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656. シークレット・ミッション

 時は、少し前にさかのぼり…。

 9月29日、この日は私、マリアンジェラ・アサギリ・ライエンにとって今までの人生で一番長い一日だったの。

 隠してあったクローン核をアディが持ち出したせいで、朝っぱらからその核を踏んでしまって、マリベルが出てきちゃうし。どういうわけか、マリベルが全然消えてくれないし。

 バタバタしてるうちにキンダーに行く時間になって、しかも参観日で、劇の発表しなくちゃいけなかったし、マジで朝から大変だったのよ。

 でも、あれね。キンダーの発表にはライルが見に来たんじゃなくて良かった~。だって…全然可愛くない白い鳥の役なんだもん。途中、ちょっとお姫様にもなったけど、結局、でかい鳥になるだけで、あれ絶対先生たちのおふざけよ。ひどいったらないわ。

 新しい方のお家に帰ってきたら、今度はパーティーで、親戚のおっちゃん達にはいじられまくるし、ママのローストビーフは相変わらず激ウマだったけど、食べ足りなかったもん。


 そして、どうにか1日を終えたーと思って、ちょっぴりわがまま言って、ライルで充電しなくっちゃと思って、一緒に寝られるとこまでいったのに…。夜中にライルが息してなくて、冷たくなってるのに気づいて、ほんとにほんとにほんとーに、私の心臓も止まっちゃうんじゃないかと思ったもん。

 今までで一番泣いちゃった日だった。

 泣いて泣いて、いーっぱい泣いて、そしたら、ちびっこライルが現れて、ライルの体を奪って行って、またまた涙がいーっぱい出てきたあたりで、ママが困った顔で周りにいたじいちゃんたちをどんどん眠らせてるのを見た時、ちょっとどころじゃなく怖かったよ。

 お仕事中のパパも怖いけど、ママのあのちょっとニコニコしながら、本当はニコニコしてない感じが背筋を凍らせるっていうか…。私もここで寝ちゃったら、一生ライルに会えなくなるんじゃないかって…そう思ったらまた涙がいっぱい出てきて…。

