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642. 新居での夕食(3)

 アンジェラが夕食会の始まりを告げる挨拶をした直後の事だった。

 うとうととリリィの腕に抱かれ眠っていたはずのルーことルシフェルが目を覚まし、アンジェラの方へ手を伸ばして抱っこをせがんだ。

「おぉ、目が覚めたのか。ちょうどよい。皆に二人を紹介しよう。」

 アンジェラはルーを抱き上げ、親族が着席しているダイニングテーブルの一番端に立ち、ルーを皆に見えるように抱きかかえ直しながら言った。

「皆、これが私の息子、ルシフェルだ。これからよろしく頼む。」

 アンジェラの言葉に反応し、ルーが皆の顔を見た。その時だ…ルーがアンジェラの頬を触るように手を置くと、うっすらと金色の粒子がアンジェラの体を覆った。その瞬間、アンジェラの瞳が金色へと変化したのだ。

 見ていた僕たちは、ハッと息をのんだ。

 ガヤガヤと発せられていた雑音が一切、その場から消えた。無音の状態になったのである。

 そして、先ほどの響く低音のアンジェラの声とは違う声がアンジェラの口の動きに合わせ僕たちの頭に直接流れ込んできたのだ。

『私たちの愛する子供たちよ。悪魔が飛来するその日、お前たちは必ずあの場所にいなければならぬ。一人も欠けることなく集まるのだ。よいな。』

 そこにいた全員が、その言葉がアンジェラのものではなく、ルーが発した言葉だと認識した瞬間だった。

 一人を除いては…。その一人…マリベルが質問で返したのである。

「あにょね~、マリベル知ってるのよ。ここにいる人たち全員はあの場所には入れないでしょ~。だって狭いんだもん。それに髪の毛黒いおばあちゃまとかはどうしゅるの?」

 一瞬、僕までルーの能力に飲み込まれそうだった。赤い目と似た絶対的な命令を行使する効果があったようだ。

 マリベルの質問にルーが答えた。

『よかろう。ここにいる者、全てがあの場所にいなければならぬ。お前もだ、マリベル。』

 マリベルの質問のおかげで、朝霧のおばあ様と留美さん、そして僕たちとは異なる風貌の徠紗と徠太もあの場所…封印の間に避難することを許されたのである。そして、僕は封印の間の中を思い浮かべながら考えを巡らせた…狭いのは確かに狭い。12個の石でできた椅子が部屋の中心に向かって彫られている部屋なのである。中央に円形の台があり、それもまた空間を狭くしている。

 その時、僕の心を読んだのかのような言葉がアンジェラの口を通してルーから発せられた。

『案ずることはない。あの場所は必要に応じて変化する場所なのだ。』

 ルーがアンジェラの頬から手を離した。

 その瞬間に雑音が聞こえ始めた。何だったんだろう…まるで空間の狭間にでも落ちたかのような静けさだった。

 当事者のルーは何事もなかったかのようにアンジェラにベビーチェアに座らされると、食べたいものを指さして取り分けてもらっている。

 アディとルーと同じ日に生まれたおじい様とおばあさまの息子、徠太はまだ一人で座ることも微妙だというのに…アディとルーの二人は大きなローストターキーの足をゲットしてかじりついている。


 次にローストターキーにかじりついているアディを抱き上げ、アンジェラは皆にアディの顔を見せて言った。

「こちらが、私とリリィの息子、アズラィールだ。」

 アンジェラはアディにやさしく微笑みかけるとアディに向かって言った。

「アディ、ご挨拶しなさい。」

 アディはターキーをすぐ横にいたリリィに手渡すと、ちょっと頬を赤らめて言った。

「アディ…おにく、だいすき」

 え?ま、マジか…ルーと同じ方向で能力を使って神様モードで話すのかと思っていた僕は、拍子抜けしたのと同時にあまりの可愛さにこっちまで顔が熱くなった。

 一瞬間を置いてから、おじちゃん達が一斉に大笑いを始めた。

「おい、見たか、今のあのかわいらしい言葉と顔を…」

「いままでにいないキャラだなぁ。」

「もらってっちゃダメか?」

 言いたい放題である。まぁ、そんなことは誰も気にも留めていなかったのだが、アディのほっこりするような自己紹介に場が和んだのである。

 その後は、おじい様とおばあ様の間に生まれた『徠太』も紹介された。

「わんわん」

 皆が注目する中、徠太はミュシャを指さして言った。これこそが普通の赤ちゃんである。

『ん~、これはねぇ、わんわんじゃなくて『ヤギ』だよぉ~。』心の中でそう言いながら、僕は少しほっとした気分になった。


 皆が集まってから4時間ほどで宴は終了となった。

 アンジェラがフランスに所有するワイナリーのとっておきワインをずいぶんと振舞ったようで、おじちゃん達は千鳥足で移動を始めた。

 宿泊用に用意された部屋へと案内されると、ほとんどの者が数秒で眠りに落ちた。


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