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655. 家族じゃないの?

 10月1日、日曜日。

 朝方まで盛り上がっていた大宴会もようやく終わり、朝はゆっくりと過ごした親戚一同のおじちゃん達も、一人、二人と起きてきて、ダイニングで朝食をとり始めた。

 珍しくリリアナも朝食のパンケーキを作るのを手伝っていた。

 と言っても、ほとんどが運ぶお手伝いなのだが…。

 手際よくパンケーキの載ったお皿を配っていく。それを見た父様が妙なツッコミを入れた。

「リリアナ、リリアナは…リリィの分身体だったよな?」

 間髪入れず、リリアナが返答した。

「ちがうわよ。分身体じゃなくて…えっとぉ…なんだったっけ?忘れた。」

「分離ではなかったか?」

 アンドレが響く渋い声で言った。

「あー、それそれ、それよ。だから、リリィと全く同じではないのよ。」

 リリアナはリリィの一部が分離して小さな個体になったのだが、二人の能力、性格、全てにおいて全くの別人と言える。容姿だけは全く同じだが、小さな個体から成長したこともあり、リリアナは見た目がリリィより5歳ほど若い。

 二人は最初から姉妹のような関係だった。お互いを尊重し、家族として大切にしているという感じだ。


 父様がそんな変な質問をしたのには訳があった。

 それはマリアンジェラとマリベルに同じことが起きたと考えたからだ。

 しかし、この二人…いやマリベルは根本的にリリアナとは違う。マリアンジェラが二人存在しなければいけなかったという事実がないのだ。

 元々黒い核だった物質は変わってしまった過去でメッセンジャーが他人を操るために使用したものをマリアンジェラがなぜか見つけて浄化し、自分の記憶を入れて勝手に利用したのだ。

 使用しないことを約束させたが、今回は事故で核が体に入り、マリベルが固体化してしまった。

 マリアンジェラの肉体の一部を使用していることもあり、消滅させるわけにもいかず、なんとなくマリアンジェラとミケーレの妹的な位置づけでいるのだが…このまま放っておいてはいずれ面倒なことになりかねないというのが僕とリリィの考えだ。


 マリベルは最初のうちは自分が人間として存在しているのではないとうすうす感じている様子だったが、ここ数日では日を追うごとにマリアンジェラとの差が無くなってきているのが目に見えていた。


「そうか…リリアナ、そういえば性格もリリィとはかなり違ってるものな。」

 父様は妙に納得した様子で、パンケーキを食べているライアンとジュリアーノの口元を拭いたり世話をしつつ、リリアナの顔を見つめる。

 そしてチラッとアンドレの方を見た。

「アンドレもアンジェラとはずいぶん違っているようだが…。」

「ちょ、父様、バッカじゃないの…アンドレはアンジェラから出てきたわけじゃないわよ。」

 リリアナが顔を赤くして言った。

「え?違うのか?」

 どうやら、少々話についていけてない父様は、アンドレがアンジェラの分身か何かだと思っていたようだ。

 リリィがパンケーキを焼くのを中断し、二人を止めに入った。

「父様…、アンドレはニコラスの兄で、私達より500年前の祖先に当たる方で、ユートレアの王太子なんですよ。」

 父様の目が点になり、固まっている。

「そうだったのか…いやぁ、知らなかったよ。何かの拍子にどんどん分離するような事象が起きるタイプの体質かな~、なんて思ってたもので…。」

 やはり、思っていた以上にポンコツな父様に、少し離れたところでアディとルーの世話をしてくれていたおばあ様とおじい様っも苦笑いだ。

「そ、それでだな…私が聞きたかったのは、マリベルはどこから出てきたのか、というところなのだよ。」

 父様がそんなことを口にしたとき、誰でもないマリベルが口を開いた。

「あの…わたちってパパとママの子じゃないの?家族じゃないの?」

 両目にいっぱい涙をためて、そう言ったのだ。

「あーぁ、じいちゃんが泣かせたー。」

 マリアンジェラはそう言ってマリベルの横に行き、背中をトントンした。

 ぐずぐず泣き始めたマリベルにマリアンジェラが真剣な顔で言った。

「マリベル、あんたは私なの。間違いなくパパとママの子よ。」

 理解したのかしないのか、勢いで納得させられたような雰囲気だったが、マリベルはちょっと安心したようで、おばあ様のところに行ってアディとルーと遊び始めた。

 ここにアンジェラがいなくて良かった。魔王様を怒らせると洒落にならない。

 なぜか最近、アンジェラはマリベルを異常に可愛がっているのだ。

 家にいるときは、気づけばマリベルを抱っこしている。子煩悩だとは思っていたが、マリアンジェラが小さいときよりも更にベタベタしている気がする。


 後日わかったことだが、実は、アンジェラが全く子離れできておらず、キンダーにマリアンジェラとミケーレが行っている間、寂しくて仕方なかったところにこじんまりとしたマリアンジェラ(マリベル)が現れたのだから、アンジェラにしてみれば、もう一回マリアンジェラとの楽しい時間がめぐってきたわけで、溺愛が更に加速したことは言うまでもない。

 普段イタリアの家では、昼間仕事中のアンジェラの膝の上に常にマリベルが座っているらしい。まぁ、アディとルーはまだ赤ちゃんで話相手にもならないからね。


 ただ、マリベルがどうして存在しているのか…まだこの時には誰も知らなかっただけなんだ。

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