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519. 過去からの訪問者(5)

 僕、ライルは、ちょっとニコラスが可哀そうで涙腺が緩くなり、それを隠すために変なところに力を入れて涙を我慢したところで、上位覚醒したプラチナブロンドの髪色と翼が飛び出すというアクシデントに見舞われた。

 それが恥ずかしくて、自室のベッドの中に転移して、今まさしくブランケットを被り、自分の状態を落ち着けているところだ。髪色を元に戻し、翼も引っ込めた。

 ふぅ…目を瞑ったまま平常心を心がける。はぁ…もう大丈夫かな…。そんな時、ベッドの中がモゾモゾと…。いつものあれだ。マリアンジェラが転移してきたのだ。

「ライル、大丈夫?」

「あ、うん。ちょっと、動揺しちゃったら変になっちゃった。」

「しょっか…ニコちゃん、可哀そうって思ったの?」

「…。」

 僕が何も言わずにいると、マリアンジェラが黒い塊をヌッと差し出した。

「何、これ。」

「昨日着てたマリーのおすすめコスチューム。」

「また、やめてよ。」

「違うの。大きくなったままになっちゃったから、これ着て小さくなって欲しいのよ。

 こんなでかい黒猫コス、着る人いないし。」

「や、ヤダよ。騙そうとしてるだろ。」

「プッ…。」

 マリアンジェラが笑った。

「どういう意味の笑いだよ。」

「ライル、かわいい。」

「はぁ?」

 そう言った途端、僕は意識を失った。マリアンジェラに眠らされたのだ。


 次に目を覚ました時、僕はアンジェラに起こされていた。

「ライル、どうしたんだ?さっきも変だったが、その格好…。お前…。」

「キャー、見ないで。」

 僕は、黒猫コスを大きいままの姿で着ていた。もう、やだ…。

 恥ずかしいと思った途端、僕はシュルシュルと小さくなってしまった。

「ライル…何やってる。」

「僕、自分でやってないよ。マリーを探して。さっき、マリーに眠らされて…。あっ。」

 僕はまた自分の体のコントロールを失った。マリーが中に入っているのだ。

 黙って立ち上がった黒猫コスを着た赤ちゃん姿の僕は、アンジェラに向かって両手を広げて言った。

「だっこ。」

「ん?おぉ。だっこか。」

 アンジェラは不思議そうな顔をしながらも僕を抱っこした。

「おなかすいた」

「あぁ、そうか、食べられそうか?」

 そう言ってアンジェラは僕をダイニングに連れて行った。

 赤ちゃん用のベビーチェアに座らされ、朝食の皿を前に置かれ、取り分けられた食事をフォークでちまちま食べ始める。完全にマリアンジェラがコントロールしている。

 僕を見たニコラスがアンジェラに聞いた。

「あれ?これ、ライルですか?」

「あぁ、なんだかよくわからないが、気に入ってるのかな、この黒猫の服を…。」

 ひぇ~…悲しい。羞恥プレイ再開じゃん。

 そんな中、赤ちゃんニコラスが僕の方を指差してうきゃうきゃ喜びながら叫ぶ。

「にゃっぷぅ、だっこ」

 ネコを抱っこしたいらしい。やめてくれ。そう思っているのに、王妃が赤ちゃんニコラスを僕のところに近づけた。

『むちゅ』

 ん?んんっ?赤ちゃんニコラスは僕にチューをしたのだ。

 僕と赤ちゃんニコラスがキラキラで包まれて、王妃に抱っこされていたニコラスが黒猫コスを着た状態になった。僕の座っていた場所にはマリアンジェラが座っている。

「あ、あれ…外に出ちゃった。」

 マリアンジェラがそう言ったが、王妃は大慌てだ。赤ちゃんが一人消えたのだ。

 僕はニコラスと合体した状態になったのだ。

「ふぇ~ん。」

 赤ちゃんニコラスが泣く…。僕は自分で体を動かすことが出来るが、言葉や身体能力は赤ちゃんの状態の様だ。しかも、外に出られない。


 ジタバタ暴れてみるが…どうにもならない。ただのむずかっている赤ちゃんだ。

 どうしてくれる…。ヤバいぞ。これは…。

 王妃が焦ってアンジェラに聞いた。

「ライル様は、どこへ行ってしまわれたのですか?」

 アンジェラはマリアンジェラの方を見る。

「ごめんちゃい。黒にゃんをママに見せたかっただけなのに…。ライルとニコちゃんくっついちゃってて、見たことのない形になってる…。」

 これは…どうなってしまうのだ?

 アンジェラが青ざめているのがわかる。アンジェラに救いを求め、手を伸ばす。

「だっぶぅ。」

 なぜかオスカー王が近づいてきて抱き上げられた。

「お前の父は私だぞ。ニコラス。」

『おい、こら、見てたか?これ、ただのニコラスじゃないってーの。はぁ…』


 結局、この日から僕は赤ちゃんニコラスの中で悶々とした日を送ることになったのだ。

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