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513. ルームメイト

 夕食を終え、皆それぞれの場所でくつろいだり、遊んだりしている。

 アンジェラがダイニングにいた僕とニコラスに話しかけた。

「ニコラス、実は、今、客間の一つをライルが自室として使っているため、滞在できるのが一部屋しかないのだ。悪いが、父上と左徠が滞在中は、ライルの部屋を二人で使ってくれないか。」

「え、私はどこでも結構ですが…。ライルは大丈夫なの?」

「ベッドはキングサイズのが二つ横に並んで大きいのが一つみたいになっているから、そこで良ければ左右で眠れると思うけど。」

「私は、どこでも大丈夫です。」

「ニコラス、荷物はどこに置いたの?」

「サロンに…。」

 僕はサロンにニコラスの荷物を取りに行き、僕の部屋のクローゼットに置いた。

 ニコラスも追いかけて来た。

「すみません。」

「うん、大丈夫だよ。ところでニコラス、荷物これだけ?」

「はい。実はそれが私の持ち物全てです。」

「え?」

 中くらいのスーツケース1個とリュックだけが彼の持ち物だという。

「あの、しばらく日本にいて、その後ドイツに行っていて、身軽な方がいいかなって…。」

「あ、そう?でも、これじゃ、3日分も着替えが入らないだろ?」

 ニコラスは少し赤面して言った。

「あの、いつも同じ服を2着、洗濯して着ているので、大丈夫です。」

 確かにいつも同じ服を着てた気がする。

 僕は、クローゼットの中の奥の棚から段ボールを引っ張り出した。

「ニコラス…これ、良かったら使って。僕、急に背が伸びて一回も着ていない服も中にはあるんだけど、ちょうど、ニコラスの身長くらいの時に着ていたものをまとめて入れておいたんだ。イヤじゃなかったらだけど。」

「え?いいんですか?」

「うん、どうせもう着られないと思っていたやつだし、でもアンジェラがオーダーしてくれたやつだから、捨てるのはどうかなって思ってたの。着てくれるとうれしい。」

 ニコラスの顔がパアッと嬉しそうにほころんだ。

 誰も経済的に援助していなかったのかな?

「ありがとうございます。」

「あ、それから、こっちが下着。サイズが小さくて使ってないやつね。」

 棚の上の紙袋に入った下着を渡した。

「それで、こっちの棚を開くと、シュークローゼットになってて、左側のが僕にはもう履けないサイズなんだ。その中からちょうどよいのがあったら使って。」

「靴、こんなに見たの初めてです。」

「あはは…CMに出たら全種類、スポンサーからもらったんだ。」

「うれしいです。」

 ニコラスはバイトと言っていたな…。他のおっちゃん達はそこそこアンジェラから支援されていたはずなんだが…ニコラスは自己主張しないタイプだからか、自分で稼いだお小遣いで身の回りの物を買っていたようだ。


 僕は、各部屋についている浴室や洗面所などの説明をして、脱いだ衣類はランドリールームの自分のカゴに入れるように言った。

「空いているカゴにタグをつけてあげるね。お手伝いさんが洗濯してくれて、畳んでカゴごと部屋に戻ってくるから。そうしたらクローゼットの棚に置くんだよ。カゴはまた洗濯室に戻してね。」

 そう言って僕はカゴに名前のタグをつけてあげた。


 僕の方が年齢的には子供なのだが、ニコラスは見た目が18歳くらいに見える。

 最初にユートレアの大聖堂で見た時のままだ。

 リリアナに聞いた話では、18歳でユートレアに戻り、あの襲撃による記憶喪失事件の後記憶のないまま結婚し、記憶が戻って、今度は結婚していたことを忘れてしまい、その頃、一度日本の朝霧邸で保護していたはずだ。結局記憶を思い出させて、子供がある程度大きくなるまでユートレアのあの不思議な変化をする民族の所で暮らしたが、奥さんが早くに亡くなり、子供が独立したのをきっかけにリリアナに頼んで現代に移ってきたと聞いている。おそらく、実年齢は30代後半のはずだ。

 王位継承権二位の王子なのに、どうして現代に来たのかは不明。


 少しずつ聞いていった方がいいかな…。僕はその時そう思ったのだ。

 夜が更けて、僕は一人、サロンで読書をしていたが、段々飽きて来たので、部屋に向かった。さすがに今日はマリアンジェラは子供部屋で眠ったらしく、僕の部屋にはニコラスがベッドの向かって右の端っこに小さく丸まって眠っていた。

 起こさないように、そっと左側に入った。

 うす暗い中で、目を開けて部屋の中をぼーっと見ていると、なんだか考えなくてもいいようなことまで頭の中に出てきてしまう。

 やはり眠れないのだ。

 僕は、ちょっとしたいたずら心も働いて、ニコラスの夢に入ってみようと思った。

 アンジェラの夢には入ったことがあるが、他の成人男性の夢は初めてだ。

 気づかれないように首筋にそっと手のひらを触れた。

 少し冷やっとしたのか、ニコラスの体がビクッとなった。

 僕の手の先から、僕自身がニコラスの中に流れ込んで行くような感覚だった。

 僕は、ニコラスの夢の中に入ったのだ。

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