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604. 望まぬ訪問者達(2)

 前日は日曜日ということもあり、終日イタリアの家で過ごした。

 至って特筆すべきことのない一日だった。しいて言えば、リリィのお腹がまた更におおきくなり、医者の勧めで今週の金曜日には入院するという話になったことだろう。

 リリィ本人も、その方が家族に負担をかけないだろうからと言っていたほど、歩き回るのも大変な状態だ。


 そんな日が終わり、深夜、0時30分頃だった。突然ベッド脇のテーブルの上で充電中の僕のスマホが鳴った。父様からだった。

「もしもし…」

「ライル、大変だ。アンジェラのアメリカの家がテレビに映ってるぞ。」

「え?なんで?」

「早朝のワイドショーでいきなり映って…アメリカのメディアでライブ中継しているのを、日本でも放送してるようだが…まだ、なぜ映っているのかは出ていないんだ。」

 僕は慌てて自室のテレビをつけたが、イタリアは深夜でそういった放送は見ることが出来なかった。

「父様、ちょっと着替えたらそっちに行ってもいいかな?」

「もちろんだ、すぐに来い。待ってるぞ。」

 僕は寝ぼけまなこで電話で話す僕を見つめるニコラスにアンジェラを呼んでくるように頼んだ。

 ニコラスは状況がわからないまま僕の言う通りにアンジェラを迎えに行った。

 アンジェラは書斎で仕事をしていたようだ。


「ライル、どうした?」

「あ、アンジェラ…父様から電話があって、アンジェラのアメリカの家の周りに報道陣が集まってライブ中継してるっていうんだ。」

「はぁ?なんだ、それは…。」

「アメリカはまだ夕方すぎたくらいだろ?誰か会社の人に確認してみてくれないかな?」

「当然だ。すぐに調べて連絡する。」

「僕は日本の朝霧邸でその報道を見てくるよ。イタリアではやってないんだ。」

「あぁ。頼む。そっちも何かわかったら連絡をくれ。」

 僕はアンジェラと別行動を取った。


 報道陣が来たり、中継される場合、今までだとアンジェラの熱愛発覚などが主な要因だった。しかし、結婚後はそう言った類の報道はほぼなくなり、メディアの方もアンジェラにはずいぶんと好意的な記事が多くなっていたのだが…。

 僕は脳内でそんな思考を巡らせながら、自室のクローゼットから日本の朝霧邸の自室に転移した。すぐにサロンに走り、そこで父様たちとあいさつを交わす。

「父様、おはようございます。連絡ありがとうございます。」

「いや、当然のことだ。ほら、見てみろ。これはアンジェラのアメリカの家だろう?

 お前の高校のホームカミングで行った時の外観にそっくりだからすぐにわかったんだ。」

「…。本当だ…。しかも、やばい雰囲気だ。」

 僕が見たテレビの画面の端の方には、機動隊の様な武装した警察官まで待機している。

 そこでアンジェラから僕のスマホに電話が入った。

「ライル、何かわかったか?」

「アンジェラ、まだ何もわからないんだけど、ただならぬ雰囲気ではあるよ。何だか機動隊みたいなのを連れて、アメリカのうちの門の前を包囲しているみたいだ。

 そっちは何かわかったの?」

「アメリカ本社の方に『LUNA』の所在地の問い合わせがあったようなんだ。」

「『LUNA』…え?なんで?」

「それは、全くわからない…。しかし、もし政府の要請であれば、『LUNA』を出せと言われた時に出さないわけにもいかないかもしれない。」

「アンジェラ、どうする?」

「うーむ。まずは相手が誰なのか、何の目的で『LUNA』を探しているのかを確認する必要があるだろう。」

「あ、そうだ…いいこと考えついたよ。」

「ライル、なんだ…。」

「どうしてアンジェラの会社の人がアメリカの家の場所を教えたかは知らないけど…。

 違う場所、それも目立って、人がたくさんいる場所にわざと『LUNA』が出現しちゃうってのはどう?」

「まぁ、それもいい案だな。」

 そんなやり取りをしているうちに、日本の朝霧邸で見ていたテレビの中継に動きがあった。


 テレビのテロップに文字が流れ始めた。

『いよいよ真実が明らかに…。本物の天使は存在するのか?』

「え?ナニこれ?今更、プロモーションビデオの内容で騒ぎになっているの?」

「ライル、どうした?」

「あ、ちょっと待って。」

 僕は父様のスマホを借りて、テレビの画面を写真に撮り、アンジェラに送った。

「なんだ、これは?こんなやり方をして、一体どういうつもりだ…。」

「アンジェラ、僕、すぐに帰って『LUNA』に変化するよ。僕の役はニコラスに頼んでおいて。」

「どうするつもりだ?」

「まず、そっちに行ってから話す。」

 おろおろする父親の徠夢にスマホを返して、礼を言った。

「父様、ありがとう。知らせてくれて助かった。」

「あ、あぁ、大丈夫か?」

「大丈夫さ。いざとなったら、皆洗脳して帰すよ。非常識なのは今来ている奴らだから。」

「そうか…無理するなよ。」

 僕はそのまま朝霧邸を後にした。

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