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525. 過去からの訪問者(11)

 マリアンジェラが次に行く場所をアンジェラに聞いた時、VIPルームのドアが開いた。

「あ、マリーも来てたのか。これ、祭壇にお供えするのに、持って行って。

 って、おいおい。お客さんもいたのか…。」

 いきなり覗いて話しかけてきたのは徠神である。身内しかいないこのVIPルームに見知らぬ人がいて驚いたのだ。

「兄上、こちらはアンドレとニコラスのご両親だ。」

「え?ユートレアの王様と王妃様?は、はじめまして…。」

 王と王妃はニコラスに似ているが、髪を長髪にして後ろで束ねて少し日焼けしてワイルドな感じの徠神に少しビビっている。

「こ、こちらこそ、急にお邪魔してすまない。アンジェラ殿の兄上とな…。」

「あ、あぁそうです。徠神と言います。」

「おじちゃん、私達もう次行くから、また今度ね。」

「おう。気をつけてな。」

 そう言って、徠神はドアを閉めた。『ひぇ~、なんで王様を連れて来てるんだよ。ビビった~。』これは徠神の心の声である。


「マリー、次はフランスのシャトー・ド・エールダンジュで食事をしようと思ってるんだ。」

「うっひょ、やったー。久しぶりのフレンチ。」

 マリアンジェラは気がはやったのか、何も合図もなしにいきなり物質転移でその場にいた全員をフランスのシャトーホテルのスィートルームに転移した。

「うわぁぁ…。」

「な、なんだ…。」

 ニコラスとオスカー王が慌てて身構える。

「あ、ごめんちゃい。早く食べたくて急いじゃった。マリー、このお供えを下の階の祭壇に置いてくるね。」

 ダダダッと走って徠神に渡されたラビオリと新作スィーツをトレーにのせたまま走り去った。ここは古城を買い取って少し手を加えてあるホテルなのだが、1階のホールがレストランになっておりそれ以外の部屋は、割と購入時のまま手入れをして使っている。

 ホールの脇にとても小さいながらも十字架や天井画が美しい聖堂が用意されているのだ。マリアンジェラは祭壇にお供えものを置いた。

『フワッ』と花の香りがして、違う空間との繋がりを一瞬感じた時、目の前の新作スィーツとラビオリの皿が消えた。そしてまた一瞬後に皿だけ戻って来た。

「わぁお。こうなるのか…。」

 マリアンジェラはトレーを手に取ると物質転移で徠神の店のVIPルームに移動させた。


 聖堂からマリアンジェラが出ると、アンジェラ達が上階からエレベーターで下りて来たところだった。

「パパ、しゅっごいよ。お皿が消えて、中身だけ無くなって、また戻って来た。」

「ほぉ、本当に食べているとは思わなかったな。」

「あれ、全部世界中でお供えされたものだったんだね。」

「そうなんだろうな…。」

 レストランの入り口まで行くと、レストランの従業員とホテルの支配人が並んでお出迎えをしてくれた。

「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ。」

 アンジェラが先頭で他の皆が続いた。少し大きめのテーブルに6名で座り、レストランのおすすめを出してもらうようにアンジェラが指示をした。

 昨日飲んだワインよりも軽めのスパークリングワインが出され、料理も次々運ばれてきた。

 マリアンジェラは自分の分だけでは足らず、ガンガンおかわりを持って来させている。

「マリアンジェラ殿は、胃袋も規格外なんですかな。」

 オスカー王が楽しそうに言った。マリアンジェラはすました顔で言った。

「ママがね、マリーはパワーを蓄えるためにいっぱい食べてるって教えてくれたもん。」

 確かに、大技を使うと体が軽くなるのはアンジェラも知っていた。

「そうだな、たくさん食べないとパワー不足になるかもしれないな。」

「そう、それよ。」

 ドヤ顔で追加注文するマリアンジェラを見て、アンジェラも顔が笑い顔になっている。

 今日訪れた万里の長城の景色などについて話が弾み、あっという間に1時間半ほど経った。


「パパ、次はどこに行くの?」

「そうだな、一度ユートレア城に行ってみるか?」

 シャトー・ド・エールダンジュのスィートルームに戻ってから、マリアンジェラの能力で皆一度に転移した。現在のユートレア城だ。

 王の間に出たアンジェラ達は、謁見の間に移動した。

 大きなグランドピアノがドンと真ん中に置いてある以外は昔とさほど変わっていないが、隅々まで清掃が行き届き、暖房も入っており快適だ。

「ここには誰も住んでいないのか?」

「そうですね、現在はたまに王の間にアンジェラとリリィが来ているくらいで…。」

 そう言ったのはアンドレだ。

「お、おい。お前たちだってたまには来ているではないか。」

 アンジェラはアンドレに突っ込みを入れた。

 二人で顔を赤くしている。

「で、なぜ住んでいないのだ?」

「私がここの城の城主になったのは今から90年以上前のことです。

 その時、私はオペラの舞台で役者をしておりました。その時に火災が起き、たくさんの観客が死にかけたのです。しかし、私を救うために劇場に天使が現れ、火災を嵐で消したのです。その時に観客の中にあなたの子孫がいたのです。そして、その方は私にこう教えてくれました。昔、はるか何百年も前に、天使に心酔し天使を探し求めた王子がいたと、その城はその王子のために遺されたが、王子は戻って来なかった。その王子の肖像画に私が瓜二つだというのです。王族の命を助けた礼にとその城を譲り受けました。私がここに住んでいないのは、元々現在の家があったからです。」

「なんと、偶然だというのか、この城の城主になったことが…。」

「はい。私もリリィと結婚し、リリィが時空を超えられるようになって初めて500年前のユートレアに行きました。まさか、本当にこんなに似ているとは思いませんでしたが…。」

 アンジェラはアンドレの方を見た。アンドレもアンジェラを見て二人で『プッ』と笑った。

「でも終わりではありませんでした。私たちはアンドレの双子の弟、ニコラスの子孫だとその後判明したのです。」

「まさか、また直系の子孫の手に戻るとはな…。」

「オスカー王、縁とは不思議なものです。そして、この城は私達家族にとっては大切な空間であることは間違いありません。」

「ライルが家出するときに、よくここに来てるみたいだよ。」

 マリアンジェラが突然、爆弾発言をした。

「家出…。」

「あぁ、彼は思い詰めるタイプなのだよ。賢すぎるのか、小さい時から全部自分で背負い込んでしまっていたから…。」

 アンジェラは補足した。


 ここで、マリアンジェラが思い付きで発言した。

「あ、おうちゃまとおきさきちゃまは封印の間に行ったことないの?」

「マリアンジェラ殿、それはなんですか?」

 王妃が聞いた。

「えっと…何だろ…天使の部屋?」

「マリー、二人は核を持っていないのだぞ。」

「見るだけなら平気じゃないの?」

 二人が興味を持ってしまったので、封印の間に入ることになった。

「じゃあ、行くけど。絶対石像に触んないでね。変なところに飛んじゃうらしいから。」

 王と王妃はギョッとした顔をした。次の瞬間、6人は封印の間の中にいた。

 しかし、そこでは非常事態が起こっていた。

「あぁっ、アディの色が変になってる。」

 大天使アズラィールの石像が乳白色から錆のような色に変色していた。

 マリアンジェラが石像に触れた。すると石像は目を開いて言ったのだ。

「ライルを今すぐここに…。」

 石像がしゃべった。

「え?どういうこと…ねぇ?」

 マリアンジェラが聞いても、石像はもう返事をしなかった。

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