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608. 望まぬ訪問者達(6)

 僕、ライルが『LUNA』に変化し鍵のかかった社長室の中でアンジェラの合言葉を待っている時だ。廊下でなにやらひそひそと話す男たちの声が聞こえた。

 ん?関係者は既に大会議室に入っており、それ以外の人物はいないはずだ。

 僕は何が起きているかを確認しようと思ってドアに近づいた。すると、ドアの向こうで何やら鍵をこじ開けようとしているではないか…。

 やっぱり、信用しちゃいけないな…。さて、どうするか…。


 男たちが小声でこう言っていた。

「いいか、絶対にこのビルにいるはずだ。」

「あぁ、あれはきっと何かのトリックで、ここでもそう言ったことをするはずだ。」

「よし、ここを開けろ。」

「ダメだ鍵がかかっているぞ。」

「いいから壊して開けろ。上からの命令だ。」

『ガチャガチャ』と音がして、ピッキングの用意でもしていたのだろう、鍵が開いた。

 僕はドアが開く前に、キャビネットの中に体をスッと埋め込んで様子を見ることにした。

 社長室は広いが、中に家具などはほとんどない。隠れるスペースもない。

 僕が今埋まっているキャビネットは厚みのない飾り棚の様なものだ。下部には上質な木材で出来た扉がついており、中には会社の書類が入っていて鍵がかかっている。上部が大きなガラス張りになっており、中にはアンジェラが今までに獲った賞のトロフィーなどが置かれていた。

 そして、部屋の壁には、大きな絵画が2点飾られていた。

 そういえば、ここに入ったのは今回で2回目だが、中をちゃんと見たことがなかった。


 その絵画は、一点はリリィの小さい時の天使の翼を出したもの。多分、アンジェラが若い時に描いた絵画だ。もう一点は翼を出した小さい時の僕が、大きな天使の羽を一枚手に持っているものだった。

 ん?これは…。僕が小さい時に皆の羽をむしってコレクションしていたのは知っているけど、アンジェラから羽をもらったのはついこの間だ。アンジェラが絵を描いていた時の話ではないはずだが…。僕が、ふとそんなことを考えていた時、入って来た二人組の武装した男たちがキャビネットに近づいてきた。僕は慌ててそのままアメリカの自宅に転移した。


 スマホは通話中のため、予備で置いてあったタブレットでニコラスにメッセージを入れた。

『武装した男が社長室の鍵を開けて侵入した、一旦家で電話の音声を聞きながら待機する。』

『ピロリン』

 メッセージに返信が来た。

『了解。また何かあったら知らせてくれ。』

 外から見えない寝室でスマホの音声を聞いていると、どうやら会議が始まったようだ。


『バタン』とドアが閉まる音がした。

『遅くなりました。あのLUNAさんはどこに?』

『あぁ、それなんですが…彼女には特殊な連絡方法を用いていまして…まだ来ておりません。』

『は、はぁ…ではいついらっしゃるんですか?』

『まず、こちらをご覧ください。』

 アンジェラがここで便せんと封筒を取り出しているはずだ。

 サラサラと紙に何かを書く音が聞こえてくる。ここでは、アンジェラが一文を書き込み自分のサインをしているはずだ。

『ここに、私が彼女にお願いするべきことを書き込みます。』

『は、はは…ふざけているんですか?アンジェラさん。』

 アンジェラはこの前ネゴシエーターだと言っていた男と思われる人物にそう言われながらも、一ミリもひるまず答えた。

『あなた方がLUNAに会いたいと、話を聞きたいというから付き合ってやっているんだ。

 嫌なら帰ればいい。もう、勘弁してくれ。自分たちで探せばいいではないか。』

 後ろにいる双方の関係者が少しざわめき、慌てて取り繕うこえが聞こえた。

『あ、あぁ、すみません。こういうこと不慣れなもので…。お、お願いします。続きを。』

『…。ところで、今日はLUNAにあの船上パーティーでのことを聞きたいと言ったが…』

『あ、はい。そうです。お礼と感謝状と、勲章をお渡ししたいんです。』

『ほほぉ…まさか、その後でよからぬことを考えていたりはしないだろうな。』

『アンジェラさん、何をおっしゃっているんですか…私達は政府の機関としてたくさんの命を救ったLUNAさんにお礼が言いたいんです。』

『そうか。では、よしとしよう。ただし、君たちが良からぬことを企んだりした場合、私は責任を取らぬぞ。』

『な、何をおっしゃっているんですか…。』


 そんなやり取りを終え、一行はアンジェラに連れられて屋上へ移動した。

 途中、ニコラスのつぶやきが聞こえてくる。

『FBIは全部で5人と護衛が3人。アンジェラの部下が4人。ん…ヘリが飛んでる。』

 その時だ…アメリカのアンジェラの自宅にも武装した男たちが侵入しようと試みているのが警報でわかった。

 インターホンのカメラをオンにして、僕は言った。

「僕は今、忙しいんだよ。君たち住居侵入の罪で身柄を拘束するよ。」

 門を無理やりこじ開けて入ってきたのは男8名ほど。

 僕は外に出ることなく、一瞬でそいつらがいる場所の地面に10mほどの深い穴を掘った。

 骨折してなきゃいいけど…。穴を掘ったというよりは…地面が下がったので大丈夫だろう。

『うわぁ~』

『た、たすけてくれー』

 そんな叫び声が聞こえたが、自業自得である。門からエントランスまで30mほどあるが、そのちょうど真ん中辺りに穴をあけてしまった。

 アンジェラに怒られてしまうかも…。まぁ、家に入られてめちゃくちゃにされるよりはいいかな…。


 さて、スマホの向こうの状況だが…。屋上でアンジェラがブロンズ像の前に行ったのだろう。

『LUNAを呼び出す前に、君たちに念を押しておきたい。

 LUNAは人ならざる者だ。私たちは彼女を私達の守護天使だと信じている。絶対に危害を加えないと約束してくれ。』

『もちろんですよ、アンジェラさん。』

『もし約束を破れば、私には何が起きるかわからない。いいな。』

『はいはい、大丈夫です。』

 なんとも甘く見られたものだ。本当に危害を加えるつもりならおしおきが必要である。


 その時、アンジェラの合言葉が発せられた。

『LUNA、私の願いを聞き届けておくれ』

 僕はスマホを隠しポケットに入れ、アンジェラの会社の屋上に設置したブロンズ像の上空、約7,8メートル辺りに翼を広げた状態で転移したのだ。

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