553. ミケーレと天使のブロンズ像(1)
午前11時頃、自室に戻り、ニコラスとマリアンジェラと僕の3人でボードゲームなどをして過ごした後、昼食の時間だったのでマリアンジェラと一緒にダイニングへ移動した。
「うっひょ~。今日はピッツァだ~。」
マリアンジェラの歓喜する声が家中に響き渡る。
まだ焼いていないピッツァが6種類もテーブルの上に並んでいる。
すでに2枚がオーブンの中で焼かれているようだ。焼けたらまた2枚投入する予定のようだ。
もう席に座ってフォークを構えているのはジュリアーノとライアンだ。
「ペコペコ~」
「パパドーレ、まだぁ?」
オーブンを覗き込むアンドレに双子が煽っている。
「おっ、焼けたぞ。熱いから気をつけなさい。」
焼けた大きなピッツァ二枚をダイニングテーブルの上に置き、ピザカッターで切れ目をつけて双子に取り分けている。
そして、次のピッツァをオーブンに投入している。最近ではアンジェラを見習って、アンドレも少しずつ家事を手伝っているのだ。
「えらいな、アンドレ。子供の世話とかちゃんとやってて…。」
僕の言葉にアンドレは少し照れながらも言った。
「マリーとミケーレの時もそうだったが、子育ては楽しいよ。あ、ほらほらジュリアーノ…フーフーしてから食べなさい。」
ちゃんとパパやってるアンドレに感心しながら、僕も取り皿をマリアンジェラの前に置いたりして多少手伝う。食べる気満々だったくせに、マリアンジェラは急にニコラスとリリィにも知らせてくると言って走って行った。
少ししてマリアンジェラが戻ってくると、うしろからミケーレとリリィとニコラスとアンジェラも入ってきた。
早速、食べ始めるマリアンジェラとミケーレ…。
そこにリリアナが大きな皿を持って転移してきた。
「カルパッチョ、テイクアウトしてきた。徠央の作った新作スィーツももらってきた。うふふ。」
徠神の店で作ってもらったのを取りに行っていたらしい。以前からそうだったが、リリアナは僕やリリィより朝霧の家や徠神達との距離が近い気がする。
「あと、これお供えしてくれって。早く、『祭壇』を店に作ってくれって言ってたよ。」
リリアナが小さいテイクアウト用の箱に入ったケーキを冷蔵庫に入れた。
アンジェラが少し困った顔をして言った。
「前回、安易に店の外の天使像の前にお供えしておけと言ったんだが、それは微妙だと言われてな…。どうしたものか…。」
「アンジェラ、お店の中に置けるくらいのカッコいいやつ作ってあげたら?」
「ライル、おまえずいぶんと簡単に言うな。私は絵は描くが、ブロンズ像などを作成するのは得意ではないのだ。」
「アンジェラ、お城のブロンズ像の複製を作ってもらえばいいんじゃないの?」
そう言ったのはリリィだ。
「複製か…。」
「型かなんかを取って、そういうのやってくれるプロとかいるんじゃない?」
「そうだな…それだったらユートレア城の天使像を複製してもらって、渡せばいいかもしれないな。」
「うふふ。それ、賛成。建物の外側はそっくりなんだし、中の物も同じ方が統一感あっていいじゃない?」
確かに、現在のユートレア城の中にはあちこちに天使のブロンズ像がある。
そこでミケーレがアンジェラに質問をした。
「ねぇ、パパ。ブロンズ像って簡単に作れるの?」
「簡単ではないが、粘土で作った像の型を石膏で作ってから何度も型を取ったり、違う材料を入れて、最後に金属を流し込むんだ。」
「ふぅ~ん。ぼくね、粘土で何か作るの得意だよ。」
「ほぉ、そうか…。何か作ってみたいのか?」
「うん。ママの天使像。それと、パパのも。」
「ミケーレ、色々なことに興味を持つことは素晴らしいことだ。じゃあ、私がアトリエに材料を用意してあげるから、作ってみるか?」
「え、いいの?」
「大きなものを作るつもりなら骨組みも必要だからな、下準備は私がしてあげよう。
ただし、途中で投げ出さないと約束出来たらだ。どうする、ミケーレ。」
「ぼく…時間かかってもやってみたい。」
アンジェラは自分と同じように芸術に興味を持つミケーレを好ましく思っていた。
少し、この年齢の子供に等身大の物を作るのは大変だろうとは思ったが、何でもやらせてあげたいという気持ちが強かった。
その日の午後、アトリエはつい立で半分に仕切られ、アンジェラはすぐに作業場と材料を用意したのだった。




