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545. 翼が無いと天使じゃないの?

 僕、ライルは、自宅で午前中の空いた時間を利用して試験勉強をしていた。

 自室のベッドの横に置かれたデスクに向かい、講義でとったノートを読み返す。

 まぁ、そうだな…ありがたい能力なのか、一度見たり聞いたりしたことは脳内に動画のように再生される。理解して目を通しておけば、模範解答を書くことができるだろう。


 それよりも気になる事がある。僕の横で、ベッドでスヤスヤと眠る奴らがいる。

 マリアンジェラとニコラスだ。

 最初はマリアンジェラが、僕の勉強しているのを見ていたのだが、昨日キンダーの初日で疲れたのと、時差のせいもあって、あっという間に寝てしまった。

 昼食まで1時間ほどだが、少し寝かせてやろうと思い、静かにそのままにしておいたら、髪を乾かし終わったニコラスが、同じくベッドに横たわって、マリアンジェラを観察し始めたのだ。しかし、ニコラスも時差のせいで少し寝不足だったらしく、あっという間にスースーいって寝ている。

 二人とも可愛いものだ。まるで年の離れた兄妹のようにも見える。

 ニコラスが僕の部屋に来て一か月ほどが経ったが、その間、ニコラスはものすごい変貌を遂げた。

 何が変わったか…それは、見た目だ。まず、身長が伸びた。

 最初、僕が着ていた服を着ると少し大きめに感じたが、今はぴったりだ。

 そして、元々は司教という仕事柄、髪は短めだったのだが、それをやめてからは少し耳にかかるくらいの髪型だった。それが、ここに来た時の状態だ。

 ところが、この一か月で、あっという間に肩よりも長くなり、僕より少し短い位になった。まるで、僕に似せてるかのように…。

 もしかしたら、彼の能力なのかもしれない。名前を付けるなら『擬態』とでも言うのだろうか…。もちろん、僕にしか似ていないけど…。

 髪の色が少し僕の方が薄い気がするけど、もしかしたら、どっちがどっちかわからない人もいるかもしれない。


 マリアンジェラが目を覚ました様だ。

「うおっ。」

 そう言って、後ろに下がり、ベッドから落ちそうになった。

「マリー、大丈夫か?」

 手を添えながら思わず声をかけた僕を見上げて、ホッとした顔でマリアンジェラが言った。

「悪い夢かと思った。」

「どうしてそう思ったんだ?」

「ライルが天使じゃなくなったって思った。」

 僕は苦笑いしてマリアンジェラの顔を覗き込んだ。

「いっそ天使じゃなければ、違う人生だったんだろうね。」

 マリアンジェラはジワッと涙を溜めながら言った。

「天使じゃないライルは存在しないんだよ。」

「ごめん。マリー、泣かせるつもりじゃなかったんだ。もちろん、今となっては、もし能力が使えないと、とんでもなく何もできない人になっちゃうから、イヤだよ。」

 そう言って、マリアンジェラを膝にのせて頭をなでた。

「あの…話中断して悪いんだけど…。」

 そう言ったのはニコラスだ。目が覚めちゃったらしい。

「私は天使じゃないってこと?」

 マリアンジェラが自分の口を手で押さえた。こいつ、何か知ってるな…。

「マリー、教えておくれよ。気になるだろ?」

「うーん。マリーにもよくはわかんないんだけどぉ。」

 そう言って渋々話し始めたマリアンジェラの話によると、最初に覚醒した時に翼が与えられた者と、翼ではない能力を与えられた者には違いがあると感じるのだと言う。

 翼がある者は能力が一つだけではなく、何かのきっかけで、何度も覚醒していくこともあるが、翼が無い場合は多くても二つの能力で限界を迎える。

「でも、マリー…僕は、過去を変える前、最初に翼が出たわけじゃないよ。」

 僕が言うと、少し首を傾げて言った。

「ライルは少し変わった能力だからそうなったんじゃない?それか、最初から翼を持っていたけど、翼が出るきっかけが無かったとか…。」

「あ、ニコちゃんも天使ではあるのよ。すごい能力も持ってるし。使ってないみたいだけどね。」

「え?私の能力ですか?あのすごく精度の悪い未来を予測する力…。ははは」

 自虐的に笑ったニコラスに、僕とマリアンジェラが同時に言った。

「「ニコラス…覚えてないの?」」

 ニコラスは、数日前に赤ちゃんニコラスがオスカー王のズタボロになった鎧を『ピカピカになあれ』と言って直したことを覚えていなかったのだ。

 暗示をかけて15歳まで能力を使えないようにしていたことも影響したのかもしれない。


 僕はニコラスに言った。

「ニコラスの物を直す能力はすごいよ。一度試してみたらいいと思う。」

「はぁ…。そういえば、今までそういう能力が必要だったことが一度もないのかもしれません。」

 もし、ニコラスにそんな能力があるなら、この前赤ちゃんニコラスを触った僕にもその能力がコピーされていてもおかしくないのに…と思った。

「確かに、使うきっかけがない能力ではあるな。」

「そうですね。」

「もしかしたらニコラスも僕たちに影響されて翼が出るかもしれないしね。」

「それ、すごく憧れます。自分で飛んでみたい。」

 ニコラスは瞳をキラキラさせてそう言った。


 その後、アンジェラが昼食の用意が出来たと呼びに来て、軽めの昼食を食べ、午後1時には昨日と同様、アメリカの家に四人で転移して登校したのだった。

 この日、変化著しいニコラスが、能力を発揮することになる。


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