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73. 襲撃

 その日の深夜、予期せぬことが起きた。

 深い眠りの中、急に下着に手をかけられ、アンジェラかと思ったのだが、急に反対側の手で髪を掴まれ後ろに引っ張られた。

「…っ。」

 見たことのない目つきの悪い男がベッドの上で僕を犯そうとしていた…。僕の手は紐で拘束されていた。アンジェラはベッドの脇で拘束されていて、しかも意識がない様だ。

「これが噂の天使か、まぁ、殺す前に楽しませてもらおう…。」

 その時だ、僕の体は白金色に輝く天使となり、翼を広げ、目が紫に光った。同時に両手を拘束していた紐は風化し溶け落ち外れた。

 僕はそいつの腕を掴んだ。その男の記憶が流れ込む…。

 こいつは、何?アントニオさんの孫だと…。僕はそいつの腕を掴んだまま排除することを心に思い描いた。

 僕はその男を伴い瞬時に家の外へと転移し、数秒も待たずその男の体に雷が落ちる。

 雷は、男の体を突き抜け地面へと突き刺さる。その瞬間雷は光の集合体となり、十字架の形を成し、男の体を茨のつるでその十字架に巻き付けた。

「がーっ。」

 うめきともなんとも言えない声で男が叫ぶ。

 僕はとっくに自分の手から離れたその男をそのまま庭で十字架にはりつけたまま、アンジェラの元へ戻った。

「アンジェラ、アンジェラ、大丈夫?」

「ん…頭が痛い。」

 どうやら睡眠薬を盛られた様だ。体全体を調べ、睡眠薬が抜けるように代謝を早める。

「アンジェラ、家に入って来た泥棒かなんかを捕まえてあるんだけど、知ってるやつか見てくれる?」

 アントニオさんの孫だとは言わずにアンジェラに確認してもらう。

「ええっ?ごめん、気づかなくて…。」

「多分、ワインに睡眠薬盛られてたんだよ。僕は大丈夫だったから。」

 アンジェラを支えて、庭が見えるアトリエの窓辺に転移する。

「ず、ずいぶんシュールな捕縛方法だね。」

「これ、アンジェラの天使から出てきた能力の一つだよ。あったまきた~!って思ったら出てきたやつ。だって、あいつ僕のパンツ脱がせようとしてたんだもん。」

「な、なんだって!」

「今度試してみたらいいと思う。」

 アンジェラはその場でアントニオさんを電話で呼び出した。

 アンジェラには犯人がアントニオさんの孫だってすぐにわかった様だった。


 アントニオさんはすぐに駆け付け、アンジェラに次の様に話してくれた。

 彼は十代前半で家出してアンジェラの所に押しかけてきたファンだった。アンジェラの描く絵に魅了され、家の場所を突き止めて家の周りをウロウロしていたらしい。

 そんな時、過去に行った僕とアンジェラがキスしているのを見て、本物の天使を恋人に持つアンジェラにますます憧れ、また天使を見たいと願うようになった。

 彼は本気でアンジェラに忠誠を誓い、アンジェラもそんな彼に高い教育を受けさせ、大人になってからはかなりの金額の投資もし、現在は表向きは老舗銀行の会長や、デパートを経営しているグループの会長もしている。そんな彼も二十代半ばで結婚し、子を二人もうけ、孫も四人いる。しかしだ、全てがアンジェラの資産で作り上げた会社、資産をアントニオさんは自分のものにする気は全くなかった。あくまでもアントニオさんはアンジェラの側に仕えていたいのだ。

 七十歳に近づくにつれ、彼の資産を狙う者が出てきた。

 しかし、資産の内訳を調べると、半分ほどの資産がすでにアンジェラに移っていた。これは彼の忠誠心が故の選択だったが、金に目がくらんだ孫とその仲間が、不正に権利を自分の名義へと変更し、アンジェラを殺してこれ以上の資産が移らないようにしようとしたのだ。

 あの、ライブ中継での刃物騒ぎ、東京のライブでの発砲騒ぎ、そして婚約発表の時の僕への拉致未遂。アンジェラの事務所のスタッフの中にアントニオさんの孫の恋人がいた。


 アンジェラはとても悲しい顔をした。

「アントニオ、私はね、お金なんて必要ないんだよ。りりィだけが必要なんだ。そのりりィを辱めようとした行為には、さすがに黙っていられない。あの男は、警察に突き出させてもらうよ。」

「はい、もちろんでございます。」

「事務所のスタッフの方も同様に処分する。いいね。」

「はい。私が処分いたします。」

「任せるよ。」

 アンジェラは実は把握していた以前の何点かの窃盗も一緒に警察に通報し、その男は警察に連行された。

 セキュリティカメラの映像で窃盗の証拠を提出したのだが、倉庫に保管されていたアンジェラの絵画十点、推定総額六十四億円。まだ売られていなかったので、手元に戻ってきたのが幸いだった。その他にも宝石類が盗まれていたようだ。

 アンジェラは絵の盗難だけならば黙っているつもりだったらしい。

 家に到着した警察が捕縛されている犯人の状態を見て皆固まっていた。

 僕が天使から人間に戻ると、十字架は消え、捕縛は解除された。

 この能力、普通の状態でも使えたらもっといいのにな。


 あんまり休む時間もなく、日本へ転移する。約束の時間になってしまったからだ。

 でも父様も睡眠薬を盛られてしまったので、まだ寝ていた。

 今回は、徠神に父様の様子を見ていてもらい、アズラィールとアンジェラを伴い帰還者奪還を行う事になる。

 日本時間は七月十日日曜日正午。

 目指す先は五百年ほど前のドイツ近辺だ。


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