表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
617/696

617. やりたい放題

 僕とニコラス、そして大天使アズラィールに憑依されているリリィと、大天使ルシフェルに憑依されているアンジェラ、この4人でミケーレとマリアンジェラのお迎えにキンダーの入り口へと向かう。

 いつにも増して魅了のオーラを発するアンジェラ(ルー)にお迎えに来ている保護者がうっとりしながら注目する。

 そして、それに負けないくらい注目を集めているのが、ニコラスだ。

「ニコラス様、今日はスーツ姿がとっても素敵ですぅ。」

 そう言って頬を赤らめているのはキンダーの先生たちだ。そう、ニコラスはものすごくモテるのである、息子たちが頭に来るほどに…。

「私、次はニコラスの方で来ようかしら…。」

 リリィ(アディ)がそう言うのを聞いて、ニコラスが後ずさった。


「ちょっとぉ、アディとルー、早くママとパパから出て!」

 ぷんすか怒って怒鳴り散らしながら近づいてくるのはマリアンジェラだ。

 さすが元女神…大天使二人を前にしてもひるむどころか、上からな発言だ。

 一瞬アンジェラ(ルー)とリリィ(アディ)の胸元が光ったかと思うと、いつの間にか二人の腕にはそれぞれ赤ちゃんが抱っこされていた。憑依を解いたのであろう。

 不思議な事に、周りの大人たちはそれを見ても何も反応しない…。最初からそのようになっていたかのような自然な感じである。

「あら、まぁかわいい赤ちゃんだこと…。二人ともママの髪色と同じね。」

 そんな風に言われ、急にリリィがハッと我に返り周りをキョロキョロ見渡している。

「ママ…大丈夫?アディに乗っ取られてたでしょ?」

「えぇっ!や、やだっ。ここどこ?」

 リリィはキンダーには来たことが無かったため、マジで焦っている。

 そんな中、アンジェラが片手でルシフェルを抱き、もう片方の手でリリィの腰に手を回したて言った。

「リリィ、大丈夫かい?」

「あ、アンジェラ…ここどこ?」

「子供達が通っているキンダーだよ。」

 アンジェラがそう言った時、アンジェラの足元にミケーレがしがみついて言った。

「パパ、僕も抱っこ」

「どうした、ミケーレ。赤ちゃんがうらやましくなったのか?ほら、こっちにおいで。」

 ルーを抱っこしている反対側の腕でミケーレを抱き上げるアンジェラ…そしてそれを見ていたマリアンジェラが僕に向って両手を広げて言った。

「ライル、抱っこ。」

 二人揃って赤ちゃん返りかい…。いや、どう考えてもマリアンジェラは確信犯だ。

 眠たいふりをして、顔をこすりつけてくるもの。


 結局全員でアメリカの家に徒歩で移動し、そこから転移で帰宅したのだが…。

 なぜ、アディとルーがリリィとアンジェラに憑依してライルの卒業式に参加したのか…ニコラスと僕は二人で着替えながらで少し話した。

「ニコラス、今朝までアンジェラはへろへろだっただよな?」

「そうだね。ライルも見ただろ、アンジェラのあの目の下のクマ。」

「あぁ、見たよ。キョンシーも真っ青のどす黒いやつだよね。」

「きよんし?」

「あぁ、気にしないでくれ。昔の映画だ。目の周りが黒くなっているやつ。」

「ふうん。ま、それはいいや…。ライル、でも…おかしいと思わないか?」

「何が?」

「あんなに中身が大天使だってビビってたのに、二人とも普通の赤ちゃんを世話してるみたいになっていないか?」

「そういえば…そんな気がしてきたよ。」

 僕は、ニコラスと相談して、アディとルーを度々観察することにした。


 早速、その日の夕食の時だ。普通なら赤ちゃんはとっくに寝る時間だが…。

 ダイニングテーブルの前に置かれたベビーチェアにしっかり座って何かを待っている。

「はいっ、おまたせ~。」

 出産後、異常に回復の早かったリリィがアンジェラの調理を手伝いながら、出来た食べ物をダイニングに並べ、皆に取り分けてあげる。

 今日は、ボロネーズソースのパスタとローストビーフ、デザートはプリンらしい。

