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62. 婚約発表の日

 四月十七日日曜日。

 朝八時、僕たちはまだ日本の家にいて、未徠のノックで目を覚ました。

「ライル、徠神らいじんが目を覚ました。来て欲しいんだ。」

「ふぁい…行きまふ。」

 完全に寝ぼけている。僕は着替えるのも忘れ、清楚なネグリジェを着たまま二階の部屋へ行った。

「おはようございまふ。ふぁ~。」

 そこには、父様とおじい様がいて、どうも僕の方を見て、固まっている。

「どうかしたんでふか?」

「ライル、お前、そんな格好で寝ているのか?」

「え?」

 かぁ~っと頭に血が上った。

「え、あ、はい。これが、かわいいって言われて…。」

 素直に本当のことを言ってしまった。

 父様が僕とアンジェラの部屋に乗り込んでいった。

 二人が言い争っている。スマン、アンジェラ。

「それで、僕に何か用でしたか?」

 未徠が徠神の上体を起こしながら言った。

「徠神がおまえに礼が言いたいそうだ。」

 えっ?礼ってなんだろう?徠神が口を開いた。

「天使様、いえ、ライル様、ありがとうございました。

 わたくしは未来を見ることが出来ます。ただ、いつ起きるかはわかりません。いつかは見知らぬ者にさらわれ、どこか遠くに連れて行かれることはわかっておりました。

 でも、あなたが私を助けてくれることもわかっておりました。父、そして弟と再会できる日が来ることも…。」

 長文、ありがとうございます。心の中で敬礼!

「どうも、話が早くて助かります。せっかくなので、徠神君の父上と弟君呼んできますね…。へへっ。」

 アズラィールの部屋に転移した。アズラィールの頭をガシガシヘッドロックして起こす。

「ねぇ、アズちゃん。起きてよ。徠神起きたって。」

「んがぁ、やめろ、ライル~。」

 次に自分の部屋へ…。

 あ、父様とアンジェラがベッドに座って、なにやら話している。

「それで、二人は今どうなっているんだ?」

「どうって、愛し合ってるに決まって…。」

 バンバン、バンッ。アンジェラ枕でたたかれてました。

「父様、やめてよ。」

「ライル、お前って子は、まだ小学生で、そんなことや、あんなことや…。」

 ごめん、アンジェラ。君の言い方が悪い。

「父様、僕、今まで言ってなかったけど、古い本を触った時に前世の自分に入った状態で目が覚めたことがあったんだ。その時に、自分が本当は女の子で、お互い相手しかいないって誓った恋人がいて、それがアンジェラの前世の姿だったって知ったんだ。

