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644. 夢の中で(1)

 僕がルーを連れて子供部屋に入った後、少し遅れてアディを連れたリリィも入って来た。

「ライル、ねぇ、それ…本当に大丈夫だと思う?」

 リリィが僕の胸元のチョーカーを指さしながら顔を覗き込むように言った。

「大丈夫だよ、触らなければいいんだ。」

「そうね。わかった。」

 リリィはそう言うと、手早くアディとルーの服を脱がせ、パジャマに着替えさせるとベビーベッドに二人を寝かせた。二人は数秒で眠りに落ちた。

「バタバタしてたから少し緊張したのかしら…」

「さぁ…それはわからないけど…疲れてはいるみたいだね。」

「お風呂に入れてから寝かせたかったけど、仕方ないわね…。」

「アハハ…そうだよね…すっかり忘れていたよ。」


 そんなたわいもない会話の後、僕とリリィが子供部屋から出ようとした時、マリアンジェラとミケーレ、そしてマリベルを連れたニコラスが子供部屋に入って来た。どうやら子供部屋の隣にある主寝室の大きなお風呂で3人同時にお風呂に入ったようだ。もちろんお風呂に入れたのはニコラスである。

 マリベルはもう眠そうで、ニコラスに抱っこされて頭がグラグラと揺れている。

「あ、ライル…。あのね、ちょっと二人でお話したいんだけど、ライルのお部屋に行っていい?」

 マリアンジェラがかしこまって僕に聞いた。

「あ、うん。特に問題はないけど…。」

 マリアンジェラは嬉しそうにニンマリと笑った。

「マリー、お菓子とか隠れて食べたら、後でまた歯を磨くのよ。」

 リリィがマリアンジェラにそういうと、マリアンジェラの目が泳いでいるのがわかった。

 どうやら、僕の部屋で夕食の時に食べ損ねたスィーツをこっそり食べようと思っていたようだ。

「わかってるってばー。」

 僕とニコラスは笑いをこらえつつ、自分達の部屋へと移動した。

 部屋に戻る途中、ダイニングを見たが、すっかり夕食の食器も片付けられており、アンジェラの姿はなかった。


 僕の部屋は、このアメリカの新居では、イタリアの家と同じでニコラスと同室だ。

 ニコラスは自室の浴室でシャワーを浴び、僕はイタリアの自室に転移してシャワーを浴びて戻ってきた。部屋に戻ると、すでにマリアンジェラはトレイに乗ったイチゴのタルトをにらみつつ、僕の帰りを待っていたようだった。

「マリー、お待たせ。って…ずいぶん大きなタルトだね。そんなのディナーに出ていたかな?」

「ふっふっふ~。実はですねぇ。これはマリーがお手伝いをして作ったイチゴのタルトなのよ~。」

「え?お手伝い?」

「そうよ~。お手伝いをして、昨日、徠神らいじんおじちゃんと一緒に作ったの。」

 マリアンジェラは嬉しそうにタルトが出来上がった経緯を教えてくれた。

 どうやら、季節外れのイチゴを、春先のイタリアの自宅へ転移し、バックヤードや敷地内の森に取りに行くのを手伝ったらしいのだ。

 そこにアンジェラがお皿を数枚とフォークとナイフを持ってやってきた。

「マリー、それだけを持ってきても食べられないだろう?」

 そう言ったアンジェラに、しれっとマリアンジェラが返事をする。

「あ、パパ。ちょうど今ライルが戻ってきたとこらった。」

「そうか、じゃあ私が切ってあげよう。」

 そうして、アンジェラが切り分けたタルトをそこにいた4人と、マリアンジェラの歯ブラシを持ってきたリリィとで食べることになった。

 なんとも久しぶりの家族団らんな雰囲気である。

 最近は赤ちゃんに振り回され、落ち着かなかったせいもあるが、なんだか心が満たされる気がする。

 タルトを食べ終わり、アンジェラとリリィが食器を持って部屋から出るとき、マリアンジェラがアンジェラにお願いをした。

「パパ…今日はライルとニコちゃんと一緒に寝てもいい?」

 アンジェラは、一瞬僕たちの方を見たが、マリアンジェラの頭を撫でながらやさしく言った。

「夜更かししないですぐに寝るのだぞ。」

 なんだかんだ言って娘に激アマなのである。僕たちの意見は聞いてももらえない。

「うっほーい。」

 マリアンジェラはすかさず僕とニコラスのベッドのど真ん中にダイブしていた。


 どうにかマリアンジェラに歯磨きをさせ、ベッドの中に落ち着いたのは深夜0時を過ぎたころだった。

 いつもならベッドにゴロゴロしながら本を読んだり、動画サイトで面白動画を見たりで朝方まで時間をつぶすのが常だが、さすがに同居人がいるときはそうもいかない。ニコラスはとっくに寝息を立てている。

 僕も眠る努力をすると決め、ベッドに横たわった。

 マリアンジェラが僕の背後から小さい声で言った。

「ライル、おやすみなしゃい。」

 僕は、その言葉を聞き終わらないうちに夢の中に落ちた。そう、落ちたのだ。

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