 最初にマリアンジェラのプレートに山盛りにのせ、ミケーレには控えめの量を盛る。

 二人は元気よく『いただきます』をして食べ始めた。

 リリアナとアンドレはライアンとジュリアーノが食べる時間に合わせて一緒に済ませたらしく、その場には来なかった。

 次に、僕たちには『自分で好きなだけ盛って食べてと』言って、パスタが入ったフライパンが目の前に置かれた。

 気になるのは、アディとルーの差すような視線だ。

 リリィは気づいていないようで、ローストビーフも子供達のプレートに盛りつけた後で自分も着席した。

 プレートにパスタを盛り、早速食べる様だ。

 フォークをくるくると巻いて…パクッと…ん?リリィの口に入ったはずのパスタだが…なぜかアディが口をもぐもぐさせている。

 リリィは次々くるくる巻いて自分の口に入れるが…足りないといいつつおかわりをしている。

 直接手を下さず、物質転移で少しずつピンハネをしながら自分達の口に入れているんだな…。アディとルーの前にはミルクの入った哺乳瓶がドカンと置かれているが、それは単なる飲み物であるように時折ごくごく飲んでいるみたいだ。

 アンジェラが調理を終え、ルーの横に座った時、口の周りに少しトマトソースがついているのに気づいた。

「あ、ルー、ダメじゃないか、また大人の食べ物を食べたのか?」

 ルーは首を横に振りアンジェラの顔に手を伸ばした。

「おっ、そうかそうか…パパの気のせいだったでちゅね~。ちゅ。」

 アンジェラが壊れている…。僕とニコラスはそう思った。マリアンジェラは自分の分をさっさと食べ終わり、プレートを自分で食洗器まで運んだ後で僕の所へ来た。

 マリアンジェラが僕に小さな声で耳打ちをする。

「あれ、天使じゃなくて悪魔よ。もうパパもママも洗脳されてる。どこまでが自分の意思で行動したか、きっとわかってないと思うわ。ライルも気をつけて。」

「え、あ、あぁ。わかった。」


 しかし、翌日から、少し様子が変わったのだ。

 朝のギャン泣きタイムが無くなり、朝食の時間にはすでに用意された朝食を、いつもなら皆の世話をしながら一番最後に食べるアンジェラが、リリィ共々真っ先に着席し、頬張っていた。

「ん、おいひい。このパン。」

 リリィがいっぱい頬張ってガツガツ食べている…。アンジェラもいつものエレガンスさを感じないほどたくさん食べている。

「ん?アンジェラ…リリィ…、またルーとアディが入っているのか?」

 二人が少しビクッとした。

「えへへ、だって…ねぇ。」

「そうだぞ…二人の体に入って食べた方が効率がよいのだ。」

「それにさぁ…ねぇ。運動しすぎちゃって、お腹がすいてるのよ」

「運動?」

 そこで、ミケーレが泣きそうな顔をして叫んだ。

「ストーップ。」

「あら…」

「どうした、ミケーレ?」

「うるさい。パパとママを返せー。」

 ミケーレはそう言って走り去って、子供部屋にこもってしまった。

 マリアンジェラの話では、アンジェラとリリィに憑依した二人がどうやら夜通しベッドの上でイチャイチャしていたらしく、隣の子供部屋まで喘ぎ声が聞こえてきたらしい。

 さすがにそういうのは今まで自宅ではタブーというか、ユートレアの王の間まで行ってたので、ミケーレ的にはショックが大きくて許せない様だ。


 どうにかしないと家庭内で問題が発生しそうな状態である。

 しかし、さすがにアディとルーは神だというだけあって、強力な権能を持っている様だ。

 ほんの少し触れるか、目を見れば、記憶の改ざんや洗脳、意のままに相手を動かし、一度掌握すれば離れていてもコントロール可能らしい。

 そして、それが通用しないのは、僕とマリアンジェラだけであるということが、後にわかるのである。

 マリアンジェラが言う通り、天使どころか悪魔かと思うほどの自己欲の追及が度を越している。何か対策を考えねば…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