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543. 絵本Galaxy(2)

 皆でアンジェラの書斎に集まって、新たに手に入れた絵本を確認する作業が始まった。

 表紙は艶のある濃紺のハードカバーで銀色の文字で『Galaxy』と書かれたその絵本は、表紙の絵がライルの『核』にそっくりの七色の球体で、周囲が炎のようにゆらゆらと立ち上るような絵だ。


 アンジェラは慎重に最初のページを開いた。真っ白なページだ。何も描かれていない。

 アンジェラはページを触った。裏表紙に描かれている金色の天使の翼をデフォルメした様な絵が浮かび上がった。

 マリアンジェラも手だけ出して、ペタペタ触った。しかし何も起きない。

 ミケーレもそのページに触った。すると文字が浮き出てきた。

『Galaxy』あまり大きくない黒い文字で書かれている。

「およ…。」

 マリアンジェラがミケーレを見て苦笑いをした。以前も試したが、絵本はミケーレとアンジェラに反応することが多いのだ。

 次のページをめくるとやはり白紙のページだ。

 ミケーレがアンジェラを見つめた。アンジェラが黙って頷いた。

 ミケーレがそっと左のページを触り、少し待つと…。真っ白いページのその中央には文字が浮き出た。

『新しい銀河ができる時』

 そしてその下に紺色の楕円が現れ、そのところどころに星のように白いものが現れた。

 次に右のぺージを触ると文字と絵が浮き出てきた。

『それは、新しい神が生まれる時』

 そう文字が出た下に、小さな球体が描かれている。七色の球体だ。

「あ、表紙と同じだねぇ。」

 リリィが言った。

「そうだな…。」

 アンジェラが念のため、そのページ全体を触った。蔦の様な柄の文字を囲む金色のフレームが浮き上がった。

「なんかかっこいいね。」

「あぁ。」

 アンジェラは左右のページをそれぞれスマホで写真を撮った。


 アンジェラはページをめくる。やはり何も描かれていない。

「アンドレ、触ってみてくれ。」

 アンドレはそっと絵本に触った。

 パッとページ全体が紺色に染まった。そして、二つの球体が浮かび上がってきた。

「わあっ、アンドレもできたね。」

 ミケーレが目を大きく見開いて言った。次はミケーレが触る。紺色の部分に白抜きで文字が浮きあがった。

『神は二人で一つの銀河を造る』

 右のページには文字だけが浮き上がる。

『光の源と命の源』

 さっき浮き上がってきた二つの球体に模様が浮かび上がる。

 大きめの球には七色の模様、もう一つには白っぽい黄色だ。


 そこで、ニコラスがいきなりページをめくろうとするアンジェラを止めた。

「アンジェラ…この絵本って、君たちが言ってた絵本と同じように今内容がどんどん変わってるんだよね?」

「あぁ、間違いない。」

「これ、ここに出てきたことがこの後現実になってしまうっていう事なのかな?」

「うむ。これらの絵本に描かれていることが現実になる…と言うよりも…。ヒントを与えてくれる、というべきかな。あとは、正しい解決方法に導くとか…。」

「アンジェラ…私はなんだかこの絵本を見て、今とても不安になっているんだよ。

 まるで、ライルは神になり、私達の前からいなくなって、別の次元に行ってしまいそうだと思わないか。」

 ニコラス意外が『そんなバカな…』と口々に言ったが、ライルは口を開かなかった。

『神の住む場所』でアズラィールが言った言葉を思い出したのである。

『新たな神を指名する』確かそう聞いた。アンジェラもマリアンジェラもそれに気づいたのだ。この絵本は、そのことを意味しているのか?

 アンジェラも少し怖くなってきた。

「少し、疲れたな…。あとのページは、また明日以降にしないか?な?」

 アンジェラはそう言ってすでに絵の出たページの写真だけ撮ると絵本を封筒に入れ、引き出しに入しまったのだ。

 確かにニコラスの言う通りだ。この絵本の通りになればライルが私達の元からいなくなることが現実として起こり得る。

 アンジェラは急に変な喪失感が心に押し寄せてくるのを感じたのだった。


 なんとなく重い雰囲気のまま解散することになり、アンジェラの書斎から出ることになったが、ミケーレは不完全燃焼状態だ。

 もっと白紙のページが埋まるようにしたい。ミケーレはそう思っていた。

 皆が解散していなくなった後のアンジェラの書斎に引き返したミケーレは、アンジェラに言った。

「パパ、途中で白くなってた他の絵本を見てみてもいい?」

 暫くの間ミケーレに絵本を自由に触らせていたアンジェラだったが、絵本の重要さに気づいてからは、鍵のかかる隠し金庫の中にしまい込んでいる。

「そうだな…。この書斎の中で、私がいる時にだけという条件なら許そう。

 一人で何かトラブルに巻き込まれても困るからな。それと、キンダーがあるから、そういうのは週末だけということにしよう。」

「うん。パパ、ありがと。」

「ミケーレ、ほら、早く行動しないと、時間はどんどん無くなるぞ。温室に行ってピッコリーノの世話をして来なさい。」

「うん。行って来る。」


 キンダーへの登園が始まり、今までとは生活する時間が少しずつ変化していく。

 アンジェラは、限られた時間の中で、子供たちが有意義に過ごせるよう、子供達にも自発的に何かをするきっかけを作っていく方法を思考錯誤するのであった。


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