

 はい、拒否できませんでした。


 アンジェラとアンドレがシンクロし始めて、一週間が過ぎた頃、本当に彼らは言動が似てきた。

 いや、多分元々似ていたんだと思う。

 アンドレまですぐめそめそ泣くし、かと思ったらベタベタくっつくし。

 独占欲が異常だし、でも二人の間に嫉妬はないみたい。

 そんなある日、思い出した。その能力、他の人にも使えるのか?っていう疑問。


 七月二十四日日曜日。

 アンジェラは仕事の拠点を東京に移しているので、仕事のある時は日本の朝霧邸に行くことになる。そんな時、僕の側にいつもアンドレがいてくれる。

 今日は、その後のニコラスを確認する。

 アンドレがニコラスに今後どうするか確認した。

「ニコラスよ。帰るか残るか決心は着いたのか?」

「陛下、私はまだ決めかねております。正直なところ、ここは平和で愛に満ちております。私には妻も子も親もおりませんでしたので、元居た世界のどこにも未練はありません。ただ、ここでお世話になることが、徠夢殿たちの負担になるのではと心配しております。」

「帰りたくない。ということだな。」

「そうです。」

「ここで、自分の出来ることをやって皆に貢献したらよいではないか。」

「陛下…。ありがとうございます。」

「その、陛下はやめてくれ。ここではただのアンドレだ。」

 僕は、父様にそのことを伝えに行った。父様は一人や二人増えてもうちは構わないという感じで、承諾してくれた。ニコラスにそれを伝える。

「ねぇねぇ、ニコラス。父様に聞いたけど、うちにいていいって言ってたよ。お金のこととか、気にしない方がいいよ。そういえば、ニコラスって何歳?」

「私は十八歳でございます。」

「ふぅん。アンドレと同じだね…。五月十一日生まれだったりして?」

「どうして知っているのですか?」

「え?」

 アンドレが目をうるうるさせてる。どうした?

「もしかして、君たちも双子の可能性ある?」

 アンドレが口を開いた。

「二人いた王子のうち一人は死産だったと、その時の王族が抱えている医者に言われ、私だけが王子として育てられた。と乳母に聞いた。」

 ニコラスの話では、隣国の農家の納屋に捨てられていたニコラスを、通りかかった商人がユートレア小国の教会に身寄りがない子供として預けたらしい。ニコラスの所持品は生まれた日の日付を書いた紙と、白い大きな羽だったんだって。

「なるほどね…。ちなみにアンジェラと徠神も双子で生まれてるからね。双子じゃないのはマルクスとアズラィールだけなのかな…。」

 ここだとあんまり関係ないからね。近い年の子たちで仲良くやってるし。

 とにかく、再会できたことこれからは協力し合って生きていってほしい。


 マルクスとの話が終わり、自室に戻った。アンドレがついてきたので、暇だったのもあるけど、いつか話した実験をしてみたくなった。

「ねぇ、アンドレのあの二人で一人になる能力、試してみていい?」

「あ、どうでしょう…。結果は気になりますけどね。」

「え、じゃあどうやるか教えて…。」

「恥ずかしいですよ。あの、アンジェラにリリィが入っちゃったときの記憶が強烈で、あぁ、この人の内側から外の世界を見てみたいって思いながらキスしたんです。口から入るつもりで。」

「恥ずかしいとか言いながら、よく言うね。へへ。」

 聞いてるだけで、いやらしい感じがする。

「じゃ、私の方からリリィの中に入れるか試してみますね。」

 返事をする前に、いやらしいくらいのキスをされた。あぁ…。

「んっん。…あっ。」

 二人の体が青い光の粒子で包まれた。粒子が実体化し、一人の人間になり出現する。

「あ、行けた気がする。」

「しますね。」

 鏡を見ると、青みがかった黒髪が腰ほどの長さの超絶美女が立っていた。

「美しいですね。」

「これって、私がベースだよね?」

「そうだと思います。」、「このまま、アンジェラを待っててもいい?」

「それって、そのままイタリアに帰るパターンですか?」

「そう。」

「でもお迎えに行かないとまずいですよ。別人だと思われてスキャンダルにでもなったら、大変です。」

「それもそうか…。」

「じゃ、一回解除して、反対にアンドレに僕が入るのも試したい。」

「抜けますよ。」

 あっさりと、二人は元の状態になる。

「じゃあ、アンドレ、次はただチューされてて、僕が試すから。」

「なんか恥ずかしいんですけど。どうぞ。」

「ん、んっ、うん。」

 キスをしながら、アンドレの中に入って外の世界を見てみたい…と思ってみる。

 おや、キラキラの色がちょっと違う…。金色の光の粒子に包まれて、僕とアンドレは一人の人間になった。鏡を見る…。

 あれ?あれれれ?

「アンドレベースだと男になるんじゃないの?」

「そう思っていたんですけどね、これはどう見ても女性ですね。」

 髪がプラチナの様な銀髪で目がすっきりとした背の高いスレンダーな美女が立っていた。

「どっちにしても人目につくところには迎えにいけませんね。」

「仕方ない、一回戻るか…。で、どうやって解除するの?」

「アンジェラと普通にするキスしているところか、アダムが道でうんちしているところでも思い浮かべて下さい。」

「まじ?」

 あ、戻った。理屈はわかんないらしいけど、現実に戻るってことなのかな?

 そんなことをやってるうちに二時間が過ぎ、アンジェラから電話が来て、お迎えに行った。

 うっかり、アンドレを連れて行ったら、スタッフ騒然でした。


 イタリアの家に帰ってから、アンジェラがシャワーを浴びているうちに、さっきの僕がベースの黒髪女子になってみました。

「「ジャジャーン、サプライズ。」」

 最初はアンジェラも恥ずかしがっていたけど、それは、結局いつもの三人でやっていることと変わらないので、次第に盛り上がり、激しくキスをしてしまいました。


 アンドレが、その実験のあと、ふと「三人で一人になったら、どうなるんでしょうか?」と言い出した。それはさすがに…実験しないとわかんないね。

 どういう時に必要になるかはわからない能力だが、組み合わせは無限大だ。


 最近の僕たちは悲しい事や、辛い事、寂しいことなど微塵もないという生活だ。

 そして、三人になってから、アンジェラはあんまり泣かなくなったし、楽しいことが倍増している気がする。


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