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600. 神のみぞ知る(1)

 僕、ライルは、元々『小惑星アポフィス』が地球にかなり接近し、リリィの能力でその小惑星が月に衝突することを知ったわけだが…。前回会うことが出来た天文学者のレオーネ教授には、そのことを人々に、そして各国家での取り組みとなるよう仕向けてもらいたかった。

 その思惑はほぼ成功したと言っていいだろう。

 アメリカの航空宇宙局は、『小惑星アポフィス』の地球への急接近について、数年前に脅威ではないと発表したことを撤回し、何らかの力が加わり軌道が変わったため、地球に予想以上に近づくと正式に発表した。

 そして、航空宇宙局が、2022年に他の小惑星で実験したように、ロケットを打ち上げ、『アポフィス』に衝突させることで、人工的に軌道の変更を行おうというものだ。


 アンジェラはなぜか記者会見を見てから、妙な不安感を抱いている様だが、人間が持てる力を使って回避できるのであれば、それはそれですばらしいことだと思う。

 僕も懸念はしている、例えば、もう、ちょうど1年しかないのに果たして間に合うのかということは僕が感じている不安のひとつだ。


 秒速数十キロメートルもの速度の小惑星を、一体どの場所で、どのようにとらえることが出来るのか…。僕のような天文のド素人にはとてもじゃないが想像することさえ難しいレベルの問題だ。

 一人、脳内で思考を巡らしていると、ふと、アンジェラが言った言葉を思い出した。

『神にしかわからない』

 そうか…神にしかわからないのなら、神に聞けばいいではないか…。

 そう考えると、僕はいてもたってもいられなくなった。


 アメリカと時差があり、午後4時になる前にアメリカを出たが、イタリアはすっかり夜も更け、22時の少し前あたりだ。

 子供達は久しぶりのキンダーで動き回ったせいか、お腹の減り具合もすごいらしく、マリアンジェラはいつにも増して食べていた。

 どうやら調子は戻ってきたようだ。キンダーの帰りに軽かったのは、遊びまくってエネルギーを消費したからなのだろうか?

 珍しく、ミケーレもたくさん食べている。いや、エネルギーの消費のせいではなく、多分子供が好きな食べ物だからかもしれない。

 二人が食べていたのは手巻き寿司だった。ミケーレは巻くのが楽しいらしく、マリアンジェラがリクエストした具材で器用に手巻き寿司を作り、マリアンジェラのプレートにのせている。

 マリアンジェラはまるでわんこそばのように、『パクッ、パクッ』とリズムよく丸のみだ。

「マリー、喉つまらせたら困るから、少しは噛んで食べたら?」

「ほれらろ、もみまままい。」(それだとまにあわない)

 口に手巻き寿司を突っ込んだまま言い訳をしている。


 僕はそんな子供達を横目に、さっき思いついたことを実行しようと席を立った。

 そう、封印の間に行き、アズラィールの石像を経由して『神々の住む場所』を訪問しようと考えたのだ。

 一応2つほど手巻き寿司を作り、僕も自分の口に放り込んだ。

 少し前からだが、僕の味覚がすこしもどってきている。空腹感もだ。

 実際には僕の食べるという行為はやはり物質を体内でエネルギーとして確保しているのだろう。その証拠に、僕はリリィと分離し、体を持たない者になって以来、トイレに行っていない。行く必要がないのだ。


 僕はニコラスに『少し出かけてくる』とだけ言い、ダイニングルームを後にした。

 自分の部屋に一度戻り、クローゼット内に行き、上着を着た。ポケットにスマホを入れ封印の間へ転移をしようとしたその時、足に何かがへばりついた。

「わっ。」

 驚いて足の方を見ると、口から半分手巻きずしがはみ出ている状態のマリアンジェラが、僕の右足にしがみついていたのだった。

「まめ」

「え?まめ?」

 口の中の手巻きずしを慌ててごくんと飲み込んだマリアンジェラが、もう一度言い直した。

「ダメ」

「え?どうして?」

「一人で行っちゃダメ。ライルに何かあったら…マリー困る。」

 あぁ、今朝の夢で少し心配になっているんだろう…。

「うーん。でもさ、マリー…僕はアディとルシフェルの所へ行って聞きたいことがあるんだ。

 それに、こっちから行くときは、封印の間にある石像と同じ顔の人じゃないと通れないだろ?行っても封印の間までだよ。」

「だいじょうぶだもん。マリーも行ける。マリーだってアディに聞きたいことあるもん。」

 足にしがみついて、どうしたってついてきそうだ。

「じゃあ、マリー、アンジェラがいいって言ったら封印の間まで連れて行く。

 それでいいだろ?」

 不満そうではあったが、マリアンジェラは小さく頷いた。


 マリアンジェラはアンジェラを連れて僕の部屋のクローゼットに戻って来た。

「ライル、大天使達に会いに行くのか?」

「あ、うん。さっきアンジェラも神にしかわからないって言ってただろ?

 確かにそうだよ。あの絵本みたいに、この世界で起こる事を全部知ってるんじゃないかと思うんだ。そして、それを回避する策も…。」

「絵本…。そうだな。もしかしたら、絵本に変化が現れているかもしれんな。

 私はそっちを確認してみよう。」

 アンジェラは絵本の内容に変化がないか、僕は封印の間から『神々の住む場所』へ行くことで同意したのだ。マリアンジェラは僕と一緒に封印の間まで行くことでアンジェラは了承した。


 マリアンジェラは『ちょっと待って』と言って、走ってダイニングに戻ると、自分のプレートごと手巻きずしを持って来た。

「マリー、まだ食べてる途中だったのか?」

「えへへ…。」

 少し恥ずかしそうに笑うマリアンジェラを抱き上げ封印の間へ転移を行った。

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