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561. 石田刑事の願いごと(3)

 僕、ライルは、もう一つの世界の石田刑事との約束を守るため、もう一つの世界に来ている。

 今、石田刑事の娘さん、美幸さんが植物状態で眠る病院のベッドの脇で、石田刑事の希望である美幸さんの記憶を見て彼女をこんな状態にした犯人が誰かを特定する手助けをしようとしている。


 僕は目を瞑り、石田美幸さんの額に手を置いて早速記憶を見ようとした。

 その時だ、わずかに僕に流れ始めた彼女の記憶を見た瞬間、僕に異変が起きた。

「あ、ライル君、おでこが白く光っているよ。」

 僕を見ていた瑠璃リリィがそう言った。

 そう、それはミケーレの能力からコピーされた、予知の能力が発動した瞬間だった。

 目を開けると、僕を見つめる石田刑事の目が強張っている。

「石田さん、まだ少ししか記憶は見ていないんですけど、あなたにお願いしなければいけない事があります。」

「な、なんだい、ライル君。」

 僕は石田刑事の耳元で小さな声で言った。

「そこのキャビネットの横のコンセントに盗聴器が仕込まれています。外してください。」

 石田刑事は黙って頷くと、何もささっていないコンセントのカバーを外し、中にクリップで繋がれた盗聴器を発見した。

 刑事らしく、白い手袋で指紋をつけないようにその盗聴器を取り除いた石田刑事は唇に指をあて、何も話すなという仕草をした後、その盗聴器を持ったまま席を外した。

 すぐに戻って来た石田刑事は言った。

「車の中にさっきのは置いてきた。他にするべきことはないか?」

「では、10名以上の警察官、私服の警察官をすぐにこの病室付近と、この病室の中の…そうですね、トイレの中と、その空いてるベッドの脇に隠れさせて配置してください。」

「何故か、聞いていいかね。」

「石田さん、これから奇跡が起きて、あなたが探している犯人が、ここに娘さんを狙いにやってきます。」

「…。言っていることがよくわからないんだが…。」

「まぁ、見ていて下さい。」

 そう言うと、僕はまた手を美幸さんの額に当て、目を瞑った。


 僕は、意識のない植物状態の石田刑事の娘、美幸さんの記憶を詳細に読み取っている時、僕はなんとも言いようのない悲しみと苦しみと、そして無念の気持ちを感じた。

 僕の目から涙が流れた。

 石田刑事はそれを見て、『これで自分の娘が植物状態になり、今死の淵にいるが、犯人の名前は聞くことが出来る。俺が犯人を捕まえ、お前の恨みを晴らしてやるからな。』と心に誓ったのだ。

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