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633. 犯人確保

 翌朝、僕は少し横にはなったものの、眠ることもなく、なんとなく最近の日記などを読み返して過ごした。

 ついでにミュシャの起こした事件とその対処法についても書き記し、それ以外にもミュシャの胃袋にとんでもないものが入っていたことも日記に書き込んだ。

 しかし、一体どうしてあんなものを食べたのだろう?あ、ミュシャの記憶を見ればよかったな…。

 色々考えているうちに自分がバスルームを使う時間になった。僕がバスルームを使っていいのは朝6時から7時の間だ。カールは7時から8時の間に使うことになった。

 あ、シャンプーとかボディソープとか忘れたな…。僕はまた鍵のかかった部屋から自宅のクローゼットに転移し、予備のシャンプーやボディソープ、そしてタオルを数枚持ち出した。

 すぐに部屋に戻り、それを持って浴室に移動した。

 浴室の鍵をかけ、中に入り、まだちゃんと見ていなかった内部を観察する。

 極狭いシャワーブースしかない浴室だ。その中にボディソープとシャンプーを置くラックがついていた。

 シャワーブースのドアの上にタオルをかけ、着替えを一切持って来ていない事に気が付く。

 もう一度自宅のクローゼットに転移し、今日着る下着と服を一式持ち、浴室に転移した。

 こんなことではいつか見つかってしまいそうだ。そう思いながらもさっさとシャワーを浴び、服を着て外に出た。

 そう言えば、脱いだ洗濯物ってどうするんだろう?

 ボーディングスクールの寮では洗濯カゴに入れて置いておけばいつでもきれいになって返って来たけど…。


 浴室から部屋に戻るときに、部屋の前でカールと鉢合わせをした。

 まだ彼の入浴時間には30分以上あるが、そわそわとしながらカールが僕に話しかけた。

「お、おはよう、ライル。」

「おはよう。」

「よく眠れた?」

「うーん…そうでもないかな。でも、いつもなんだ。」

「そうか…。」

「もうシャワー終わったから、使っていいよ。」

「あ、あぁ、うん。ボディソープ忘れちゃったんだよな。今、外のコンビニに買いに行こうと思って出てきたとこだったんだ。」

「え?そうなの。それなら、買いに行かなくてもいいよ。中に置いてあるの大きいボトルだし、いやじゃなかったら、それ毎日使っていいよ。家から持ってきたやつだけどね。」

「そ、そう?じゃ、使わせてもらうよ。」

「うん。じゃ、僕、部屋に戻るから。あ、タオルはある?何枚か持って来たから、浴室に置いておこうか?」

「え、いいのか?」

「うん。確か、ホテルの…あ、うちの義兄あにの経営してるホテルチェーンのやつなんだ。家でも同じのを使ってて、何ていうのかな…実際に導入する前の品質チェックらしいけど。そんなんで良ければ、どうぞ。」

 僕は、目の前の自分の部屋のドアを開けて、自分で組み立てたキャビネットの棚からタオルを2枚出して浴室のタオルハンガーに掛けた。

 どうやらカールはタオルも持って来ていなかったようで、少しホッとした表情をしている。

「あ、カール…ちょっと聞いていい?洗濯物ってどうするのか知ってる?」

「あぁ…多分ね。ランドリールームがあって、そこで小銭を入れて洗濯機を回すんだ。」

「自分でやるってことか…。」

「そうだけど…、ライル…もしかして洗濯したことないのかい?」

「えへへ…実はそうなんだ。家にはお手伝いさんがいて、寮にはそういうのやってくれるサービスがあったんだ。」

「お手伝いさんか…生活のレベルの違いを感じるよ。」

「え、でも家が広いからお手伝いさんをお願いしてるけど、食事は義兄あにがいつも作るんだ。」

「お義兄にいさんって、アンジェラ・アサギリ・ライエン氏のこと?」

「あ、うん。そう。アンジェラ。」

「へぇ…世界的なアーティストでもそんな事をするんだ…。」

「ハハハ…アンジェラの作るご飯は最高に美味しいんだよ。まぁ、姉のは聞かないでおいて。へへへ」

 僕はカールとの立ち話を終え、部屋に戻った。


『ピロリン』スマホのメッセージを受信する音が聞こえ、僕はポケットからスマホを出し確認する。

「うっそだろー。」

 添付されてた動画を見て、思わず声を出してしまった。

 そこには、ジュリアーノが、自分の食事のプレートに嫌いな食べ物をのせ、テケテケと歩いてサンルームに行き、自分の手に持つスプーンでその食べ物をすくってはミュシャに食べさせ、最後にスプーンまで口の中に押し込んでいる様子が映っていた。真っ黒である。

 犯人はジュリアーノだったのだ。ミュシャは、嫌がりながらも、天使であるジュリアーノに抗うことは出来ないようで、苦しそうな顔をしながらスプーンを押し込まれていた。

 そして、それを撮影している者が、慌てて止めに入った。ミケーレだ。

『ジュリアーノ、スプーンは食べさせちゃダメだよ。ミューが死んじゃう。』

『にいちゃま。だいじょぶ。いつもミューちゃ、こいうの食べてるもん。』

 自信満々のジュリアーノの発言に毎回の事だと言うことがわかった。

 そして、ミケーレは動画を撮っていたことを忘れ、スマホを手に持ったままその場を後にした。

『パパ~、大変…。ミューがスプーンを飲み込んじゃったー。』

 動画はここで、止まっていた。動画を僕に送ってきたのはニコラスだ。

 メッセージのコメントを読むと…どうやらジュリアーノが嫌いな食べ物をどこかに毎回廃棄しに行くのをミケーレが気付いて動画を撮ったらしい。そこで、スプーンを食べさせているのを見つけたのだとか…。

 そして、その後にあのスマホはリリアナのものだったと判明した。スマホばかりをいじってる母に頭に来たジュリアーノが持ち出し、ミュシャに飲み込ませたというのだ。

 まぁ、しかし『なんでも食べる』と説明されたせいで、ジュリアーノも食べさせていいと思い込んだらしい。

 加工された金属やプラスティックなどは本来の物質と異なってしまうため、ミュシャの能力では、物質的な分解が出来ずに残ってしまうらしい。食べさせていいのはあくまでも『食べ物』だ。

 いくら最終覚醒した神獣でも、胃袋にフォークが刺さっていれば相当痛かったはずだ。

 ジュリアーノはリリアナにこっぴどく叱られ、しばらくの間、ミュシャへの接近禁止命令が出されたのであった。

 そして最後に、『スプーンを取り出しに戻って来て~』と書かれていた。

 僕は部屋に鍵をかけて、自宅へと転移した。

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