 僕は、なるべくしてこの姿になった。アンジェラのお嫁さんになるために。

 もう二人が離れないように、ずっと一緒にいられるように。」

「ライルぅ~。」

 アンジェラが鼻水と涙を流している。汚い…。アンジェラの鼻水を拭きつつ、父様の反応を見る。

「…。本気なのか?」

「うん。僕、時間を超えられるようになってから、アンジェラの過去とも実は何回も関わって来てて、本人にも言ってないけど…。本気なんだ。本気で愛してるんだ。」

 父様はすごく悔しそうな顔をしてたけど、結局理解を示してくれた。

 信じた道を行きなさいって。

 ありがと、父様。息子がいなくなってごめん。でも、僕は娘になって幸せになるよ。

「あ、忘れてた。アンジェラ。徠神が弟との涙の対面がしたいってさ。」

「あ、え、そうなの?じゃ行ってくる…。」

 か、軽い。涙が滝になっている父様を置き去りに、アンジェラは逃げるように徠神の部屋に行った。

「父様、ごめんね。でも僕はアンジェラを一人にはできないよ。それに、多分もっと何か僕たちの知らないことがあるはず。必ず父様には知らせるから、待ってて。」

「わかった。」

 僕と父様はハグをして、二人で徠神のところへ行った。


 時間は前後するが、アズラィールはこれからしばらくの間、鈴と徠神の所に月に一回は帰り、色んなお土産を持って行ったりすることになる。

 それを覚えていた徠神は、僕らを受け入れてくれて、すぐに打ち解けてくれた。

 テレビを見たことがなかった徠神が、実の弟がテレビのワイドショーで騒がれる様を見て実は誇らしげに思っていたことは、本人と父のアズラィールだけが知るところである。

 あ、あの…騒がれてる相手が、僕なんですけど…。


 家の中では、徠神は未徠に次ぐ年長者なんだけど、すごい勢いで現代の常識を吸収し、アズラィールと同じで、過去に帰らずに現代で生きていきたいと希望するようになった。

 あの、僕らを狙ってる宗教団体を殲滅できれば過去に帰ってもいいかもしれないが、できない場合、また拉致される危険性もある。

 どうしたものかと思案することろだ。


 四月二十二日金曜日。

 夕食後、ダイニングでアンジェラから皆に話があった。

「みんな、すまん。聞いてくれ。明日、東京で私のイベントがある。その最後に婚約を発表しようと思う。家の前にいっぱい報道陣が来て迷惑だろうと思うが、来週には私はイタリアに本拠地を移し、こちらには週一日か二日のみ滞在する。すまんが、了承して欲しい。」

 アズラィールが突っ込みを入れる。

「誰と誰が婚約するのさ?」

 面倒くさいな、知ってるくせに。あら、びっくり。アンジェラは軽くアズラィールをスルーした。

「記者会見はライブ中継されると思うので、それを見てくれ。」

 皆、チラッとこっち見たけど、何も言わなかった。

 その日の夜は早めに就寝した。


 翌日、四月二十三日土曜日。

 朝早くアンジェラのマネージャーが今日の衣装を持ってきた。

 僕の分もあるらしい。何着か用意したから好きな物を着ていいと言われた。

 移動はこっちから直接行くということで、時間と場所を聞いた。

 途中でまた狙われても嫌だからね。

 朝ご飯を食べた後で、衣装を試着する。

 アンジェラの衣装は黒の騎士みたいな感じだった。僕に用意されていたのは藤色グラデーションがかわいいドレープがついたやわらかな素材のワンピース。若草色のフリルが多いワンピース。そして白で裾がマーメイドの様な広がりのあるワンピース。

 僕は藤色のワンピースを選んだ。ちゃんと翼用の加工もされていた。

 靴もそれぞれの色に合わせた物が用意されてた。

 なんだか落ち着かないけど、することもないので一人で勉強をして過ごした。

 アンジェラはリモートで打ち合わせをしていたみたい。

 今日は、以前見せてもらったような特別なお客様だけを呼んで開催するライブで、本当にお金持ってる人ばかりが来るんだそう…。

 アンジェラに何か聞かれたら、「はい。」って答えてって言われた。他の人には何を聞かれても答えなくていいって言われた。かわいく笑っててって。アハハ。できるかなぁ…。

 なんだか落ち着かないな。


 出発まで二時間。本気でやることがなくなってきた。勉強も手につかないしね。

 暇つぶしと集中するためにピアノを弾いた。

 僕のお気に入り テンペスト第三楽章。ピアノを弾いていると光の粒子が集まってくる。

 これって何かのエネルギーみたいで、弾き終わった時に

 すごく力が漲る感じがするんだよね。

 転移しすぎて疲れた時とか、ピアノ弾いたら治りが早く

 なったりするかな?今度試してみよう。

 今日の光の粒子はなんだか金色以外の色もいっぱい集まっている…。

 その光景を初めて見た徠神と左徠が動画を撮りながら口を開けて固まっているのが見える。

 そろそろ、クライマックス…。

 気合が入り翼が開く。そして、光の粒子が渦を巻き、僕を包み込む。

 そして、光の粒子が消えた。


 そこには、ライルはいなかった。


「「大変だ~。」」

 徠神と左徠が徠夢とアンジェラとアズラィールを呼びに行った。

 でも、誰にもライルの居場所はわからなかった。


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