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588. 石田刑事への恩返し(14)

 そこからは、石田刑事の推測と若林刑事の調査のおかげですぐに糸口が見えてきた。

 マリアンジェラが偶然見つけたそのネットの情報提供を呼び掛ける書き込みは、若林刑事の調べでは、やはり片桐雄大と遠藤真理恵の息子、当時三か月の赤ちゃんが死んでしまった事故だった。

 そして、その原因となった車は事故現場から逃走し、未だ犯人は不明のままだ。

 小さい赤ん坊用のベビーシートに乗せられていたが、運悪く車が転落し岩にぶつかった時にベビーシート側の衝撃が激しく外傷を負い亡くなったらしい。

 そして、その情報提供サイトに2つの動画を投稿した人物がいたようだ。

 すでに動画が削除されており、内容がわからなかったため、若林刑事は動画を投稿した人物にコンタクトを取った。

 すぐに返事が来て、直接会うことになり、詳細を知ったころには、すっかり外は暗くなっていた。


 動画を投稿した人物は、たまたま事故後にその場を通った人物で、事故現場にはすでに警察が来ていたのでそこは通り過ぎ、その先数キロ行ったところの大きな駐車場のあるレストランに立ち寄った際のドライブレコーダーの映像と、レストラン内で撮影した自分の子供が食べているところに映り込んだ数人の人物の動画だった。

 ドライブレコーダーには前方ライト部分が潰れた車を見ながら話している女性が二人写っていた。

 もう一つの動画にはレストランのドリンクバーでなにやらやり取りをしている女性が三人写っていた。その、三人の女性の一人が、なんと美幸さんだったのだ。


「美幸、この時の事を覚えているか?」

「あ、これ高校三年の時、友達の家族がキャンプに行くからって仲のいい子を誘ってくれて行った時の途中のレストランかも。」

「この話してる二人は知り合いか?」

「ううん。この人たちは『ドリンクの機械がおかしいから今押しても出ないよ』って教えてくれただけの全然知らない人だよ。」

 石田刑事はこの動画に映っている車と人物を調べるように若林刑事に急がせた。

「この人たちに他に連れはいたか?」

「えー、お父さん。さすがに覚えてないよぉ…。もう5年くらい前だし…。どこに座ってたかも覚えてないよ。」

 美幸さんが石田刑事の問いにそう答えた時、マリアンジェラがぽつりと言った。

「JKってこういう時にインスタにアップしたりするの?」

「あっ…。そう言えば、一緒に行った子二人がインスタやっててやたらと写真や動画を撮っていた気がする。」

「その子達の名前と連絡先を教えなさい。」

「あ、うん。」

 美幸は高校の同級生に連絡を取り、当時の映像などがアップされているインスタの動画を確認することができた。


 その動画には、二人の女性と共に食事をとる髪型が当時の美幸に似た女性が映っていた。

 どうやって調べたのかはわからないが、真理恵はこの二人の女性に行きつき、そして最後の一人を美幸だと勘違いしたのだろう。

 偶然居合わせた全くの別人を犯人と決めつけて殺そうとするなんて…。

 この情報を元に詳細な日付や事故後の犯人と思われる女性たちの行動を調べあげ、若林刑事主導の元、事実を明らかにして行ったのだった。


 僕たちは、解決に近づいたことを認識した時点で帰宅することとなった。

 マリアンジェラはどうしてか日本にもうちょっと滞在したがっていたが、僕はもう月曜から学校が始まってしまうため、そんなわがままは聞いていられない。

 それに、もう一つの世界の瑠璃リリィにこちらの状況を手紙で知らせ、もし共通点があるのなら捜査のヒントになるようにしてあげなければいけない。

「マリー。さあ、荷物は片付いた?」

「あ、うん。もう送った。」

「え?」

「おうちの洗濯室に送っちゃった。」

 どうやら物質転移で洗濯ものだけ送ってしまったらしい。

「マリー、アンジェラに怒られるよ~。」

 ニコラスが苦笑いでそう言うと、マリアンジェラはしれっと言い放った。

「ニコちゃん、マリーはね、今まで一回もパパに怒られたことなんかないんだよ。」

「確かに…見た事ないな…。マリーだけじゃなくて、誰にも怒ったの見た事ないかも…。」

「およ?そうかな…。徠夢じいちゃんには胸ぐら掴んで怒鳴ってたの見た事あるよ。」

「ぶっ。」

 飲んでた水を吹き出したのはニコラスである。

「ニコちゃん、きちゃない…。」

「あ、あとね。ママにも怒ってた。浮気だって言って。」

「それ、マリーはまだ生まれてない時の…。」

「ぐ…う、浮気ですか?」

 ニコラスがまた水を吹き出しそうになり、飲み込んだ後に言った。

「ははは、あれはアンジェラが過去の自分に嫉妬しただけだよ。」

「しょっか。パパ、へんてこりんだね。ふふ」

 そんなくだらない会話を楽しみながら、日本の午後10時頃、石田刑事達に挨拶をしてイタリアに帰ったのである。

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