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676. マリアンジェラの秘密の彼氏(3)

 ライルがもう一つの世界のブラザーアンジェラを訪ねていた頃、私リリィは夕食の支度に追われていた。そこへリリアナ達が日本での幼稚園の運動会を終えて戻ってきた。

「ただいま~」

 肩より長いピンクがかった金髪を後ろに結わえたジュリアーノが首から『優勝』と書かれたプラスティックのメダルを下げて元気いっぱいでダイニングの中に入って来た。

「あら、ジュリアーノすごいわね、優勝したの?」

「えへへ…」

「ライアンは?」

「…」

 ジュリアーノの後ろから静かに入って来たライアンの首にも『優勝』と書かれたメダルがかかっている。

「あら、ライアンも優勝ね、すごいわ。」

「…」

 ライアンが恥ずかしそうにモジモジしているところにリリアナとアンドレとニコラスも入って来た。

「あ、おかえり。どうだった日本の運動会は…」

「そうねぇ…結構疲れたわ」

「ははは…確かにアンドレとニコラスはすでに営業終了って顔ね。」

「リリィ…本当にすごかったんですから、あれはなめちゃいけないレベルの戦いです」

 ニコラスが何かの競技に出たのか興奮気味に話している。

「兄上、本気になりすぎですよ。」

「しかし、アンドレ、悔しいだろう?」

 リリアナが言うには、ニコラスが保護者のリレーと綱引きで負けるのが嫌で大奮闘したらしい。

「お腹すいた~」

「ぼくも~」

「アディも~」

「も~」

 ジュリアーノ、ライアン、アディ、ルーが食事の催促を始めた。

「あ、もうちょっとで出来るから、手を洗ってお皿を並べてね。」

「はーい」

 返事をしたのはミケーレだ。

 ミケーレはアディとルーを洗面所まで連れて行き手を洗わせ、赤ちゃん用のエプロンを着けて戻ってきた。


 時間は午後5時過ぎ。

 お皿を並べ終るかというとき、バタバタと走る音が聞こえたかと思うとマリアンジェラがダイニングに入って来た。

「ただいまー、ライルは?」

「あ~、それが…、ライルは用事があって今日、明日は戻れないかもしれないんだ」

 ニコラスがそう言うと、マリアンジェラはがっかりした様子で口を尖らせた。

「むぅ。ターキー一緒に食べたかったのに」

「仕方ないんだよ、あっちの世界のブラザーアンジェラから手紙がきたんだよ。状況把握と何か出来ることがないか確認しに行ったんだ。」

「え?あっちに行っちゃったの?」

 マリアンジェラの表情は更に曇る。その存在が同じ世界の同じ時間軸にいなければ駆けつけることもできないからだ。


 アンジェラも書斎からダイニングに移動し、さあこれから夕食をというときにマリアンジェラがアンジェラに耳打ちし、何かの許可を得ている。

「ねぇ、パパぁ、いいでしょ?今日は誰も家にいないって言ってたし」

「しかしな、マリー」

「それに、でっかいターキー食べたことないって言ってたよ」

「そ、そうか?それは…」

「いい?」

「あ、あぁ、ちゃんと置手紙とかでこっちに来ることを家族に知らせるんだぞ」

「はーい」

 満面の笑みで廊下を走るマリアンジェラだった。

 そして3分ほど経っただろうか、また廊下を走る音×2人。

「ただいまー、連れてきた~」

「こ、こんばんは。」

「あ…ちびっこライル?」

「ちびっこじゃない、ライルはライルなの。ね。」

 そう言って繋いでいる手をぎゅと握るマリアンジェラだった。


 マリアンジェラは最近、9年前の朝霧家に入り浸り、過去のライルのところに行っているのだ。今日も空いた時間に行ってきたところだった。

「ほら、ライル見て、このおっきいのがターキーだよ。」

「うわぁ、本当に大きいね。」

 宝石のような青い瞳をキラキラさせながら、二人はターキーに心を奪われている様子だ。

「あ、ほら、ライル、あれやって」

「あ、うん」

 ライルが目を瞑って開くと目が緑色に、髪が濃いめの金髪になった。

「あ、ノアってライルだったのか?」

 ニコラスが目をぱちくりして驚くとマリアンジェラがニヤッと笑った。

「マリー、ばらしちゃっていいのか。ライルにも知られるぞ」

 アンジェラがマリアンジェラにそう言うと、マリアンジェラはしれっと返事をした。

「大丈夫、知ってても言えないってことになってるの」

「…?」

「さぁ、マリーも自分の席について、ライルはこっちね」

 リリィに促され全員が自分の席について、サンクスギビングの夕食が始った。


 ターキーのモモ肉をアディとマリアンジェラがじゃんけんで勝って手に入れたのだが、マリアンジェラは意外な行動に出た。

「はい、ライル。食べていいよ。」

 巨大なターキーレッグを自分の皿に載せられて目をぱちくりする小さいライルを周りの大人は温かい目で見守っていた。

「マリー、これ僕にはちょっと大きすぎるから、半分こしようよ」

「半分こ?」

「うん」

「はんぶんこってなに?」

 皆ドッと一斉に笑った。

 マリアンジェラの日本語に『半分こ』という文字がなかったのだ。

「マリー、シェアするって言う意味よ、半分づつに分けて…」

 リリィがそう言うとマリアンジェラの顔がパァッと喜びにあふれた。

「うん、はんぶんこ、しゅる」

 アンジェラにターキーレッグを切ってっもらい、二人の皿にカットされたターキーレッグが載った。

 マリアンジェラは、終始笑顔で食事を楽しむ小さいライルを見て、自分も幸せだと感じていた。

 二時間ほどで夕食を終え、マリアンジェラは小さいライルを9年前の日本の朝霧邸へ送って行った。

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