 思い出しても悲しくなっちゃう。


 でも、ママが言った通り、何もなかったみたいにライルが戻ってきて本当によかった。

 鼻水と涙を出しすぎて、ちょっと痩せちゃったかも。

 私は元気で楽しそうなのがいいところだって、ライルが誉めてくれたことあるから、早く元通りにならなきゃ。

 そんなこと考えてたら、じいちゃん(ライム)とおじいちゃま(ミライ)がママとライルに話してるの聞いちゃったのよ。

 二人が誘拐されて、お腹の中のもの、盗られちゃった事件があったって。

 それで、ちびっこライルが新しい能力でこっちのライルを呼び出したんじゃないかって。

 その事件の時には、ちびっこライルがショックで落ち込んでて大変だったとも言ってた。

 あ、そうだ…!マリーがちびっこライルをお助けして、元気にしてあげたら…きっとすごく幸せになれるはず…。

 でも、一体いつ起きた事件なのか…あ、そだ、おばあちゃまに聞いてこよ。


 そうして、私はおばあちゃまから聞き出した日付の1日後の朝霧のおうちに転移したの。

 ライルのお部屋に行ったけど、誰もいなかった。

 勉強机の上にうちの家族の羽がいっぱいテープでくっついているノートを発見したのよ。

 これを触ってライルを呼び出したって、すぐにわかったわ。

 マリーの羽もあったけど、小さい抜け毛みたいなやつだったから、翼を出して、いいとこの羽を一本ぶっちして、取り替えておいたの。ちょっと痛かったわ。

 そこにメモもつけておいたのよ。『←おすすめ』って。

 ライルの羽のノートを見てるときに、クローゼットの中で『ガタン』って音がしたの。

 ネズミでもいるのかと思って恐る恐る開けたら、すごい大きなネズミ…じゃなくてちびっこライルがいて驚いたわ。

 そして、ライルは私がなってたみたいに、鼻水とか涙で顔が腫れてて、ちょっとブサイクになってたの。ふふふ。

 でも大丈夫、マリーが治してあげたから。

 そして、怖かったこと全部忘れさせてあげたの。

 じいちゃんとおじいちゃまが何かの病気で入院してただけ、もう治ったから大変でもないし…って言う感じに内容も修正したわ。

 最初は私のことも怖がってびくびくしてたけど、そういう怖がることも感じないようにコントロールしたの。おかげで、ちびっこライルは私の事思い出したのよ。

『マリーちゃんでしょ?お城でいっぱい遊んだの覚えてるよ』って、私、それ聞いてかなりうれしかったの。だから、一緒にあそんであげたのよ。

 いっしょに遊んでたら、かえでさんがチキンを買いに行くから、一緒に行こって言ってくれて。

 徠神らいじんおじちゃんのお店のチキンはよく食べてるけど、あれとは違って、また絶妙においしいチキンだったの。

 すごいいっぱい食べたけど、いーっぱい食べれてエライねって褒められたのもうれしかったわ。

 気がついたら結構時間が過ぎてて、慌ててお土産のチキン入りバケツを渡されてこっちに戻って来たんだった。


 実はね…ちびっこライルのところに行って遊んでる時に、二人だけの秘密ができちゃったの。ふふふ。

 あのね…二人であちこち探検したの。と言っても、知ってるところばかりよ。

 ちびっこライルがまだ一人で行けないから、転移で連れて行ってあげたのよ。

 その時にすごく不思議なことが起きたの。

 せっかくだから、ちびっこライルにも転移の練習をさせてあげたんだけど…。

 最初に私がライルを封印の間へ連れて行ったの、そしたらそこには大きいライルがじいちゃんたちを連れてきたから知ってるって言うのね。

 じゃあ、逆にそこから家に戻るのをやってみてって言ったら、おかしなところに行っちゃったの。

 そこはね、封印の間ではあるようなんだけど、いつもの見慣れたパパとママにそっくりな石でできた天使像じゃなくて、目をガッと見開いた、金色の目玉の、怒った鬼みたいな顔になった大きな石像が1つだけあったのよ。ん…でも、パパにはちょっと似てたかな…。

 あれ…もしかしたら天使像じゃないのかしら?魔王の石像?ママが魔王って何か教えてくれたんだけど、もしかしたらあれがそうかもしれないわね。

 とにかく、それにちびっこライルが触っちゃって、そうしたら、石像の目から金色の涙がポタポタ流れ出てそれが真珠みたいに丸い球になったのよ。

 そう、あれよ。涙の石よ。でも金色のは初めて見たの。

 けっこう前に、涙の石を封印の間の真ん中のテーブルみたいなとこの穴に入れたらいいってミケーレに聞いたから、3個くらい入れてみたの。そうしたら、封印の間の真ん中のテーブルの縁に書いてある文字が金色の光の文字になって浮き上がって、ぐるぐる回って驚いちゃった。

 余った1個はライルが持って帰ることになったの。もちろん、直接触ったら大変なことになっちゃうって教えてあげたから、ハンカチでくるんでポケットに入れてあげたの。


 それでね、そこから元の朝霧のお家に戻ることにしたんだけど…、また不思議なことが起きたのよ。

 その時は私が転移したんだけど、朝霧のお家の形が全然違っちゃってて、ちょんまげを頭にくっつけたおじさんがいたのよ。なんだか言葉も微妙に違ってて、ちびっこライルが慌てて転んじゃって、その時に涙の石を落っことしちゃったみたいなの。

 でも、その後で思い出したの…あの時の涙の石をあのちょんまげおじさんが拾って、保管してくれてたんだって、それをじーちゃん(ライム)とおじいちゃま(ミライ)が見つけて、あの首に着けるアクセサリーにしてくれたのだってわかったの。だから、それはそのままにすることにしたのよ。

 元々ちびっこライルの物だから、本人のところに戻ったってことだしね。

 その後は、ちびっこライルが元居た時間に戻ったから大丈夫だったけど、とても不思議な体験だったの。だって、マリーがいくらあの怒った鬼みたいな像のある封印の間に行こうと思っても、全然行けないのよ。今の封印の間で座っている石像は触っても涙は流れないのよ。

 ほわんって暖かい気持ちになるだけで、天使像は泣いたりしないのよね。


 あと…実は…内緒なんだけど、クローゼットの中で泣いてたちびっこライルに愛のチューをしちゃったの、うふふ。ちびっこライルったら、びっくりして、すぐに泣き止んでたのよ。

 やっぱり、私の愛の力ってすごいのよ、えへへっ。

 というわけで、実は、1時間とちょっとのところに戻ってはきたけど、本当は何時間もあっちこっち行ってたってわけなの。

 また今度こっそりちびっこライルに会いに行ってみようかしら…。

 みんなに触られてもバレないように、記憶を他の人から見えないようにロックしておかなきゃね。

 むふふ…だって、二人だけの秘密だもの。

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