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602. マリベル

 僕が封印の間のアズラィール像から出た時には、そこは本当に大変なことになっていた。

 マリアンジェラの体に入った核は、どうやら人の体をうまく扱えていない様だ。

 石座に座っていたのだが、うとうとと居眠りをしてしまい、ついには頭から大理石のような素材で出来ている床に頭を打ち付けてしまったのだ。

『ふえっ、ふえっ。いたいよ~、ママ~、パパ~…』

 声がもう掠れてしまっている。どんだけ前にぶつけてしまったのか、大きなこぶがおでこにできて、ひどいことになっている。

「あぁ…、マリー…可哀そうに…。」

 そう言って、僕がマリアンジェラの体を抱き上げた時、僕の体からマリアンジェラの本体が出てきた。

「マリベル…、もぉ…ほんとにだめね~。」

 そう言ってマリアンジェラはおでこのたんこぶに手を当て、自分で治癒させた。

「ぐすっ。ぐすっ。らって、もうねむたいんらもん。」

「わかった、わかった。もう帰るから。泣いたらブサイクだから、マリーのふりしてる時は泣くの我慢してよ。」

「ふ、ふぇぇ~ん。マリー、こわい。」

 自分で自分と仲たがいしているマリアンジェラを見て、僕はかなり混乱気味だ。

「マリー…どう言っていいかわかんないけど…、その核は使わない方がいいんじゃないか?」

「…うん。わかった。」

 意外に素直に返事をしたが、そういう時は、大抵言うことを聞かないときだ。

 それにしても気になる…。『マリベル』って呼んでなかったか?


 マリアンジェラはその場で体の中に入ると、自分の胸元から、白く輝くビー玉くらいの大きさの核を取り出した。確かに浄化してあるのだろう…黒くない。

 マリアンジェラはポケットに核をしまうと僕に向って『抱っこ』のポーズをした。

 全く…あざといというか、なんというか…。思わずぎゅっとしたくなる可愛さだ。

 まだ、鼻の頭が泣いたせいか赤い…。

 僕は思わず『クスッ』と笑って、マリアンジェラを抱き上げた。

 マリアンジェラが僕の首に腕を回し、しがみついてくる。

「どうした、マリー。」

「地球がなくなっちゃうのは、嫌なの。」

「わかってるよ。僕たちでどうにかしないとな。」

 マリアンジェラは無言で頷いた。


 僕たちはそのまま封印の間を後にした。僕の部屋のクローゼットに出た時に、いつもの出待ちをしているニコラスがいた。

「ちょっと、ライル。どうして大事な事ちゃんと言ってくれないんですか!」

「え?何?何かあったっけ?」

「アディに会いに行ったんですよね?」

「あ、あぁ、うん。」

「聞いてもらいたいことがあったんです。ほら、あのライルとマリーが透明になっちゃったのは、どうしてなのか、大天使様なら知ってるかと思ってですね…。」

「あ、ニコちゃん、それマリーが聞いたからダイジョブ。最終覚醒っていうんだって。

 神様になる人の体を作り変えるんだって。」

「え?か、神様になる人???」

 あれ?ニコラスには大天使達から僕が神になるように打診されている話をしていなかっただろうか?

「あ、あっ、そうだ、ニコラス。その話はまた今度な…。明日も学校だから、早く寝よう。

 ほら、マリー、手巻き寿司食べた後に、歯、磨いてないだろ?」

「みがいてにゃい。」

「一緒に磨きにいこうな。」

 僕はマリアンジェラを連れ、ニコラスからその話を切りだされるのを避けた。

 マリアンジェラと同じくらい、ニコラスは僕と一緒に居たがっているのを解っていたからだ。

 もし僕が神になったりして、地球上から消えたらニコラスはどうなってしまうだろうか…。

 なんだか想像をはるかに超える忙しい学校初日をようやく終えた僕だった.


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