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542. 絵本Galaxy(1)

 2月2日、水曜日、朝7時。

 いつもより1時間遅く、子供たちが起きてきた。

 僕、ライルは変な時間に起きてしまったので、自分の部屋のデスクで読書をしていた。

 ベッドの中がモゾモゾして、ガザゴソと這い出してきたのはマリアンジェラだ。

 気づいたニコラスが驚いて声をあげた。

「うわっ…マリー、その出方、やめておくれよ。私は寿命が縮むかと思ったよ。」

 ニコラスの反応にちょっとにやけてマリアンジェラが返した。

「にゃはは。」

 顔を洗って着替え、朝食に向かうと。アンジェラがすっかり準備を終えた朝食を並べたダイニングテーブルに座って皆を待っていた。

「さすがに疲れたのか。いつもより遅いな。」

「あ、すみません。少し筋肉痛で…。」

 ニコラスは立ったりしゃがんだりの動きが筋肉痛を起こしたようで、ちょっと起きる時に辛かったようだ。

 リリアナとアンドレも双子を連れてきた。

 朝からハイテンションでダイニングテーブルに置かれたベビーチェアによじ登っている。

「もーにん、パパあんじぇ」

「あぁ、おはようジュリアーノ。あいさつが上手になったな。」

 にへっと笑ってフォークを持ってアンジェラが取り分けてくれるのを待っている。

「おはようごじゃいます。パパアンジェラ。」

「おはよう。ライアンも丁寧でいい挨拶だな。」

 そう言ってアンジェラは二人の皿にマカロニチーズとブロッコリーとベーコン、ミニトマトとウインナーを取り分けた。そこにミケーレが少し遅れてきた。

「ミケーレ、リリィはどうした?」

「あと15分寝かせてって言ってた。」

「そうか…。」

 どうやらお腹が重くて、動き回るのが面倒らしい。

 マリアンジェラはとっくに一回目を食べ終わって、おかわりを黙って待っている。

 アンジェラはまるで流れ作業のように皆の皿に朝食を取り分けている。

 ミケーレは、自分の皿に盛られたブロッコリーをそっとアンドレの皿にのせた。

「ミケーレ、ブロッコリーを食べないと大きくなれないぞ。」

 そう言ったのはニコラスだ。意外な発言。今まで、アンジェラはそういう事は一切言わなかった。ぬるい父親である。

「え?そうなの?大きくなれないの?」

「そうだよ。ほら、アンジェラを見てごらん。いつもミケーレの分までブロッコリーを食べているからこんなに大きくなっただろ?」

「あ…でも、ぼくそんなには大きくならなくていいから…。」

 としれっと拒絶した。ニコラスはそれを見て苦笑いだ。

 結局、リリアナに1つだけブロッコリーを口にねじ込まれ、仕方なく食べたミケーレだった。

「口の中が森になったみたい…。」

 とりあえず、文句を言う。


 30分ほど経ち、ようやくリリィが登場…。出産まで三か月もあるというのに、お腹はパンパンだ。そして、ヤバいくらいいっぱい食べている。

 マリアンジェラよりは一口が小さく、もぐもぐしているのが遅くて小動物みたいだが、ずーっと途切れず食べ続けるのだ。

「リリィ、大丈夫?なんかすごい食べてるけど。」

「あ、うん。何か食べてないとエネルギー切れで動けなくなりそうなんだ。」

 どうやらベッドでもパンやお菓子を食べているらしい。

 大量にあったマカロニチーズもほぼ完食だ。

 朝食が終わりそうな頃、アンジェラは僕たちのランチ用のサンドウィッチを作り始めた。ソフトフランスパンにマヨネーズを塗りスモークサーモンとチーズ、トマトをスライスした物を挟んだサンドウィッチだ。

 マリアンジェラがいうには、これが、ヤバいくらいうまいらしい。

「ニコラスの分も入れておくぞ。」

「あ、ありがとうございます。」

 ニコラスは自分も学校に通っているみたいで少しうれしかった。

「さて、食べ終わったら、皆で絵本を見てみよう。書斎で待っているぞ。」

「あーい」

 呼ばれていないジュリアーノが返事をした。皆、大笑いだ。


 朝食を終え、歯を磨いてから、皆でアンジェラの書斎に集まった。

 双子は乳母に任せて、それ以外で集まった。

 アンジェラは引き出しから例の学園の封筒を出し、デスクの上に置いた。

 封はされておらず、中が見える。滑り出すように絵本を出した。

 裏表紙が上になった状態で出てきた。

 濃紺の艶のある硬い、いわゆるハードカバーというやつだ。

 その真ん中に控えめに金色の天使の翼がデフォルメされて描かれている。

「おぉ…他にもありましたね、この翼の描かれている本…。」

「あぁ、あったな。」

 アンジェラは絵本を表紙が上にくるようにひっくり返した。

「あっ…。」

 リリィが大きい声を出した。マリアンジェラが続いて言った。

「これ、ライルの核にそっくりでしょ?」

 そう言うと、マリアンジェラは絵本の表紙をなでなでした。すると、その核の絵がゆらゆら揺れているように動いたのである。

「動いてない?」

 ミケーレが言った。その表紙いっぱいに描かれた丸い天体の絵は、少しずつ変化しているように見えたのだ。そして、その周りもまるで太陽の周りの炎のように揺らいでいた。

「Galaxyってどういう意味?」

 ミケーレがアンジェラに聞いた。

「『銀河』という意味だ。星がたくさん集まって、星同士が重力で引かれ合って、同じ場所に固定されている、そんな天体の一塊という感じか…。」

 アンジェラは、スマホを手に取り、写真と動画を撮った。動いているところも残しておきたいと思ったのだ。

 そして、いよいよページをめくる。




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