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547. やらかしマリーとニコラスの実験

 午後の時間もあっという間に終わり、午後2時半のキンダーのピックアップの時間になった。ニコラスは急いで図書館のボランティアを終わらせ、足早にキンダーのお迎えに向かう。

「つい、没頭してしまって…。急がないと…じゃ、失礼します。」

 チャーリーにそう声をかけて図書館を出た。出たところで、ライルが待っていた。

「ニコラス、姿が見えたからここで待っていたんだよ。もうキンダーのお迎えに行く時間だろ?」

「そうなんだよ…すっかり時間を忘れて没頭してしまって…。スマホのアラームをかけておいてよかった。」

「急ごう。」

 そう言って、カフェテリアを抜け、幼稚園の方の校舎へ急いだ。


 お迎えの保護者が数組いたが、まだ子供たちは全員出て来てはいない様だ。

 その時、少し離れたところから悲鳴が聞こえた。

「きゃー、下りて来なさい。危ないから、今すぐ下りて来なさい。」

 大声で騒ぐキンダーの先生の視線の先には…結構な高さの木のてっぺんに登っているサル?ではなく、うちのマリアンジェラがいた。

「はぁ~…登園二日目にして、やらかしてくれた。」

 これは、僕、ライルの素直な感想である。

 それに比べマリアンジェラのその辺りをよく知らないニコラスは大慌てだ。

「わぁぁぁぁ…、ど、どうしよう。ライル、大変だ…。」

「ニコラス…放っておいても大丈夫だよ。マリーの身体能力はすごいんだよ。

 それに落ちても、多分、平気な顔で着地すると思う。」

「で、でも…。」

 不安そうな顔をするニコラスに、僕はなだめるように背中をさすり、耳元で呟いた。

「ちょっと見てて。」

「え?」


 僕はマリアンジェラに向かって少し大きい声で言った。

「マリー、帰りにスーパーでイチゴのアイスを買ってあげようと思ったけど、木登りするような悪い子には食べさせないよ。30秒以内に下りておいで。」

 周りの保護者や、先生方はその言葉を聞いてぎょっとしている。

 当のマリアンジェラはこちらを伺っていたが、その言葉を聞いた3秒後には飛び降りていた。下りた瞬間、あちこちから悲鳴が聞こえたが、皆さんの期待を裏切って、マリアンジェラはきれいに両足で『トスッ』と軽く着地すると、僕の所に駆け寄ってきた。

「ライル…ごめんちゃい。アイス…マリーも食べたいよぉ。」

「マリー、ここは家じゃないんだから、高いところに登ったり、誰かにぶつかったりしちゃダメだよ。いい?わかった?」

「あい。」

「じゃあ、反省して、もうやらないって約束したら、キャラメル味のアイスも買ってあげるから、みなさんにもごめんなさいして。」

 僕が言うと、周りにいる人の方を向いて、マリアンジェラはお辞儀をして言った。

「おさわがせしちゃって、ごめんちゃい。」

「すみません。もう登らないように約束させましたので…。」

 周りは、不思議そうな、納得いかない様子ではあったが、大事おおごとにはならず、皆解散して行った。

「で、マリーはなんで木の上になんか登ってたんだ?」

「これ…」

 マリアンジェラは両手に数枚の枯れ葉と小枝を持っていた。

 どうやら、雪だるまの顔を完成させたかったようだ。

 人前で『転移』をするな、とは言って聞かせてあったけど、木に登るなとは言ってなかったな…なんて心の中で思いつつ、マリアンジェラを抱き上げて雪だるまの所へ移動した。

「ほら、顔を作ってあげて。アイス買いに行くから、早くね。」

 マリアンジェラを下ろすと、ついてきていたミケーレに葉っぱと枝を半分渡し、マリアンジェラが雪だるまの顔をミケーレに作ってとお願いしている。

 マリアンジェラは腕とボタンに見立てて枝と葉っぱをくっつけた。

 ミケーレが眉毛がキリッと凛々しい雪だるまの顔を作った。

「あはは、アンドレみたい。」

 マリアンジェラが笑うと、ニコラスとミケーレも、『ほんとだ』と言って笑った。


 僕たちは結局4種類ものアイスを大きなボックスで学園の隣の敷地にあるショッピングモールで購入し、アメリカの家に徒歩で帰った。


 イタリアの家に帰ってから、すぐに夕食の時間で、食事をしながらそのことをアンジェラに報告した。

 アンジェラは終始表情を変えず聞いていたが、どんな状況かよくわからないと言うので、記憶の譲渡でその状況を見せた。

 そしたら、あろうことか、マリアンジェラを褒めやがった。

「マリー、さすがだな。能力を使わずに、そんなことが出来るなんて、いつも驚かされるよ。」

「おいおい、そこは褒めちゃだめだろう…。」

 ニコラスが慌てて口を挟むが、アンジェラは少し笑みを浮かべて言った。

「うちの子は褒めて伸びるタイプだからな。」

 うっへ~、親ばかもここまで来たらあきれて何も言えない。

 そんなこんなでお騒がせな一日は終わるのであった。


 その後、ニコラスは風呂に入り、パジャマに着替え、ベッドの上で何か考え事をしている風だった。

 僕は、今日、ニコラスが送ってきた『本を修理』しているところを撮影したビデオの事を思い出し、聞いた。

「ニコラス、あのビデオ見たよ。すごいな…。僕にもできるかなぁ?」

 僕は他の人の能力をコピーする能力を有している。その人に触れば何でもコピーできるはずだ。

「ライル、試してみようか。」

「そうだな。」

「あ、じゃあさ、アンジェラに何か壊れたもの借りてこようよ。」

「そうだな、どうせなら直したいものの方がいいよね。」


 僕とニコラスは書斎で仕事中のアンジェラを訪ねた。

「アンジェラ、何か修理したいようなもので、パーツがないとかで叶わないものとかあったら貸してくれないか?なるべくたくさん。」

 ニコラスが言うと、アンジェラは少し嬉しそうに言った。

「試してみるのか?」

「うん。何が直せて、何がだめなのかっていうのをね、調べてみたいんだ。」

 アンジェラは書斎の書棚の奥にある隠し金庫を開けると、どうみてもガラクタの入っている箱を出してきた。

「捨てなくてよかった。」

 アンジェラは期待に胸を膨らませていた。

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