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63. 愛の力

 僕は自分の周りの景色が一瞬で変わるのを見た。

 ここは、どこだ?外だ。競技場の様なところで、観客がいっぱい入っているど真ん中に出てしまった。翼で浮いている状態だ。

 見ている観衆からどよめきが起きる。

「おい、本物の天使だぞ!何が起きている。」

 自分の後ろを見ると、十字架に手のひらに杭を打ち付けられている人がはりつけにされている。

 下を向いていて顔が見えないし、髪も短いけど、この状況的にアンジェラだろう…。

 魔女を公衆の面前で焼き殺す、そういう処刑の場に違いない。

 どんだけ殺されかけてるんだろう…アンジェラ。かわいそうに。

 多分、まだ覚醒していない、ただの美しい青年というだけのアンジェラを、妬んだ誰かが魔女だと言ったのかもしれない。

 僕はこの時、怒りのままに行動すると自分に誓った。

 僕は、十字架からアンジェラを外した。自分でもちょっと気付いていたが、おねえさんの体になった僕は、人の何倍、いや何十倍もの力がある。

「痛いけど、ちょっと待っててね。」

 そして、空中に3メートルほど上がったところで、赤い目を使い民衆と役人、その場にいた者たちに宣言する。僕の体に赤い炎が燃え上がるように出ている。

「神を恐れぬ者達よ。よく聞くがいい。

 この尊き者を何故殺そうとするのだ。この者に手をかける者、全てに我の怒りを。

 この者を害そうとする者、全てに我の裁きを…。」

 そして、僕は黒い目を使って競技場に嵐を呼び、拳大の雹を降らせ、稲妻を落とし、アンジェラに杭を打ったと思われる役人2人を死なない程度に感電させた。

 最後に雷を落とし、十字架を燃え上がらせる。

 僕の周りにさっきピアノを弾いて集まって来たのとおなじくらいの量の光の粒子が集まってくる。最後に稲妻の光と共に、僕はアンジェラを連れてイタリアの家に転移した。

 さっきのピアノを弾いたときのパワーはこのために準備されたものだったのかもしれない。


 僕はアンジェラの手のひらの穴をふさぎ、体中の傷や鞭打たれた跡を癒し、泣きながらすがりついた。

「アンジェラ、アンジェラ、しっかりしてよ。」

「…。くっ。」

 苦しそうなうめき声と共にアンジェラが目を覚ました。

「よかった。間に合った。」

 血だらけの服を脱がせて、体を拭いてあげた。かなり若そうなアンジェラだというのがわかる。

 クローゼットから違う服を出して、着せた。アンジェラはその間中何も言わず、うつろな目で僕を見ていた。アンジェラ、かわいそうに…。

 アンジェラを抱きしめて、頭を撫でてあげた。

「もう大丈夫だよ。」

 僕が帰ろうとしたとき、アンジェラが僕の袖を掴んだ。

 そして、ベッドの横のチェストからルビーにダイヤモンドで装飾した首飾りを取り出し、僕の首にかけて言った。

「これ、君のために作ったんだ。もらってくれないか…。」

 僕はにっこり笑って頷いた。

「ありがと。アンジェラ。じゃあ、今日は急いでるから、ごめんね。」

 アンジェラは少し残念そうな顔をしてたけど、僕の頬をやさしく触って「ありがとう。」と言った。僕は家の自分の部屋に転移した。


 あぁ、思った通り…。アンジェラがぐちゃぐちゃになって泣いている。

「アンジェラ、ごめん。」

 アンジェラが僕の首にかけられた首飾りを見て、両膝を床についた。

「お前、それ…。」

「あ、やっぱりもらっちゃだめだった?僕のために作ったって言うから…。ごめん。じゃ、返してくる。」

「ダメ。そうじゃなくて…。」

 アンジェラが僕の腰をぎゅ~って抱きしめて泣いている。

 何がダメだったかよくわからないかった。けど、アンジェラは元気で生きてる、それで十分だ。

「あ、着替えなきゃ。時間無くなるよ。よかった~、衣装に着替える前で。また汚しちゃった。穴は開いてないけど…。」

 記者会見用の衣装に着替えた。

 一緒に控室に転移した。マネージャーがすぐに来て、アンジェラをライブ会場に連れて行った。後で、僕を呼びに来てくれるらしい。

 ライブ会場の様子は控室にあるモニターで確認できるようにしてくれた。

「あっ、やばっ。靴はいてくるの忘れちゃった。てへ。」

 僕は自分の部屋に転移した。

 その時、控室内に向けてドアの外から銃弾が多数撃ち込まれていた。

 家でライブの様子を確認しつつ、靴を履いて、ついでにトイレにも行っておく。

 途中で行きたくなったら困っちゃうからね。


 トイレから出たところで、アズラィールにばったり会った。

「うわっ。」

「ちょ、ちょっと「うわっ」て何よ。ひどくない?」

 僕が言うと、アズラィールは彼の手にあるスマホのニュース速報を僕に見せた。

「アンジェラ・アサギリの婚約者、銃撃の末拉致されたか?」

「はぁ?ちょっとまって、ちょっとまって。僕靴履いてくの忘れて、戻って来たんだけど、もしかして、ねらわれちゃった?

 心配してたら困るから、アンジェラの所に行ってくる。」

「うん。気をつけてね。」


 とりあえず、ステージの脇に転移してみる。

 うわ~、どうしよう…。すごいいっぱい集まっちゃってる…。

 あ、そだ。電話しよう。あ、スマホ持ってなかった…。

 仕方ない…、キラキラ多めで、アンジェラの所に出ちゃおう。

 せーの…。キラキラ多め、キラキラ多めで…。

「おおっ。」

 どよめきが観客席や報道陣から起きる。翼を、広げて、ちょっと大げさに出てみた。

 出た瞬間にアンジェラにしがみついて立たせる。

「お、おま…」

 浮き上がって唇をふさぐ。

「大丈夫だよ。」

 アンジェラが僕を抱きしめてから一歩下がり、跪いてポケットから取り出した指輪のケースを開ける。

「愛しているよ、ずっと前から。君も僕だけを愛しておくれ。」

「はい。」

 僕は、言うと同時にアンジェラにキスをした。

 キラキラが勝手に出てきて僕たちの周りを覆った。

 二人はそこから姿を消した。


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